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大和と真木・宇佐見
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常に、護衛に囲まれる。
嵩原や上地、片山や大和クラスになると、誰かしら組員が付き、その身を守る。
「ちょっとコンビニ行って来る」
大和が財布を握り、キッチンで食後の後片付けをする高橋へ言うと…………。
「コンビニなら私が行って参ります。何を買って来たら良いですか?」
即座に高橋は濡れた手をタオルで拭き、出て行く準備に入る。
真っ昼間の日曜日。
コンビニまで、徒歩5分。
「ええわ、お前忙しいやろ…………直ぐそこやから、俺行って来るし」
「あきません、危のうございます」
「えぇ………………」
「えぇ…やありません。若は、おって下さい」
高橋の事は、大好きだ。
いつも自分を第一に考えてくれて、抜かりのない心遣い。
大和も高橋といる時は、本当に素でいられる。
ただ。
トゥルルル…………トゥルル……
「高橋、電話や」
「あ…………はい…………若、お待ち下さいねっ」
たまには、普通の生活もしてみたい。
コンビニくらい、行けるし……………。
自宅の電話を慌てて取りに行く高橋を尻目に、大和はコソッと部屋を出た。
「わっ…………若…………!」
遠くで高橋が叫んでいたが、大和は逃げるように走り去る。
たまには、反抗か。
いやいや、だから高橋の事は大好きなんだよ。
ウィィ………………ン。
「いらっしゃいませ」
近くのコンビニは、閑静な住宅街の近くだからか、比較的安全だと思う。
騒がしいヤンキーが屯する事もなく、私立高校の生徒や落ち着いた雰囲気の主婦が客。
平和な日常と言った感じで、とても穏やかな景色。
「え…………と、あった!これ、飲みたかったんや」
高橋を撒くように訪れた、コンビニ。
大和は、入って奥の飲料棚へ向かうと、最近お気に入りのレモネードのボトルへ手を伸ばした。
パッケージもオシャレなのだが、他のレモネード系より喉ごしが良く、さっぱり飲める。
たまに凄く飲みたくなるのに他のコンビニには売っていなくて、しょっちゅう高橋に寄り道してもらう。
今日は、日曜日。
家にいれば何かのついでと言う訳にもいかず、家にキープが無いと思うと無性に飲みたくなってしまった。
「おー!あった。これこれ……このレモネード、たまにめっちゃ飲みたなるんよなぁ♪」
え…………………。
大和が腕を伸ばした横から、突如聞こえた関西弁と、同じく差し出された手。
ガタッ…………………
相手は周りを見てないのか、大和の手とぶつかるようにレモネードのボトルを押し倒す。
「あっ!?ぅわ…………すんませ………」
「いや、こちらこ……………」
と、互いに見合わせた顔が、一瞬ピタリと止まった。
は………………?
「ぉわああっ!!お、お前…………若頭っ!?」
真っ先に叫んだのは、偶々大和に出会してしまった、白洲会宇佐見の姿。
「おい、どうしたん……………あぁっ!?」
駆け付けたのは、近くで買い物をしていた真木。
コンビニのカゴ片手に、大和を見つけて目を丸くする。
「あれ、お前ら……………誰やったっけ?」
しかし、大和の反応はあくまで薄い。
顔は知っているが、名前が出てこない。
名前、聞いた事あったかな?
「信じられん!!白洲会の宇佐見と真木やっ!」
「あー、そないな名前やったかな…………」
「おま…………喧嘩売っとんかっ!失礼やな!この前一緒に戦ったばかりやのにっ」
真顔で惚ける大和に、宇佐見が半ギレ。
何だ、こいつ。
マジか?マジで言うてんのか…………!?
「だって、別に自己紹介してへんし」
マジです。
「いちいち抗争すんのに、自己紹介するかっ」
ごもっとも。
緊迫した場面で、組員一人一人紹介する暇はない。
「もう、ホンマ抜けた方やな……………これで、片山さんのライバルやなんて」
「悪かったな。片山のライバルのつもりで」
頭を抱える真木の言葉にムッとしながら、大和はちゃっかりレモネードのボトルをゲット。
残っていた3本全てを手中に収める。
「しかも、そのレモネード、俺も欲しいんやけど」
「…………………え?」
「白々しっ……………それはわかるやろ!俺も手を伸ばしたんやから!」
名前から、レモネードへ。
苛立つ自分をさて置いて、早くも足が会計へ向かいかけた大和を、宇佐見の目が逃さない。
「………………やっぱ、いるんか?」
「いるわ!ここしかないから、遥々来た言うのに」
どんだけ美味しいんだ、そのレモネード。
「ちぇ………………」
「ちぇ、言うな」
手を出す宇佐見に、大和は渋々一本を渡す。
天下の組織。
竜童会と白洲会。
まさかの小さなコンビニで、レモネード取引成立。
「ハァ………ハァ………若っ!」
そして、取引の後はレモネードよりも酸っぱいお説教。
「高橋さん…………っ!」
「ゲ………………た、高橋」
大物登場にビビる真木と宇佐見を背に、大和は違う意味でビビった。
額に光る汗が、高橋の心配を物語る。
「じっくり、お話致しましょか」
「ひっ………………」
たかが買い出し、されど買い出し。
ほんの少しの行動も、心配なんです。
日本一の組織とは、それだけ敵も多い。
お高いレモネードでした。
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