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「緒方くーん!頑張ってー!」
またもや甲高い声援が飛んだ。
「おー!」
緒方さんも手を挙げて応えている。
「緒方もすげーなぁ。秋月もあれくらいサービスしてやれば?」
山梨さんがなぜかニヤニヤとした視線を向けてきた。
「はぁ…そうですね」
そう返事はしたものの、そんなを事する気は更々起きない。
「一走位置につけー!」
雷管ピストルを手にした渡辺さんは襷をかけていた。
「コースはインから幅跳び高跳び長距離中距離短距離A短距離Bな」
「お経っ?!」
「えっ、俺どこ?」
「長距離は2コースだろ」
「2コースは俺だよ」
「もう余ったとこ入れ!」
渡辺さんの流暢な説明に、第一走者がわたわたと位置につく。
どの種目もいいスタートを切りたいところ。
スピードのある選手が揃っている。
が、短距離だけは両チームとも一年生スタートのようだ。
後半で追い上げる作戦だろうか。
軽くジャンプをし、手首と足首を回してみる。
やはり調子は悪くない。
「いくぞー!」
渡辺さんが反対側にいる偶数走者達に声を掛けた。
「おーっ!!」
と集団が手を振る。
「位置について」
低い渡辺さんの声が響く。
心地よい緊張感が体を支配する。
「よーい」
右足を引き、グッと重心を下げる。
パァンと乾いた音で踏み出す。
200m走というものは100m走とは全くの別物。
加速しきった状態で走り続けることにより、残りの50mは枷でもつけているかのように手足が動かなくなる。
飛び交う声援の中を駆け抜ける。
第二走者の飯野が手を上げて待っている。
バトンを繋ぎ、全チームのバトンリレーが終わった事を確認してフィールドに入る。
「やべぇ!秋月さんやべぇっす!」
そう駆け寄ってきたのは第六走者の笹倉。
「一位ですよ!」
そう言われて順位にまで気が回っていなかった事に気づいた。
「ありがとう」
練習のメニューで走ることはあっても、高跳びという種目においてこれだけの距離を全力で走ることはない。
酸素を求め、肩が大きく上下する。
「秋月さすが!ほれ襷!」
ポンと緒方さんに背中を叩かれ、襷を手渡された。
「ありがとうございます。やっぱり200はキツいですね」
額の汗を拭い、呼吸を整えながら襷を掛ける。
「なぁに言ってんの秋月くん」
ニヤリと緒方さんが笑った。
「あっ!飯野抜かれた!」
第二走者に期待の一年生選手を持ってきていた短距離Aチームにより、順位が落ちる。
「柴田ー!頑張れー!」
どんなに遅くても200mは20秒台の戦い。
バトンは早くも第三走者に渡る。
緊張でガチガチだった柴田がぎこちなくもバトンを受け取り走り出した。
「っしゃー!行ってくるかー!」
「緒方さん!ファイトです!」
笹倉の声援に拳を上げて応えると、緒方さんは笑顔でトラックへ向かった。
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