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男娼とヤクザ/シーズン2(第3話)
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グゥゥゥ……………。
「ヤベ…………腹減った………」
人間、どんな時も生きていれば、腹が減る。
シュウと一成の姿を見た帰り。
痣だらけの身体で、商売にならないと思った大和は、フラフラと繁華街の人混みを歩いてた。
金が稼げないなら、ここにいても無駄だ。
大人しく帰って、寝るしかない。
しかないが、何だか気が抜けた途端、腹減った。
そう言えば、高橋と別れてから睡眠も取れなかったが、何も食べてもいなかった。
「はぁぁ……………ったく、ここんとこ稼げてないのに、飯かぁ……………」
早く金を貯めたくて、普段から切り詰めた生活。
毎日の食費だって、やっと絞り出してる。
なのに、今夜は逃げた客のせいで、さっきのホテル代が自腹。
痛い……………。
「痛すぎる…………」
チャリン……………………
ひっくり返した財布から出たのは、小銭が370円。
「……………よし、水飲んで寝よう」
手のひらに乗ったなけなしの金を眺め、大和は大きく頷いた。
正直、愛とか恋とか言ってる場合ではない。
毎日生き抜く事が、必死である。
「嵩原に会いたいやなんて、どの口が言うと……」
ドンッ…………………!
「ぉわ………あ………っ!?」
突然ブレる視界と、目の前を飛び散る小銭。
俺の金ぇぇ…………っ!!
沢山の人が行き交う街の中。
ガックリと項垂れ小銭を見ていた大和に、いきなり背後から人がぶつかった。
完全に油断していた。
揺れた身体と共に、手にしていた金が辺りへ飛び散った。
「嘘やろ……………っ!!」
叫んだ時には、人々の足元へ小銭は消えていく。
大和が騒ごうが、誰も立ち止まろうとはしない。
世の中、こんなもんだ。
あー、腹が立つ!
カッと頭に血が上った大和は、勢いよく後ろを振り返る。
「おいっ!!てめぇなァっ…………俺の大事な金、どないしてくれんねんっ!!ぶつかったせいで、飛び散ったやないか!!拾えや、ボケッ!」
金のない空腹感のなせる技。
あまり喧嘩は好きじゃないが、イライラが口を動かした。
「…………………あ?」
あ?
相手の返答に、大和も心の中で『あ?』。
いや、そうじゃない。
「あ?、じゃねーわ!俺の金が、飛び散った言うとんねんっ!!謝れやっ、このっ………」
このっ………………。
「そら、悪かったな……………大和。金拾うたるから、いくら落ちたか言うてみ」
「嵩原ぁ……………っ!!」
渾身の叫び。
まさかの、まさか。
睨み付けて見上げた先に、なんと嵩原が立っていた。
「え……………本物?」
だって、今朝別れたばかり。
普段はどんなに気にしてても、姿すら見られなかったじゃん。
何、これ。
腰、抜けるかと思った。
高そうな黒のコートを羽織り、首からはカシミアらしきグレーのマフラー。
そして、相変わらず非の打ち所のない顔。
「俺が、偽物に見えんのか?朝まで一緒やったろ」
本物だ。
いつものように笑顔はないけど、その声まで胸を締め付ける。
「アホ…………何で、お前……」
会いたかった。
会いたかったんや……………!
「胸………………苦し……」
「大和………………?」
大和は顔を俯かせ、震える唇を懸命に耐えた。
自分の中で、自身でもどうにもならない事が起きてる。
怖い。
怖い。
人に執着なんてして来なかった。
誰かを想っても、裏切られたら同じだ。
ずっと、自分の気持ちに蓋をして生きてきたのに。
「………………なんか、嫌いや」
「何………………?」
「嵩原さん、どないしたんですかっ?」
ボソボソ口ごもる大和と、それに耳を傾ける嵩原を見かけ、近くにいた組員達が走り寄る。
嵩原は、組の幹部。
ヤバい男。
何かあれば、こうして直ぐに組員が駆けて来る。
お前なんか…………………。
「嫌いやっ!…………嵩原っ」
「やま…………………」
ガバッ……………………
「ああ…………っ!?」
賑やかな街中に響く、組員達の驚きの声。
でも、抑えられなかった。
どうなってもいい。
どうなってもいい位、頭が嵩原で埋まる。
「嫌いやけど、忘れられへん…………っ!」
「………………大和」
そう、忘れられない。
仲間の恋に現実を見た、夜。
気が付いたら、嵩原に抱きついてた。
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