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男娼とヤクザ/シーズン2(第6話)
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※R指定です。
恋に溺れるか、男に溺れるか。
「大和………………何かあった?」
美しい夜景の見える、高級ホテル。
関西でも指折りのスイートルームで、今宵大和は山代に抱かれていた。
嵩原と街で騒いでから、3日後。
勿論、あれ以来嵩原には会っていない。
連絡先も知らない大和に、嵩原と会える術はないのだから当たり前だが、それが逆に想いを募らせる結果となる。
この3日、大和はずっと嵩原を想う。
「…………………え?」
ふかふかのベッドの上。
山代の腕の中で、大和はふと顔を上げた。
「今夜のお前、心ここにあらずって感じだった」
いつも穏やかな山代の瞳が、微笑みながらも核心をつく。
触れ合う肌に、ドキッとした心音が伝わりそう。
「………………図星?」
「あ…………いや…………」
他の客は、誤魔化せた。
抱かれてても離れない、嵩原の顔。
「まさか、好きな人が出来た…………とか」
「山代さん……………っ」
自分の首筋へ唇を滑らせ、囁くように訊ねる山代に、大和はつい声を張った。
好きな人。
客にそんな事を悟られて、商売が出来る筈がない。
金を貰ってて、セックスに集中していないなんて最低だ。
それに、何処かでこの感情を、他人に知られたくない自分がいる。
上手く言えないが、なんとなく大切にしたい。
こんなに誰かを想うのは、初めてだから。
大切にしたいのだ。
ただ、山代にそれは通じなかった。
キュッ…………………
「んぁ……………っ」
「………………当たりか」
今、事を終えたばかりの敏感になった下半身を握られ、乳首にまで吸い付かれた大和は、身体をビクンッと揺らして身悶えた。
「ぁ………は……山…………っ」
「誰?俺の知ってる顔?………………もしかして、あの時のヤクザじゃないよね」
「はぁ……ぁ…………あぁっ…ん」
その上、山代は大和の足を開くと、さっきまでモノを咥えた孔の中へ一気に指を突っ込んでくる。
トロトロに解れた奥の奥。
グチョグチョ上下に突いてくる激しさに、大和は背筋を仰け反り喘ぎ出す。
「………………教えて、大和。お前の事は、俺が支えてやりたいって思ってる。俺以上に愛する男がいるなんて、俺は許さないよ」
「んっ…………山……代さ……」
許さないよ。
客として、長く大和を支えて来た山代の本音。
「大和を愛すのは、俺だけでいい……………」
「あ……っ…………駄目…っ……そこ…」
何度も抱かれ、知り尽くされた身体。
そこを集中的に虐める山代に、大和は目を潤ませ胸板へしがみついた。
「ほら……………大和の弱い所も気持ちの良い所も、俺が一番わかってるんだから…………」
「山代さん……………っ」
熱く、燃え上がる情愛の塊。
それが大和の身体を突き上げ、再び絶頂へと導く。
美しく優しい山代に覗いた、嫉妬の影。
山代だって、秘かに恋をしていた。
一目会った時から気に入った、大和のこと。
可愛い娼夫……………。
ずっと探してたのだ、生涯の伴侶。
大和ならいいなと、願ってた。
「今夜は、朝まで離さない…………」
複雑な気持ちが絡み合う。
見えない所に隠された真実。
知らなければ、幸せな事もある。
「嵩原………………最近、娼夫のガキに構っとる言うんは、ホンマか?」
大和が、山代の腕に抱かれている頃、嵩原は事務所の屋上で一人、夜風に当たっていた。
咥えた煙草の煙が、ネオンの光に紛れる。
フェンスにもたれる姿も様になった、画になるヤクザ。
「…………………上地」
嵩原は、美しい眼差しをチラリと動かし、組の幹部仲間に目を止めた。
上地。
嵩原と組を二分する、実力者。
噂では、嵩原以上に冷酷で厳しい男。
普段はあまり口を交わさない二人も、互いに何かあれば気にもする。
「組員らが驚いてたで……………お前が、他人の世話焼いとるて」
らしくない嵩原の言動を耳にし、上地は珍しく声をかけに来た。
「世話ね……………別に、焼いとるつもりはなかったんやけどな…………」
長くなった煙草の灰を軽く叩き、苦笑いする嵩原の胸の内。
組員達の話は、本当か。
含みを帯びた言葉が、やけに引っ掛かる。
「やけどな……………何や?面倒なガキなんか?」
「面倒言うか……………出来れば、関わりとうはなかったガキや。まさか、向こうから来るとは思うてもみいひんかったさかい、ちと手を拱いとる」
「…………………あ?」
二人は、決して仲が良いわけではない。
どちらが組長になってもおかしくない力は、常に周囲にもピリッとした空気を生み、派閥争いにも拍車をかける。
だが、たまにこんな会話が救われる事をわかってる。
上に行けば、弱音も吐けない。
自分達くらいは、聞いてやろうかと。
「なぁ、上地………………昔、ウチの母親は女に狂うた親父に苦労して、女と親父を恨んだまま死んでったって話したやろ?」
だからか、嵩原もポロッと昔話なんかをしたりする。
舎弟ではない、同等だから言える事がある。
「ああ………………相手の女も家族がおって、ろくな嫁でもないくせに、お前ンとこの財産をも食いつくした言うやつな。覚えてるわ…………ヤクザなりたての頃やったし、俺も親父の女癖の悪さにはウンザリして来た人間やからの」
「ホンマ、今でもその女の顔は忘れんで。兄弟もおったから、長い間ひもじい思いさせられたしな………殺したろ思うたんも、一度や二度じゃねぇ。親父と女殺して、母親の苦労知らしめたろうていつも考えてた」
ハラハラと散る灰が、闇の夜に消えていく。
一歩足を出せば煩い位に輝く街も、光の当たらない場所には数え切れない影を隠す。
まだ若かれし頃の記憶。
でも、それが案外消えなかったりする。
「実際、向こうの家まで行った事もあったしな………言うても、何も出来んかったが……………」
「は?行ったのに、何もしてへんのか?」
「見ちまったんや、女のガキを」
「女のガキ……………?」
「家に男連れ込んでたんやろ……………今日みたいな寒い日に、薄着で外へ放り出されとった。あれ見たら、柄にものう手が出せんかった」
みすぼらし格好と、必死に耐える強い瞳。
健気で、痛々しい。
忘れられない光景となった。
「上地………そのガキやねん、俺の前に現れたんは」
そのガキ。
意外な線が、点と点を結ぶ。
〖今回の登場人物〗
上地……嵩原と同じ組の幹部。嵩原をどう思っているかは謎。ただ、気にはかけている。
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