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寄り添う人(高橋と大和)/前編
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(もうすみません(汗)大和とお父ちゃん、大和と安道の関係を描いたら、やっぱり高橋と大和もまた描きたくなってしまいました…三人の大人達に守られ愛されてきた大和の毎日ですね…(すみません、他の皆も書きますので…(;-ω-)ゥ))
絶対、主従。
嵩原に、安道。
大切な親父がいる大和にとって、もう一人外せない男がいる。
嵩原の側で自らを磨き、その手にした実力を武器に新たな主の下で勢力となった存在。
若頭補佐・高橋。
大和のかけがえのない右腕。
誰が見ても、それは絶対的な信頼関係で結ばれた二人だが、最初からそんな絆が出来上がっていた訳ではなかった。
これは、大和がヤクザになって間無しの話。
以前も書いた事がありますが、あの頃の大和は同じ組の人間達にもからかわれ、しょっちゅう喧嘩をしていました。
「大和さん…………っ!」
今夜もまた、屋敷に響き渡る高橋の声。
嵩原の承諾もなく、背中に刺青を入れてから数ヶ月、この時期の大和は色んな意味で荒れていた。
まるで父親の七光りのように…………組長の息子だからとヤクザをやると宣言した大和を、よく思う者などいない。
15歳で刺青入れたからって、意気がるな。
誰もがそう思っていた。
嵩原竜也は、カリスマ。
でも、息子はタダのガキ。
所詮、直ぐ弱音を吐いて終いや。
「何ですか、その傷………また喧嘩ですか?」
「しゃ、しゃーないやろ…………街歩いてたら、いきなり絡まれたんやから」
その上、また質が悪いのが、この話が他所の組にまで知れ渡ってしまった事。
「街……………と言う事は、まさか相手は堅気…」
埃まみれの服に、赤く腫れた頬。
唇にいたっては、じんわりと血が滲む。
「ちゃうわっ…………どっかの組や。向こうは俺を知っとったみたいやけど、俺は誰かも知らん」
「え……………」
広く長い廊下で、強張る高橋の顔が大和の視界に迫る。
また、説教だ。
堅気とやろうが、組員とやろうが、毎回高橋には怒られる。
自分でもやりたくて、喧嘩しているんじゃない。
いつも相手から絡んでくるんだ。
どうせえ言うねん…………。
正直、大和は高橋の口煩さにウンザリしていた。
ヤクザだから喧嘩位するだろう?
「どっかの組って……………それ、ホンマです?」
「ホンマやったら、何や。悪いんは、あっちやぞ……俺やねぇ」
「大和さん……………」
やってらんね……………。
大和は露骨に嫌そうな表情をすると、痛む唇を指で触りながら高橋から目を逸らした。
だが、高橋はそれを許してはくれない。
「最悪ですね………事の重大さをわかってますか?」
「………………あ?」
ずっと付いていくと決めた。
大和を育て上げると決めたのだ。
大和に嫌われる事など恐れていては、何の成長も見届けられない。
「貴方は、もう竜童会の人間です。竜童の名を背負って喧嘩をした時点で、竜童会がその組と喧嘩をした事になるんですよ?たかがガキの喧嘩一つに、組員動かしますか?」
「はあ?何言っとんな…………絡んで来たんは、向こうやて言うとるやろ!竜童なんか関係ねぇわっ」
「そないな都合ええ解釈が、通用する世界やと思うとんですか。ヤクザの面倒くささ、わかってへんですね」
気を悪くした大和に対して、一歩たりとも下がらない高橋の凛とした覚悟。
「大和さんは、竜童の組員やと言う自覚が足りひんです。どんなに下っぱでも、組員が他所と事を荒立てれば、ヘタしたら親父にまで話が上がります。どないします?向こうが、ゴタ抜かして来よったら……幹部らに頭下げて、収めてもらわなあきませんよ」
「…………………っ!」
大和の反論も、全く寄せ付けない佇まい。
冷静な眼差しが、大和を飲み込む。
腹が立つ。
どのみち、父親と比べて腹の中で笑ってるんだろ。
「おい、なんやアレ…………」
そして、その様子は度々同じ屋根の下、嵩原の目にもよく入った。
「ああ…………はい、大和さんがまた喧嘩したらしいです」
「また…………?」
大和の帰宅から、少し遅れて帰った嵩原が、見つめる先。
高橋を睨み付ける我が子に、目が止まる。
「しかも、どうやら今回は他所の組員が相手やと」
「………………は」
ジャケットを受け取る組員もビビる、嵩原の渋い表情。
他所の組と事を交えるとは、それだけの行い。
本当にわかっていなかったのだ、この時の大和は。
ヤクザになった意味も。
竜童会と言う看板を背負う意味も。
「………………だったら、頭下げりゃええんやろ」
「はい……………?」
高橋の言葉に、投げやりのように苛立つ大和。
「別に、なんぼでも下げたるわ。どうせ、皆俺の事アホやと思うて見下しとんや…………またやらかした位に見られるだけやし」
「本気で言うてます?それ………そう言う問題やないでしょう。それに、ご自分をお下げになるのはお止め下さい。大和さんはとても良いモノをお持ち……」
「も、ええからっ………そんな話!お前や親父と、俺は違うねんっ!自分らが出来るからって、俺にそれを向けんじゃねぇよっ!」
高橋の過去を知らない大和の目。
初めて会った時から、綺麗なお兄さん。
ヤクザになったからと言って、周りから疎まれている自分とは違う。
きっと、父親と共に歩きながら輝かしい実績を積んで来たんだと思ってた。
「お前みたいに、完璧な奴にはわからんわ…………ヤクザになったかて、順風満帆な道しか進んでへんのやろ!説教ばっか、ウンザリやねんっ!」
パァァァァン…………ッ!!
「あっ……………親父!?」
突然顔に走った痛みと、高橋の驚いた叫び声。
目の前が一瞬暗くなり、大和はグラつく体を咄嗟に両足で踏ん張った。
何………………。
「お前、自分が言うてる事わかっとんか…………高橋の歩いて来た人生も知らんガキが、勝手な見解でモノほざくな。ウンザリなんは、てめぇの根性や。そないな覚悟でしかヤクザ出来んなら、さっさと組から抜けてまえ…………足手まといじゃ」
いつの間に帰ったのか、自分と高橋の間に立つ父・嵩原。
守られたのは、元右腕。
大和は、嵩原の平手によって顔をぶたれてしまった。
「や…………大和さ………」
動揺している高橋の声が、自分に恥ずかしさと劣等感を湧き起こす。
15歳で刺青。
ヤクザになったつもりでいた。
「悪かったな……………銭にならんガキで………っ」
ガタンッ………………!
近くにあった飾り棚に身体をぶつけ、大和は震える唇を噛みしめながら部屋へと走り出した。
「大和さん…………っ!!」
愚かな、自分。
大好きな父親に呆れられ、唯一の味方になってくれた高橋には、酷い言葉を浴びせた。
「ウンザリなんは、俺やんけ…………」
最低だ。
馬鹿なガキは、逃げる事しか出来ない。
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