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その後もうだるような暑い日が続き、合宿も残すところあと二日。
みんな疲れが見えてはいるものの、一年生の上達には目を見張るものがあった。
この日は久しぶりに雲が広がった。
上からの熱がないだけで、だいぶ涼しい。
それでも湿気をふんだんに含んだ空気が全身に絡みつくようで、少しの動きで汗が流れ落ちる。
「じゃあ10分休憩なー」
「はーい!」
緒方さんの掛け声で、一年生達はわらわらと水分を求めて走り出した。
緒方さんもなぜか一年生に紛れて、楽しそうに走り出した。
その後を追うように歩き出した時だった。
「あのっ、秋月くん!」
聞き慣れない高い声で名前を呼ばれて振り返る。
何部の女子生徒だろうか。
学校のジャージ姿に少し焼けた腕を後ろに回し、うつむいている。
真っ赤になった顔に見覚えはない。
「なんですか」
「あのっ、今って休憩中ですよね?」
「そうですけど」
「少しでいいので、お時間もらえませんか?ここでは話せないので、体育館脇に来てもらいたいんですけど…」
ちらりと体育館脇を見る。
往復だけけでも一、二分。
なんの話かは分からないけれど、一分話を聞いたとして休憩は残り七分。
「悪いですけど、またすぐ練習始まるので」
「そっそうですよね!ごめんなさい!じゃあっ、あの…時間のある時いつでもいいので話を」
「秋月?」
ペットボトルを両手に持った緒方さんがやって来た。
「あれ?クラスメイト?」
女子生徒に気づいた緒方さんが首を傾げた。
「いえ違います」
「ん?秋月、はいこれプレゼント!」
差し出されたペットボトルを受け取る。
「ありがとうございます」
「あの私っ…」
女子生徒は更に下を向いた。
途端、視界の端に映った緒方さんの顔から、表情が消えた気がした。
「…緒方さん?」
「ん?なに?」
そう答えた顔はまたいつもの笑顔だった。
(……なんだ?)
違和感を覚える。
「えーっと、秋月になんか用?監督が秋月の事呼んでるんだけど」
「あっ、いえ!大丈夫ですごめんなさい!部活頑張って下さい!」
緒方さんの言葉に慌てた女子生徒は、早口でそう言ってパタパタと走り去って行った。
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