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体育祭(後編―①)
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(もう本当に申し訳ありません( ´-ω-)この収まりきらない文章力…)
ついに、リレーが始まった。
入場門に待機していた大和は、近寄って来た担任から突然長い襷を渡され、こう言い放たれた。
「嵩原……………お前、アンカーやれ」
「は………………」
有難い事に、要らん見せ場を作ってくれましたな、先生よ。
「………………ふざけとるやろ」
体育祭で最も盛り上がりが期待される競技、リレー。
望んでもないのに任せられてしまった、それのオオトリ。
グランドに出て来た大和は、列の最後尾でぶつくさ不貞腐れながら、渋々襷を肩へとかける。
「でも、お前速いだろ?本気で走られたら、俺もヤバいかもなぁ…………」
「わっ…………何、淳もアンカーかよ!ホンマ、勘弁せえや」
テンションだだ下がりの、大和の一列向こう。
襷片手にブリブリ言っていた大和は、そこに淳がいた事を見てはいなかった。
ブーたれた大和とは正反対に、笑顔でこちらを見ている淳が嫌味のように眩しい。
勝ちへの自信か?……………そうではない。
実は、淳は淳で楽しみにしていた、友人・大和との真剣勝負。
成績とかそう言うんじゃなく、男としていつも自分を崩さない大和が、淳達の目には強く輝いている。
それが余計に、同世代の仲間として一度は勝ってみたいと思わされる、大きな存在へにもなっていた。
こんなチャンスは滅多にない。
出来るなら、全力でやりたいと思ってる。
「勘弁て……………もしかして、大和自分のタイム知らないの?」
「タイム?何や、それ」
「プッ……………らしい♪」
「はあ…………?」
「お前、俺より速いんだぜ」
「…………………え?」
パァァァ……………ンッ!!
と聞き返す間もなく、レースの火蓋は早くも切って落とされた。
「うわぁーっ!大和ぉっ!頑張れよーっ!!」
「いや、俺まだ走ってねぇしっ」
周りの観客の熱い視線を浴び、誰よりも目立ったのは言うまでもなく、お父ちゃん。
リレーにスタートしたと同時に立ち上がり、扇子を振り回しての熱烈な応援。
アレ、組長ですから。
アレ、ヤるときゃヤる男ですから(多分)。
「ギャー!大和が3位やないかっ!」
「だから、俺じゃねぇって!!」
大和のクラスが3位となるや、顔色を変えて頭を抱え出す。
見た目は文句なしにイケメンオヤジの、この一喜一憂の可愛さたるや。
「もおっ!親父は黙って座ってろ!!皆、見とるやないかァ!!」
離れた大和が、超絶ヤキモチを妬いてしまうほど。
「諦め、大和……………今の竜也には、お前の勝ち以外見えてへん。せやから、わかるな?絶対に負けんやねぇぞ」
「きょ……………」
わかるな?
父親の方へ顔を向けていた大和を見据え、もう一人のオヤジは半端なく恐かった。
なんじゃ、これの落差………………。
「結局、勝ち以外はないんかいっ!」
「嵩原くんっ、次だから!」
「もうかよっ!?早えなぁ…………!」
ただ、可愛い父親と違って、大和に一喜一憂する暇はない。
高校生が本気で走っていれば、レースなんかはあっという間。
ギャラリーに気を取られている間に、もうアンカーの番へとなっていた。
レースは、接戦。
淳のクラスが1位で、大和ともう一つのクラスが凌を削ってる。
抜きつ抜かれつの攻防真っ只中。
「若………………っ」
さすがに、高橋や錦戸も熱が入る。
拳を握りしめ、ハラハラドキドキ大切な若様を見つめてる。
「マジか……………くそっ!」
迫り来るクラスメートに腕を伸ばし、大和はハアッと大きく息を吐き捨てた。
「大和ぉ……………っ!!」
背中に浴びる、大好きな声。
「わかっとるわ……………あんたの前で負けんのだけは、御免じゃ」
大和より数秒早くスタートした淳の後ろ姿が、ターゲット。
ゴール近くでは、翔太が一生懸命淳を応援している姿がチラッとだけ視界に入った。
皆、それぞれに大切な人を応援している。
たかだか体育祭と思ったが、案外熱が入るもんだ。
「嵩原くんっ!!頼んだぁっ!」
「任せとけ……………っ!!」
心拍数が一気に上がり、初めてクラスメートと気持ちは重なる。
目指すは、1位。
バトンが指先に触れた瞬間、大和は猛ダッシュで走り出した。
スポーツ自体、あまりした事ない。
体育の授業も適度に流す程度。
