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三者面談(大和と安道)/後編
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「…………………え」
安道が朝大和の家に来た日の放課後、例のプリント通り、三者面談は開かれた。
直近の本編を見て下さった方なら、おわかりであろう。
いきなり面談に安道が現れた、担任の反応。
『…………………え』
理事長……………!?
「ん……………?先生、どうかしたん?」
頻繁に学校は訪れないが、実は年に数回理事長も含めた会議が行われている。
ウチの理事長は、財界では有名な実業家・安道。
別に、直接話をする機会は少なくとも、そんな理事長の顔を忘れる訳がない。
首を傾げる大和の前で、何故大和の保護者として来ているのか、担任は固まった。
理事長、独身だったような……………。
おいおい、コレ触れても良い話題か?てな具合に、担任の頭の中は失礼があってはならないと、グルグル妄想が駆け巡る。
「先生、今日は大和の保護者代わりで来とるんです。何も気にせんと、いつもと同じように面談始めてくれますか」
「へっ……あ……は、はいっ……申し訳ありませんっ」
だが、当の安道は相変わらずの落ち着きよう。
担任の動揺など全く気にもせず、ドーンと構えて真顔で事の進行を進めてる。
「………………何」
当然、安道が理事長とは知らない大和は、二人の微妙な空気にハテナ?が頭上を飛び交う。
担任の様子が、いつもと違い過ぎる。
「あのさ、京之介……もしかして、先生と知り合…」
「大和、席つけ。面談始めてもらうぞ」
訊ねる隙もなかった。
「では、宜しくお願い致します。それでですね、これがまず最近のテストの点数なんですが……………」
「………………あ?」
ぅわ………………。
しかも、いきなり近頃やったテストの成績表を見せられては、大和の質問など一瞬でぶっ飛ぶ。
「………………なんや、これ」
安道の眉間に寄った皺の恐いこと。
「今学期入って、えらい点数落ちとるやんけ」
「せ…………せやな…………」
安道と担任の関係なんて話題、聞いてるどころではなくなった。
「せやな?…………お前、高校入れてもろうた理由、ナメとんか。これじゃ、卒業も怪しいやねぇか」
「う……………ん……」
反論の余地なし。
確かに、このところ成績が落ちてる。
支部の方も何かと忙しく、勉強する前に帰るとグッタリしてしまって、身が入らない。
「家が忙しいなんて理由、クソやからの。他人と比べる気はねぇけど、お前より大変な子なんか、世の中山ほどる………この環境が整っとるだけでも、有り難てぇと思え。大体、お前は自分で今の道選んどんや。その為に何をせなあかんのか、責任持てよ」
自分から学校へ行きたいと言った訳ではない。
お父ちゃんから、破門を条件に卒業を言い渡された。
それを、大和がどう受け止めたか。
「竜也の想いを、お前に無理矢理押し付けるつもりもねぇが………お前かて、学校が嫌でしゃーない訳ちゃうやろ?入って良かったて少しでも思うなら、悔いなく終わらさなあかん。家業だけじゃ得られんもんが、ここにはあんねん。勿論、ここにはねぇもんが、お前の道には沢山あるけどもな」
ここに来なければ出来なかった、同世代の仲間。
ヤクザだけをしていたら、到底見られなかった世界に楽しみも溢れる。
「京之介…………………」
多くの世界を見てきた安道だから伝えられるその目は、大和に何を教えるのか。
「今は面倒くせえと思うても、やって損はねぇ………必ず、お前の成長の糧になってくれる筈や。まあ、お前には有り得んと思うが、イジメとか精神的な何かを抱えとんなら話は別やで?そうなったら、竜也や俺が全力で助けたるさかい」
突き放すのではない。
常に寄り添い、見守ってくれている。
厳しくとも、大和を一番に想い話す安道の言葉は、何よりも染み渡る。
「ごめ……………ありがとう」
キツい中にも、目を細め頭を撫でてくる安道に、大和はにわかに顔を赤くした。
「努力言うもんは、して悪りィもんやねぇぞ。必死にお前を育ててくれた、あの親父見とったらわかるやろ?」
それを言うなら、親父を支える為に誰よりも努力をして、今の地位を掴んだ安道も同じだろう。
でも、安道はいつも心友を誉める。
どんな想いで嵩原が大和を育てているか、ちゃんとそれを教えてやる。
二人を想う、安道の最大の愛情。
「……………頑張ろう、大和」
どんだけ手を焼いても、絶対に見放さない優しさ。
恐いオヤジの深い愛。
大和も、ちゃんとわかってる。
心に落ちた言葉は、きっと大切に残るから。
それから、二人は学校での大和の様子を担任から聞いていた。
皆に好かれている。
その一言が、安道にはどれほど嬉しかったか。
「大和、帰りに甘い物でも食べに行くか?」
学校の駐車場で、大和にかけられた誘惑。
「マジ!?行く、行く!あんみつ食いたい!」
「おし、最近俺が改装のプロデュースさせてもろうた店がある。そこのあんみつ絶品やから、連れて行ったるわ」
「イェーイ♪持つべきは、京之介やぁ♡」
「都合ええやっちゃな…………」
第二の父親も、自慢の親父。
若頭まで上り詰めた大和が、いまだこんなに素直な理由。
それは、周りの大人達が大いに関わる。
厳しさの中に見えた、果てしない愛情。
嵩原には嵩原の、高橋には高橋の。
そして、安道には安道の愛の形。
大和のこれからは、まだまだ大人達の熱い想いに包まれる。
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