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「秋月は柴田に懐かれてんね」
目を開けると緒方さんの横顔が見えた。
「そうですかね。まぁ可愛いやつですよね」
サッカーボールを追い掛けているのだろうか。
右へ左へと瞳が動いている。
「だな。でも俺的にはお前のが可愛いけどな」
一瞬の間を置き頭を上げる。
「…どこがですか」
「存在が」
なんと返したらいいのか分からないのは、暑さで頭が回らないからなのか。
それとも緒方さんの言ってる事がおかしいからなのか。
「そんな事初めて言われました」
「そう?もうそこに居てくれるだけで幸せだけど」
昨日の事が突如頭に蘇った。
急になぜか気恥しいような気がして、グラウンドに視線を移す。
「…俺はなんて返すのが正解ですかね」
ピーっと甲高いホイッスルの音。
サッカー部員が水道へと向かって歩き出した。
「ありがとう、って言われたいかな」
ありがとう。
今相応しい言葉なのか、よく分からない。
「……ありがとうございます…?」
「疑問形かよ!」
砂埃の匂いとセミの声。
身体は汗でベタベタするし、目が眩む程の太陽の光。
なのに不思議と心地が良かった。
口の中の飴がゆっくり小さくなって、ほんの少しの甘さを残し、いつしか消えてなくなった。
その後あまりの暑さに屋内での筋トレへとメニューは変更となった。
移動中にすれ違ったサッカー部員の中にいた山田が、今日の予想最高気温は38℃だと教えてくれた。
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