だが、持って生まれた遺伝子は、素晴らしかった。
「大和………………」
幼い頃から、運動神経バツグン。
貴方の子供です、大和は。
瞬く間に、競り合っていたクラスのアンカーを突き放し、大和の足は淳へと追い付こうとする。
「行けぇーっ!!嵩原くんーっ!!」
「嵩原くーんっ!!頑張ってーっ!」
グランドに響く、嵩原以上の応援。
「親父………………若は………」
「ああ………ちゃんと、受け入れられとるやないか」
高橋の言葉に、ゆっくりと頷く嵩原の想い。
組長になるなら、先に高校を卒業しろと言ったが、内心は早くヤクザになった息子に、普通の10代を少しでも体験させてやりたかった。
「頑張れーっ!!頑張れーっ、嵩原くんー!!」
クラス中で大和を必死に応援している様が、嵩原達の目に焼き付き、知らぬ間に受け入れられていた我が子の姿に、胸が詰まる。
そして、それは本当に形としても表れた。
あと1、2Mが追い付けないまま来た、最終カーブ。
大和の身体は、ようやく淳と肩を並べたのだ。
「大和……………!」
「ぜってぇに、負けねぇ…………っ!!」
きっと、人生一の全力疾走。
驚く淳を振り切り、大和は思い切り歯を食い縛った。
淳が遅い訳ではない。
大和が速すぎた。
ゴールに待つテープを目指し、最後の力を振り絞った大和の走りは、グランド全体に興奮を導く。
ワァァァァ………………
ドッと湧き起こった歓声が、その盛り上がりを物語る。
ヤクザでも、17歳。
嵩原の望み通り、しっかり高校生を味わい、今日一のヒーローとなりました。
そう、ヒーロー。
「ハァ……………ハァ…………か、勝った…………」
激しく肩を揺らし、空を見上げる大和の顔には、微かな笑み。
足元に転がる切れたテープが、勝負の証。
見事、大和は逆転のゴールを果たしたのだった。
会場を埋め尽くす拍手を全身で浴びた大和は、真っ先に嵩原へ向かって持っていたバトンを掲げた。
「大和…………………」
それを、嵩原がどんな想いで受け取ったか。
「あかん……………俺、泣いてええか、京」
「アホ……………そこは、踏ん張れ」
これを見ていた高橋や錦戸・片山も、親子の強い繋がりに微笑ましさを噛み締めた。
「さて、そろそろお昼の準備せなあきませんね」
「ほな、俺は飲み物取ってくるわ。一度に持って来たら邪魔かと思うて、半分置いて来たさかい」
嵩原と安道が大和の話を交わしている横で、高橋と錦戸は次の準備へととりかかる。
高橋は持参したお弁当を取り出し、錦戸は飲み物を取りに立ち上がる。
「片山も食べて行けよ、ついでや」
「え、いいんですか?」
「ええもなにも、若のご友人も合流されるから」
「……………あ、はぁ…………」
それから錦戸が歩いて行くのを確認し、高橋がしれっと片山に声をかけた。
ご友人も合流。
勿論、淳達と違って家族の来ない颯の事だ。
「ええやろ?ゆっくりしてき……………」
「すみません、ありがとうございます」
然り気無い高橋の心遣い。
少し照れ臭そうに表情を緩め、片山は頭を下げた。
どうやら、賑やかな昼食となりそうだ。
「しかし………体育祭なんて俺も記憶が薄かったが、意外と悪うないもんやな」
その一方で、多くの人間が行き交う様子を目で追いながら車へ向かう錦戸は、大和の頑張りに想いを馳せる。
何だかんだ言っても、大和とはもう10年の付き合い。
小学校へ上がった時から知っている。
嵩原達の影でわかりにくかったが、錦戸も応援にはつい熱が入った。
「若みないな子やったら、そら親父も可愛いわ」
そんな気持ちがわかる歳にもなってしまった。
自分も大切な人が出来たら、何かが変わるのだろうか?
兄の事しか考えなかった錦戸には、いまだ嵩原以上の男は現れてはいない。
だだ………………。
「…………………海くん?」
遠目にもわかる、美しさ。
丁度錦戸が校門へと近付いた時、その先に見えた少年が胸を高鳴らす。
多忙がゆえに、遅れて着いた海。
偶々、秘書に促され、来賓として本部へ立ち寄ろうとしていたのだ。
「あれ……………錦戸さん?」
自分を見る視線に気付き、顔を上げる動きの艶やかなこと。
「久し振り………………」
最近、忙しくて会えなかったな。
久し振り。
今の自分には無縁と思えた、体育祭。
ホント、意外と悪くない。
(皆様、ありがとうございました!次こそは!後編―②では、終わらせたいと思います!(ヽ´ω`))
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