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GWではバーを落としてばかりだった一年生も、だいぶ形になってきた。
緒方さんの跳躍は相変わらず美しく、自分も調子は良い方だった。
記録を録り、それを元にあれこれと修正を行う。
重力から解放された瞬間の空の色はやはり格別で、何度も空を見続けているうちに、先程感じた違和感の事もいつの間にか忘れていた。
「集合ーーっ!!」
渡辺さんがグラウンドの中心で声を上げ、校庭のあちこちに分かれていた部員が集まる。
「さて!では合宿の締めだ!種目別リレー対決!!」
おおっ!と盛り上がるのは二、三年生。
対して一年生はきょとん、としている。
「あの、それはどういう」
おずおずと手を挙げたのは飯野。
「これは毎年合宿最終日にやる、まぁ伝統のイベントみたいなもんだ。種目ごとにチームになって、2000mを10人で繋ぐ!一人200mかける10人だな!」
えーっ!と声を上げるのは、やはり一年生達。
「そんなの短距離チームが有利じゃないですか!」
「まぁ最後まで聞け。短距離チームがビリになった場合はペナルティーだ」
今度は短距離の一年生から、えーっ!と声が上がる。
「一位のチームには商品としてアイス!最下位のチームもペナルティーだぞ」
「ペナルティーってなんですか…」
ごくりと誰かが喉を鳴らした。
「陸上部らしく坂道ダッシュ30本!と言いたいところだが…」
渡辺さんがニヤリと笑う。
「君に決めた!彼氏にするなら君しかいない!俺の想いを受け取って!だ!」
三年生の中では落ち着いた雰囲気を持つ部長の口から出たまさかのセリフに、全部員が固まった。
「…え、なに、渡辺さんキャラチェンジしたの?」
「まぁ三年近くあの人達と一緒にいればな…」
一、二年生がまた密やかにざわつく。
「お前ら聞こえてっから。まぁ、簡単に言うと、陸上部内で彼氏にしたいのは誰かってのを、大声で宣言するだけだ」
山梨さんがフォローをした。
「なんですかそれ!!」
「考えた事もないですよ!!」
騒然とし続ける一年生。
毎年の事ながら、この瞬間の一年生の心境はまさしく混沌、カオスと呼ぶのにふさわしいだろう。
不満の声が後を絶たない。
が、気にする事なく渡辺さんが続ける。
「もう毎年恒例のイベントだから諦めろ。俺達も三回目だし。ペナルティーが酷いだけじゃなくて、このリレーで種目変更する奴とか毎年出てくるからな。本気で走れよ。じゃあ走る順番決めろー。10人に満たない種目は誰が多く走るか決めろよ」
様々な心境のまま、わらわらと種目事に分かれる部員達。
高跳びのメンバーは自然と緒方さんの元に集まる。
例えペナルティーを受ける事になったとしても、適当にやればいい。
と思いつつ、やはり出来るものなら避けて通りたい。
今年もまたペナルティーを回避すべく、柄にもなく気合を入れた。
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