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大和と京之介と、竜也
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(リクエストではないです。ちょっとした日常の一コマです…)
大和には、二人の父親がいる。
厳密には三人だが、高橋はお母ちゃんだと思う(作者見解)
一人は、勿論竜也。
誰がなんと言おうと、『お父ちゃん』である事は否めない。
親の背中を見て育った大和は、今まさにお父ちゃんの通って来た道を邁進しているのだ。
そして、そのお父ちゃんに負けじと強烈な空気を醸し出しているのが、ヤクザ以上にヤクザな男、京之介である。
竜也とは30年来の心友であり、大和とは生まれた時からの親代わり的な存在。
料理はプロ級、頭もすこぶる良く、ヘタしたら海といい勝負かもしれない。
それに何より、恐い。
恐い。
「おい、大和………………なんや、コレ」
「はい……………………」
ある日曜日の昼下がり。
大和は、自宅マンションに顔を出していた京之介から、声をかけられる。
丁度、お昼時。
口一杯にピラフを頬張り、大和は顔を上げた。
ピラフ?
高橋が不在の今日、大和のご飯は京之介が作ってくれた。
ワンプレートに、ピラフと海老フライ、サラダを乗せたカフェ風ランチ。
これがまた、滅茶苦茶美味い。
育ち盛りらしく、大和はそれへとがっついた。
最近では、滅多に食べられなくなった京之介の手料理に嬉しさと涎がものを言う。
おかわりをねだろうかなぁ~♪なんて、頭の中は満腹感に満たされようとしてた矢先。
まさか、京之介が『テストの成績表』を見つけるとは、夢にも思わなかった。
「ゲッ……………………」
「何が『ゲッ』やねん…………お前、こないな成績で学校行っとんのか。やっと行かせてもろうとる学校、何やと思うとんな」
カウンター越しに浴びる、厳しい視線。
それ、お父ちゃんに見せようと用意していたヤツ。
朝、錦戸達とゴルフに出掛けようとした竜也が、大和の寝室に来て言い放つ。
『コラ、大和…………高橋から聞いたけど、テストの成績表返って来てたらしいやないか。黙っとったら、知らん顔通しよって………………帰って見たるさかい、用意しとけや』
えぇ…………………。
これでも一応、学費全般はお父ちゃんが出してくれてる。
まだ未成年。
親の役目は、やり通す。
テストも毎回見せる約束…………が、最近バタバタで、とてもじゃないが見せられる成績ではなかった。
渋々起きて投げやりに出しといた、成績表。
キッチンのカウンターに、置きっぱなしだったわ。
「せやけどさ………………親父かて、学校ろくに行ってへんかったんやろ?」
「あぁ…………………?」
「次は、頑張るさかい………………な」
両手を合わせ、頭を下げる大和に、京之介の眉間にはみるみる皺が寄る。
親父かて…………………。
「お前、ソレ……………本気か?」
「え……………………」
しまった!
そう思った時には、京之介に胸ぐら掴まれた。
ガシッ…………………!
「竜也はな………………確かにあまり学校には行かへんかったけど、そのほとんどはてめぇの生活費を稼ぐ為や。早ように身内を失のうて、自力で生きてくには金がいった………………どんだけ苦労しても、それをおくびにも出さへんかったあいつの前で、そないな台詞ほざいたら、マジでシバき上げんぞ」
怒られる度に思う。
京之介は、何故ヤクザにならなかったのか。
低く、静かに凄む声色の恐怖とたるや……………ヤクザに慣れた大和でさえ、ブルッと背筋が冷たくなる。
「ご、ごめ………………」
大和は、京之介の顔を見つめたまま、なんとか謝罪を口にした。
軽率な事を言った。
大好きな父親に対して、なんて最低なんだ。
こんな時、京之介がガツンと言ってくれるから、自分を知れる。
本当に、父親みたい。
それは、父親だけでなく、自分の事も想ってくれている愛があるからこそ、深く突き刺さる。
でなきゃ、こんなに心は揺さぶられない。
ただ、揺さぶられる前に、ガチに恐いのは事実だが。
「わかったら、メシ食って勉強な」
「へ…………………」
「当然やろ…………このままやったら、留年やないか。俺が家庭教師になって、ビシビシしごいたるわ」
「ギャァァァ……………ッ!」
「どう言う意味やっ……………失礼やな!」
そうして、結局はその絶大な愛情によって包まれる。
ブツブツ言ってはみても、食後大和は京之介と肩を寄せ合い、教科書達とにらめっこ。
表情も、真剣そのもの。
いい先生だと思います、京之介。
ガチャ……………………
「ただいま……………はぁ、疲れ……ぅおおっ!?」
そうこうしている間に、一家の主帰宅。
夕方、ゴルフを終え、リビングのドアを開けた竜也は、目の前の光景に思わず奇声を上げる。
温かな、茜色に染まる部屋。
穏やかな空気と、シーンと静まり返った世界に、安らかな寝顔が2つ。
ソファにもたれ、気持ち良さそうに眠る、大和と京之介がそこにいた。
「ぷ…………………どないしたんや、これ」
見れば、近くのローテーブルには、高校の教科書や参考書が沢山広げられている。
勉強しとったんか……………………。
竜也は二人の前にしゃがみ込み、ニマニマと珍しい様子に視線を注いだ。
京之介の肩へ頭を傾ける、大和の幼い顔。
若頭とは違い、なんとも気を許した姿かな。
「ま、今日位は勘弁したるか」
こうしてると、昔を思い出す。
狭いアパートの部屋で、疲れた3人がよく雑魚寝したっけ。
それが、今じゃ高級マンション。
「よう、ここまで来れたんや……………せや、可愛らしいから、写メ撮ったろ♪京、怒るでな………ククッ」
パシャ……………………
これを見れば、今までの苦労も吹っ飛ぶ。
頑張って良かった。
それだけで、十分。
「他に、何も要らんな………………」
世間から逸れた人生だが、がむしゃらに生きた先に、笑顔は見れた。
しかも、こんなにもホッとする、寝顔までもが見れたのだ。
十分だ。
二人を見つめる竜也の表情も、自然と綻ぶ。
「ありがとな、二人共」
ありがとな。
それから、竜也も少し目を閉じ、懐かしい景色が部屋へ広がった。
(すみません……本当に、フッと思い付きで(汗)もっと砕けたパターンも考えてましたが、ちょっと真面目な話になってしまいました。読んで下さいまして、ありがとうございました)
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