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練習が終わるとクールダウンを行い、用具を片付ける。
合宿所へと移動すると、すぐに夕食の時間となった。
合宿最終日を明日に控えたこの日は、高跳びの一年生に囲まれ、他愛ない話をしながら穏やかな夕食の時間を過ごしていた。
緒方さんは三年生に岡田を交えた珍しいメンバーで、自分とは少し離れた所で食事をしている。
時折目が合うも、いつもの笑顔を向けてくるだけで、すぐにそらされる。
先程の出来事は夢だったのかと思い、自分は許容範囲を超えた時、夢だと思い込もうとする癖がある事に気が付いた。
「おい!そこの秋月なる者!」
夕食後、二年生でまとまってシャワールームへ向かっている途中、面倒臭い予感しかしないテンションで、井上さんが立ちはだかった。
「なんですか」
「やるぜっ!」
「はい?」
「返事はっ?!」
「はい?」
「よしっ!」
「はい?」
「はい、は一回っ!」
「なに言ってるんですか」
「風呂が終わったらここに来い!誰にも内緒で!お前一人で!受けて立つ!」
そう言ってガラリと扉を開け、三年生の部屋に姿を消した。
誰もが呆然と立ち尽くす。
「なんかここにいるのが逆に申し訳なくなるな…」
岡田がそう呟いた。
シャワーを終え、岡田になぜか、すまん…と謝られ、みんなから、頑張れよ…と低いテンションで送り出されて三年生の部屋へと向かう。
ノックをしようと腕を上げた時、突如扉が開かれた。
「待ち焦がれていたぞ!さぁ入れ!」
二年生とは正反対の、先程の面倒臭いテンションを引きずったままの井上さんが、腕を組んで立っていた。
部屋の中では敷き詰められた布団の上に、つい先日見たのと同じ光景が広がっていた。
その瞬間、岡田の、すまん…の意味が分かった。
「ババ抜きですか…」
「さすが秋月」
山梨さんがニヤリと笑った。
「この前二年でやったんでしょ?岡田に聞いたよ。三回勝負、最後に負けた人がジュースね」
瀬川さんはそう言いながらも、いつの間に借りてきたのか、見覚えのある岡田のトランプを配り始めていた。
なにかを諦め、部屋に踏み込む。
「秋月ここ!ここ座って!」
緒方さんがいつも通りの普通のテンションで布団をバシバシと叩いた。
昼間の出来事を忘れたかのような普通のテンションでいられるのは、緒方さんが普通の人ではないのだから仕方ない。
そう自分に言い聞かせ、一つため息をついて大人しく輪に加わった。
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