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その後程なくして打ち上げが始まった。
体育館脇の芝生には大量のテーブルやパイプ椅子が並べられ、その上にはサンドイッチやおにぎり等の軽食がずらりと並んでいる。
「秋月!お前のお母様は何担当だったわけ?!」
井上さんが駆け寄ってくる。
「はい?」
「どれ?!どれを手作って下さったの?!」
「いや、知らないです」
「ぐはぁっ…!」
と声を上げ、井上さんが倒れ込んだ。
「疲れた体をお母様の手料理で癒そうと思ったのに…!女成分が足りなくて枯れる…!」
「枯れるといいよ。朽ちてそのまま風に散ればいい」
ケラケラと瀬川さんが笑う。
「秋月さん!」
名前を呼ばれて振り向くと、またもや頬を膨らませた柴田が立っていた。
その手には大きく歯型のついたおにぎりが握られている。
「秋月さんは他の種目はやらないんですか?」
純粋に疑問、といった顔だ。
「うん。高跳び以外の事で怪我するリスクを負いたくないから」
「確かに跳んでる秋月さんはかっこいいです!でもなんか勿体ないなーって思って!」
ちょうど一年前、リレーを終えた後に監督に言われた。
「お前短距離もやってみたらどうだ?ちゃんと練習すればまだまだ伸びるぞ。関東大会くらいならすぐ行けるようになる」
別に短距離走が嫌いだとか、そういう事ではない。
風を切って走るのも好きだし、目の前に誰もいないゴールラインに飛ぶ込む快感も知っている。
でも、メダルだとか賞状だとか、そんなものはいらない。
自分の好きな事を納得のいくまでやりたい。
あの人と同じ空を見てみたい。
それだけだ。
「なんかすみません…」
柴田の声がシュンとしていた。
思わず物思いにふけってしまい、柴田に気を遣わせてしまった。
「いや、俺こそごめん」
そんな、と柴田は首を横に振った。
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