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男娼とヤクザ/シーズン2(第13話)
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『俺が、お前を買うたるから』
心臓が破裂しそうなほど、鼓動が激しさを増す。
嵩原の腕に抱かれ、大和は言葉を失った。
身体が熱くて熱くて、頭がクラクラする。
本当に、夢じゃない?
嵩原が自分を買うなんて、信じられない。
「た、嵩原……………じょ、冗談やろ?」
「俺は冗談なんか、言わん……………今日は、俺がお前を買う」
恐る恐る見上げた、視線。
優しい瞳の嵩原が、大和をじっと見つめてた。
嫌味なほど、整った顔立ち。
黒髪から覗く鋭い眼差しが、大和の心をますます鷲掴みにするよう。
「だって…………お前は、ガキに興味ないて………金で人を抱いたりもせんて、言うてたやん」
「ああ、せやな……………でも、京の言う事も一理ある。こないな身体で苦労させるくらいなら、俺が買うた方がお前に無理させんで済む」
「嵩原………………」
なんだか、泣きそうになった。
「それ、お前に無理させとんちゃうん?そんなん、俺嫌や………………」
大和は涙ぐむ目を必死に手のひらで拭い、嵩原の気持ちに首を振る。
もう、嵩原以外考えられなくなった身体。
嵩原が、いい。
客に声をかけられる度、そう思ってた。
嵩原に抱かれたら夢のようだと。
だけど、違う。
嵩原に無理させてまでする事じゃない。
「アホ……………何処に気ィ使うとんな。らしくねぇ事考えとる暇あったら、大人しゅう俺の相手せえ………それとも、俺が客じゃあかんか?あかんのんやったら、話は別……」
「あかんわけっ……………がえぇ…………嵩原が、ええよっ!!」
その身体にしがみつき、ポロポロ抑えられない感情が溢れ出る。
大好き……………。
真っ赤な頬に流れる涙。
「ホンマ……………お前は、よう泣く…………」
「嵩…………………」
熱い肌が、一層と熱くなる。
止まらない涙に触れる、嵩原の唇。
それが大和の頬を滑り、その想いも全て掬い取っていく。
キュンと身体は震え、嵩原の愛撫に声まで漏れそう。
「決まりやな………………」
「………かはら……っ」
気付かない方がおかしい。
不器用ながらに真っ直ぐぶつかってくる、想い。
突き放しても突き放しても、それは嵩原の前へ現れる。
「その代わり、こないなおんぼろ病院の硬いベッドじゃ抱かん………………ええな?」
「うん……………うん………!」
こちらの根気負け。
こいつを、他の奴に抱かせたくない……………。
そう思ってしまった。
「ラブラブか!…………悪かったな、おんぼろ病院の硬いベッドで。まぁ、しっかり固めてやっとるから、大事にしたれ………お前ら、案外お似合いやで」
「京……………お前の挑発に、まんまと乗ったわ」
「せやろ、せやろ。昔から口だけは、お前に負けた事なかったしな」
わざとか。
二人の微妙な関係に、京が揺さぶりをかけた。
口だけは……………。
いや、勘の鋭さも昔から長けていたっけ。
ニヤリと笑う京を見つめ、嵩原は僅かに口元を緩めた。
バレてたんだな。
隠し通す筈だった、秘めた気持ち。
「…………………大和、俺の家に行こう」
「え………………」
街角に立つガキを見た時から、放っとけなくなった馬鹿な野郎。
口を利いたが最後、ますますこの不器用さに目が離せなくなっていた。
男娼とヤクザ。
ろくなペアじゃない。
それから、嵩原は再び大和を抱き上げた。
来た時とは、違う。
嵩原の目が、大和の顔から逸れる事はなかった。
時折重なる視線から味わう、悦び。
離れとうない。
離れとうないよ……………。
甘えるように、嵩原の首筋へ顔を埋める大和の姿は、なんとも可愛く健気に見えた。
ガチャ………………
「嵩原さん、どちらまで……………」
「悪いな………………家まで送ってくれるか」
下で待っていた組員に声をかけ、二人は車へと乗り込んだ。
熱い、熱い夜が大和達を待ち受ける。
誰の目にも触れられない、二人だけの夜。
何人も、邪魔は出来ない時間が始まるのだ。
何人も………………。
キキ……………………
「…………………大和?」
組員達に囲まれ、大和と嵩原が車に乗り込む姿が目に止まる。
会社から近道の為に、偶然通った高級車。
「あの男………………」
車の窓を下げ、覗かせた表情に笑みはない。
「どないしたんや、山代」
山代。
すれ違う車のライトが、その顔をハッキリと映し出した。
そうだ、山代。
美しく、優しい大和の上客。
「ほら、前に頼んだだろ?ヤクザの事…………」
「ああ、嵩原言うヤバい奴な」
「まさか、二人が一緒とは……………さっさと手を打つべきだった。俺の大和に、よくも……………」
助手席から話しかける男に返事をし、苦々しく爪を噛む瞳には、怒りが満ちる。
よくも……………。
よくも、何だろう。
走り行く車が、山代の心を大きく駆り立てる。
シーズン2/完。
(シーズン3へ続く)
(皆様、お付き合い下さり、ありがとうございます。またこんな所で切りましてすみません…ちょっと本編と二人が被りそうだったのと、前より長く続いたので区切りました。また、イチャLOVE含め続き載せます。少しの間、前回同様通常運転行かせてください(*・д・)ペコリ)
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