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男娼とヤクザ/シーズン1(第8話)
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「嵩原………………っ」
初めて目にした、高橋の恐い顔。
車の中の嵩原を睨み、急いで自分の腕を掴む力に、さすがの大和も言葉を失う。
いつもの優しくて穏やかな高橋は、そこにはいない。
「た………高橋さ…………」
グイッと強引に自分を引き寄せ、一瞬たりとも嵩原から目を離さない眼差しが、大和の視界を過る。
何が起きてるんだ、これ。
どうなってるんだ、これ。
あかん…………息苦しい……………。
異様な雰囲気に、飲まれそう。
この街に来て、2年。
ある程度は、ヤバい空気にも慣れたつもりでいた。
繁華街の夜なんて、一歩奥へ入ればそんな連中ばかりだ。
だから、その連中が起こすいざこざや危ない緊迫シーンなんて、何度も見てきてウンザリしてた。
自分は、繁華街に馴染んでる……………そう思っていたのが、笑ってしまう。
二人の威圧感は、半端ない。
ヤクザ相手に、全く引かない高橋。
毎日世話になってて今更だが、考えてみれば、自分は高橋の事をよく知らない。
「昨日帰って来てへんかったから、心配してた」
「え…………………」
「この辺りは治安もようないからな、何かあったんやないかと……………まさか、嵩原が客やったとは」
え…………………!?
嵩原が、客。
確かに、さっきの車から降りた場面を見れば、そう取られても仕方がない。
いや!仕方がなくねーっ!!
渋い表情を見せる高橋を目の当たりにし、大和は全力で首を横に振った。
「きゃ…………違っ……こいつは、客やな…………」
「勘違いすな………………俺は、ガキに興味はねぇ」
嵩原………………っ!!
焦る大和の背後から、波のように押し寄せる冷たい言葉。
「そいつが、柄悪いのに絡まれとったから助けただけや……………用は、とうに済んだ。俺は部下が来るから帰るで………………ほなな、大和」
大和。
冷たいくせに、そこだけはやたらと耳につく。
気安く呼ぶな、ボケ……………。
「悪かったなっ!!ガキで…………っ!」
カッとした大和が叫んだ時には、嵩原はもう車を走らせていた。
「何やねんっ!アイツ…………っ!!」
素っ気なさ過ぎるだろ。
結局、礼を言う暇もなかった。
苛々して車を見るも、先の信号を曲がる瞬間まで、視線は消え行く姿を追ってる。
ガキに興味はねぇ。
ガキに。
「…………………クソ」
何故か、心の隅っこでチクリと音がした。
「大和………………」
そんな大和を見ながら、高橋は掴んでいた腕を、より近くへと引っ張った。
「あ、高橋さん……………ごめ……」
「嵩原は、よせ」
「いや……………せやから、俺は何も……」
「あいつは、俺の親の仇や……………」
「…………………は?」
迫る高橋の瞳が、本気を物語る。
仇。
仇って………………。
「昔、俺の親はあいつに殺された……………あいつだけは、許せへん。お前には、近付いて欲しゅうない。嵩原は、人殺しや」
人殺し。
きらびやかな街、繁華街。
多くの人が集まる光の奥に、見えない闇は広がる。
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