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作戦としては、第一走者に自分、一年生を二人挟んで緒方さんで盛り返す。
再び中盤は一年生、第九走者に緒方さんで、アンカーが自分と決まった。
他にも緒方さんの言った通り、主にフィールド競技のチームは10人に満たず、二回走る者が多く出る。
砲丸は競技人数が二人、しかも一人は足を痛めているということで、幅跳びと合同でチームとなった。
また同じくハードルも競技人数二人の為、短距離チームに入る事となった。
細やかに種目に分けてしまうとチームが多すぎるので、短距離、中距離、長距離でのチーム分け。
各チームそれぞれが順番決めや誰が二回走るかなどでギャーギャーと騒いでいる。
人数の多い短距離はチームを二つに分ける為、ジャンケンで決めるかグッパーにするのかと特に大騒ぎだ。
「決まったかー?始めるぞー?」
「よっしゃぁ!やるぜ!」
渡辺さんの声を聞いて、緒方さんはぐるぐると肩を回した。
「校舎前からスタートだから、奇数走者は校舎前、偶数走者は反対なー!」
うぃーっす!!と部員達が移動を始めたとき
「なぁなぁ!ちょっとアレやろうぜ!」
と、緒方さんが言い出した。
「……アレってなんですか」
にっと笑うと手招きして高跳びのメンバーを集める。
「陸上って基本個人競技だろ?特に俺達は普段リレーなんかやらないしさ!だから一度やってみたかったんだよね!」
意気揚々と語るその目は、新しいおもちゃでも手にした時の子供のように、キラキラと輝いている。
そしてそばにいた小野寺兄弟の肩に腕を回した。
状況を理解した柴田が、おっ!と声を上げ駆け寄る。
それに続くように一年生達は笑顔で次々と肩を組み合った。
「秋月さん!早く!」
みんなに笑顔を向けられ、思わず苦笑いが漏れたがその輪に加わった。
「円陣とかチームっぽいですね!」
笹倉が嬉しそうに笑った。
「だろだろ?掛け声何にする?」
緒方さんが一番嬉しそうだ。
「チーム高跳びー!ファイ!オー!ってのどうですか?」
「よし!それで決まり!じゃあ行くぞ!」
緒方さんが大きく息を吸い込んだ。
「チーム高跳びー!ファイッ!」
「「「「おおー!!!」」」
完璧に士気の上がったチーム高跳びが二手に別れる。
「秋月頼むぜ!」
「はい」
緒方さんは大きく手を振りながら歩いて行った。
「高跳び盛り上がってんなー。やっぱり緒方とお前が二回走んの?」
スタート地点に向かう途中、横に山梨さんが並んだ。
「はい、そうです」
やっぱりかー、と笑った。
「秋月は何走?」
「俺は一走とアンカーですね」
「花形すぎる!」
二つに分かれた陸上部員達は、今まで散々部活動をしていたというのに、それぞれウォームアップを始めている。
みんなペナルティーを避けるべく本気だ。
「一走誰だー?バトン取りに来ーい!アンカーは襷だから偶数の方から誰か一人戻って来ーい!」
「渡辺手際悪っ!ほら一走呼んでるぞ。取り行ってこい」
「いってきます」
アルミで出来た銀色のバトンを受け取る。
ひやりとしていてとても軽い。
「井上ー!頑張れよー!」
トラックの外から声がした。
サッカー部員と野球部員、更にはわざわざ体育館から出てきたバスケ部員やバレーボール部員までもがギャラリーとなっている。
毎年恒例の陸上部のこのリレーは、ペナルティーが酷いという事もあり、かなり白熱する。
他の部員までを巻き込んでの恒例イベントになっていた。
「他の種目には負けん!任せとけー!」
井上さんは両手を上げて声援に応えた。
「負けねーぞ井上ー!」
声を張り上げる緒方さん。
「緒方ー!期待してるぞー!」
各々が他部の友人から応援を寄せられ、もはや本物の大会さながらの盛り上がりをみせる。
「な、なんかすっごい緊張してきたんですけど…」
第三走者の柴田は先程の士気はどこへやら、完璧に空気に飲まれて緊張で震えている。
「秋月くーん!頑張ってー!」
グラウンドの端から名前を呼ばれる。
ぺこりと頭を下げると、キャーと黄色い悲鳴が響いた。
「うーわ、でたよこのイケメンが」
そうからかうように言った山梨さんの手には、バトンが握られていた。
「え?山梨さん一走なんですか?」
「ん?そうだけど?」
さっきさも自分は一走ではないといったように、バトンを取りに行けと促された。
あのやり取りは何だったのかと思う。
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