アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
嵩原と桜井
-
(世代交代の波…)
最近、失敗したなーと思いました。
お父ちゃんの身長、大和より少し高いんです。
せめて、185㎝は欲しかったなぁ…………
「おい、湊……………お前、でけぇな」
「…………………はい?」
暖かい日差しが辺りを照らす、昼下がり。
珍しいコンビが、デート(?)中。
二人並べば、本当にデカい。
嵩原が桜井を誘って、スーツのオーダーに出向いた。
と言うのも、スーツを数着、桜井の為に作ってやろうと思ったから。
「身長、いくつや?」
美しい木製の装飾が店内を飾る、格式高いスーツのオーダーメイド店。
店員達は、全員濃紺の同じスーツを身に纏い、ゴールドのネームプレートを胸に光らせる。
「え……………確か、186だったような……」
「186!?…………………ちぇ、負けたな」
イタリア製のレザーソファに腰を下ろした嵩原は、目の前で採寸される桜井を見上げ、敗北感。
ちぇ。
男って、たった数㎝でも勝ちたい。
それが、好きな人がいたら尚更。
特にこのお方、恋には超一直線。
大和の前では、いつまでも格好いい男でありたいと日々思ってる。
自分の視界を塞ぐ、小顔で手足の長い桜井に、嵩原はちょっとだけジェラシー。
明日から、牛乳飲もうかな……………。
真面目にそんな事考える。
いや、貴方も十分スタイルいいけどね。
最近は、それに大人の色気も加わった。
「負けたって……………子供ですか」
子供です。
採寸を終え、出された珈琲へ手を伸ばす桜井は、同じくソファに座りながら苦笑い。
嵩原だって、180越え。
何も見劣りはないし、誰の目にも男前、ただ、中身だけはブラックホール。
ふざけてるのか真剣なのか、本当に嵩原は掴み所がない。
それがまた魅力になるのだから、役得である。
「アホ言え。男は高いのに憧れんねん……………京にも負けとんのに、またデカいの加わってもうた」
「京………………?」
「ああ、俺の幼馴染み。また紹介するわ」
そう言えば、安道と桜井って顔見知りだったな。
しかも、大和に告白した相手が桜井だと、安道はまだ知らないし、嵩原の幼馴染みが安道だと桜井は知らない。
奇妙なニアミスは、いつバレるのだろ。
安道、怒るかな………………。
そんな種も蒔き々、本編書いてます。
「てかさ………………お前、いくつなん?そう言や、歳聞いてなかったな。なんや、大和にはベラベラ話しとんやろうけど、俺お前の事よう知らんやん」
それで、よく引き受けたよ、お父ちゃん。
嵩原は、店員が持って来た生地見本に触り、ふと桜井の年齢に興味を持つ。
桜井って、何歳。
事の流れでその身を引き抜いたが、考えてみれば何も知らなかったな、桜井湊。
これまでも、突発的な事故で数々の若者を救って来た嵩原に、身の上なんてものは後の事。
あまりに早く組へ馴染む桜井を見てたら、聞くのすら忘れてた。
「じゃ、そのまま謎の舎弟でいきます?それの方が面白そう♪」
「まぁ、確かに…………て、違うやろっ。話しとうない話はせんでええけど、ある程度は教えとけ」
「あ、やっぱり………………」
周りの店員達も、思わずクスリ。
嵩原の飾らない性格もあるだろうが、さっきから仲がよろしいんだ、二人共。
嵩原、行きつけのオーダー店。
最初は、嵩原が竜童会組長と聞いて皆ビビったが、あっという間にそれは吹っ飛んだ。
嵩原ほど紳士なヤクザは初めて。
とても話しやすく、人当たりが優しい。
そして、わかった事。
面倒見のよい嵩原が、度々組員を連れてスーツを仕立ててあげるのだが、どの組員ともその関係性は素晴らしく良好。
「俺、25です」
「………………え?」
「25です、歳」
大体予想されていた方もいらっしゃるかと思いますが、桜井湊は25歳だそうです。
「25?ほな、花崎とタメか…………」
「花崎さん、25なんですか?」
25歳なんだ、桜井湊は。
飄々と答える桜井に、嵩原はマジマジとそれの器に興味を抱く。
「お前……………何歳で若頭になった?」
「え……………と、多分23の時ですかね。ま、中堅クラスの組ですけど…………」
「充分やろ。俺も、23で若頭になったわ」
天下の竜童会で。
木瀬が、嵩原の高校卒業を待って組へ受け入れ、本格的に動き出した19歳から5年で、嵩原は竜童の若頭を名乗った。
それだけで周囲は驚愕したが、その後の快進撃に全てを持っていかれたのは、言うまでもない。
「いやいや、嵩原組長のレベルとは違いますよ。規模が全然……………」
「25の頃には、組長やったか…………」
「ほらァ……………竜童の若頭・組長は、極道の頂点です。比べられませんて」
「関係ねぇわ……………大藤も、実力のある組長や。あそこで若頭に認められんのは、なかなかの強者よ。狙おう思うたら、お前かてトップ行けんぞ」
「嵩原組長……………」
トップ。
驚く桜井を見つめ、嵩原はニンマリ笑う。
トップとは、また凄い話が出たものだ。
支部の皆が、大和を組長へする為に動いている最中、よくそれを言った。
「行きたかったら、遠慮すんな。俺は、出来る可能性を潰す気はねぇ」
だから、嵩原。
大和のライバルをわざわざ作るなんて、誰が思おうか。
「いえ……………俺は、大和の背中を見ます。あの歳で、あれだけの重責を担う器………………あいつの啖呵は本物ですよ。将来、楽しみじゃないですか」
「湊…………………」
キラキラと眩しい笑顔に、華が咲く。
若いと言うのは、美しい。
竜童会の未来が、嵩原の目には輝かしいものとなる。
「わかるか?………………俺も、そう思う」
不安はない。
次世代の人間は、確実に頭角を現す。
「て言うてもな、恋愛は別やぞ。大和に手ぇ出したら、シバくからな」
「えぇー。大和、可愛いんですよねー」
「えぇー言うな、ボケ!」
ただ、色々と前途は多難。
(皆様、ありがとうございました。お父ちゃんに似てる………湊の将来も楽しみにしています。いつまでもトップでいて欲しいと思いつつ、世代交代は来るんですよね。時代は変わる…)
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
136 / 241