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ゴールラインを駆け抜ける。
スピードを落とし立ち止まると、途端に汗が吹き出してきた。
もう一度雷管の音。
全チームがゴールした合図だ。
グラウンド中に喜びと絶望と歓喜の入り混じった声が湧く。
「うわぁぁぁ…」
絶望の声を上げて崩れ落ちているのは中距離チーム。
山梨さんの不安通り渡辺さんが枚方をかわし、順位を下げてしまったようだ。
ペナルティーの恐怖に打ちひしがれている。
逆に大きく盛り上がっているのは短距離Bチームと、高跳びチームだった。
「秋月さぁぁぁぁん!!」
一年生が駆け寄ってくる。
「凄かったです!」
「マジでカッコよかったです!」
「うん、ありがとう」
どくん、どくん、と心臓が大きく音を立てている。
息がなかなか整わない。
さすがに疲れた。
大きく息を吐く。
「秋月ぃーーーっ!!」
一際明るい声に振り返る。
緒方さんが両手を広げながら向かって来る。
そしてその勢いのまま抱き着かれた。
キャーッと遠くで悲鳴が聞こえた気がする。
「最後惜しかったけどよくやった!」
(近い…)
ぐいぐいと顔を押し付けられる。
「緒方さん…暑いです」
「おお悪い悪い!」
緒方さんは悪びれる事もなくぱっと離れた。
「お前らもよくやったなぁ!俺の三年間で最高順位だ!」
そう言って一年生達の頭を撫でる。
「緒方さんと秋月さん、マジ凄かったです!高跳びも凄くて走るのも早い!マジリスペクトっす!」
柴田は興奮しきりだ。
「結果発表ー!あつまれー!」
息を切らしながら渡辺さんが集合を掛ける。
わらわらと集まる部員の表情からは、手に取るように心理がわかるようだった。
こうして種目別リレー対決は終了し、中距離チームはこの後行われる合宿の打ち上げで恥を晒す事が決定した。
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