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柴田は更に順位を一つ下げ、三位で四走の緒方さんにバトンを繋いだ。
「緒方ぁーっ!行けーっ!」
他部の部員からの応援も白熱している。
緒方さんは前を行く短距離Aチームの一年生を難なく抜き返し、清人に繋いだ。
「お前らホントになんなの?!」
そう声を掛けてきたのは井上さんだった。
「イケメン!高跳び凄い!足も早い!どんなハイスペックな訳?!やっぱり嫁に来いよ!」
「はぁ…」
「井上!こんな所で迷子にならないでよ!探されてたから!」
瀬川さんに首根っこを掴まれ、こちらを威嚇したままズルズルと引っ張られていく。
「井上さんアンカーじゃないんですね」
アンカーやりたい!と騒ぐ井上さんの姿が頭に浮かんだが、襷をしていなかった。
不思議に思えて隣にいた山梨さんに話し掛ける。
「あーなんか、後半追い上げの切り込み隊長の応援団長って言ってたぞ。よく分かんないけど」
「はぁ…」
確かによく…いや全く分からない。
ただやはり短距離チームは、後半に勝負を持ってきているようだ。
「つってもあいつ典型的な100mの選手だからな。200はそんなに早くないぞ」
「山っち!聞こえてるぞ!」
瀬川さんに引きずられたまま井上さんが怒鳴った。
「どんだけ地獄耳だよ」
カラカラと山梨さんが笑った。
あっという間にバトンは第七走者にまで渡った。
一位短距離B、二位短距離A、三位長距離、四位高跳び、五位中距離、六位幅跳び
現在の順位だが、一位と二位が少し開いているだけでその後はかなりの接戦。
展開によって幾らでも順位変動がありそうだ。
理人が前を行く長距離チームを追っている。
「やっぱ短距離つえーなぁ。Bはこのまま行くかもな。アンカー200のやつだろ。専門家には勝てねぇわ。てか毎年思うけど、バトンリレー上手すぎてズルイだろ」
山梨さんの言う通り、普段からバトンリレーの練習をしている短距離選手達は、限れたバトンゾーンの中で最大限の加速でバトンを受け取る事に慣れている。
相手の様子を伺いながらバトンの受け渡しをする他のチームとは訳が違う。
「つーかこのままじゃうちやべぇな。幅跳びのアンカー渡辺だろ?おい、枚方(ひらかた)!マジ頼むぞ!」
枚方は一年生の中距離選手で、アンカーを任されていた。
先程の柴田同様、明らかに緊張している。
「あああ秋月さん、行ってきます!」
こちらも緊張しか伝わってこない田中がコースに向かう。
「大丈夫だから、リラックスして」
そう声を掛けてはみたものの、田中の耳には届いていないようだった。
「井上飛ばせー!!」
井上さんが走り出す。
実は井上さんは100mでの県大会出場経験者だ。
普段の様子からは想像出来ない程の綺麗なフォームで、ぐんぐんと加速して行く。
が、山梨さんの言った事が見事的中。
順位を落としはしなかったものの、後半明らかにスピードが落ちた。
緊張していた田中は意外にもかなりの距離を詰め、緒方さんに繋いだ。
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