アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
120
-
いつからだろう。
いや、初めて唇が重ったあの日から、気付いていたはずだった。
緒方さんだから。
全てがその一言で収まってしまう程に、気づいたら自分の中にこんなにも大きく居座っていた。
”なんでって…秋月だから”
告白をされた次の日、部室の前に立ち尽くす自分の耳に飛び込んできた、緒方さんの言葉。
なぜそんなに惚れているのかと聞かれた緒方さんは、迷う事なくそう言った。
その言葉の意味が、分かった気がした。
”なんで”
だとか
”どうして”
だとか、そんな事は分からない。
この気持ちを恋と呼ぶのかも分からない。
でも緒方さんは、恋なんて名前じゃなくていいと、そう言ってくれた。
最初はただの憧れだった。
なのに向けられる笑顔に、向けられた背中に、何度感情を動かされたただろう。
どこからバランスを失い始めたのか、それはもう分からない。
囚われたのか。
巻き込まれたのか。
それとも自分から飛び込んだのか。
それももう分からない。
ただ、緒方さんが自分から離れるのが嫌なのだと、笑いかける先に居るのが自分であってほしいと、そう思う気持ちに気づいてしまった。
緒方さんの手の伸ばす先に自分が居る、今この時。
こんなにも満たされた気持ちになる。
もしなにか歯車が一つ足りなければ、こうなってはいなかったのかもしれない。
でももう、そんな事はどうでもいい。
縋る手に力を込めると、引き寄せる手に力が込もる。
熱っぽい声が、何度も自分の名前を呼ぶ。
もう、それだけでいい。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
121 / 1191