アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
男娼とヤクザ/シリーズ4(第7話)
-
(皆様、男娼シリーズも読んで下さいまして、ありがとうございます(*_ _)ずっと、この話はあまり受け入れられていないかなーと思っていました。意外にも読んで下さってる方がいて感無量です(泣)本当にありがとうございます)
「………………ん……」
どれくらいの時間が経ったろう。
長かったのか、短かったのか。
いつの間にか寝ていた大和は、モゾモゾと寝返りをうち、ふと目を開ける。
「あれ…………」
やけに静まり返った部屋。
さっきまで握られていた指先には、もう温もりさえ消えている。
「嵩………原…………嵩原っ!?」
まさか、夢だった?
そう思ってしまうような、いつもの殺風景な景色が視界に広がり、身体は慌てて起き上がった。
「嘘やろ…………」
一気に押し寄せる、言い様のない不安。
周囲を見渡すも、姿のない嵩原に込み上げるのは恋しさばかり。
あれが夢だったら、悪夢だ。
散々蜜の味を教えた後のお預けを食らうような、残酷さ。
ただ、パッと前を向いた瞬間、テーブルの上にカップが2つ並んでいるのを見付け、大和は力が抜けたようにベッドに座り込んだ。
「あ………あぁ………」
沢山話をした痕跡。
嵩原は、いた。
夢じゃなかった。
「もう、帰るなら言うてけや…………」
ほうっと息が出来る事の悦び。
数時間前まで、死にたくなる程に泣き崩れていたと思うと、嵩原と話が出来た事は大和にとって大きな救いとなった。
だって、嵩原が帰ったとしても、また会える。
会えるのだ。
こんな幸せな事があろうか。
大和はテーブルを片付けようと、ベッドから降りて何気にそこへしゃがみ込んだ。
元々、狭い部屋。
ベッドとテーブルの間はそんなに離れてなく、しゃがめば自ずとベッドの脚元が視線の中に入る。
「え……………」
そこで、大和はようやく気が付いた。
ベッドの下にあったものが、見えない事。
「いや…………そないなワケ…………」
奥の方へ入ってしまったかも…………。
身を屈め、ベッドの奥を覗き込む大和に、それが消えたなんて頭はない。
でも、無くなっている。
「おかしいな……………」
別の所かもしれないと、小さな部屋中を探して回ったが、やはり何処にもそれは見当たらなかった。
「何処置いたっけ………山代さんから貰うた、封筒」
そう、封筒。
大和が探しているのは、山代から渡された例の封筒だった。
「あの中には、山代さんの名刺も入っとるのに…」
二人で会った日。
帰り際、山代が言った。
『もう、身の上を隠す気もない…………ここが、俺の会社だ。仕事中は携帯にも出れない時があるけど、会社になら秘書が繋いでくれる…………いつでも電話をしてくれたらいい』
いつでも。
肩書きは、副社長。
自分なんかが知り合って良い人ではない。
本当に大丈夫なんだろうかと思いながら、大和は黙って頷いた。
「嵩原に見られる前に、何とかせえへ…………」
嵩原に。
その時、思いもしなかった事が脳裏を過る。
「………………もしかして」
自分が寝てしまった間に、もう見てしまってたら?
ゾクッと背筋を流れる、冷たい気配。
嵩原が急に消えた理由が、封筒だったら?
「あかん…………や、山代さんが危ない………っ」
バサッ………………
大和はハンガーに掛けていたコートを急いで取り、出掛ける支度を始める。
しかし、動揺していた最中、ザッとしか見なかった名刺の社名が直ぐには浮かばない。
「えと…………えっと!あーっ、何やったけ……クソ……結構有名な会社やったのに…………もうええ!出てからやっ!」
頭を小突き、玄関のドアを開けに行く逸る気持ち。
嵩原は、組の幹部。
あれを見て、大人しく済まされる気がしない。
早まるな……………。
「頼むから、早まらんといて!嵩原ぁ………っ!」
願いは、届くか。
街を駆け抜ける大和に、嵩原の背中は遠く。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
212 / 241