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男娼とヤクザ/シリーズ4(第9話)
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約一時間ほど前。
ぐっすり眠ってしまった大和を置いて、嵩原は部屋を出た。
手には、山代からの封筒。
もう一方の手には、山代の会社名が記された名刺。
大和が有名だったと思うように、関西ではなかなかの大手と言うべき企業。
相手にすれば面倒な事位、嵩原にもわかってた。
でも、気が収まらない。
ヤクザと言う商売がら、自分が調べられるのは仕方がないと思っているが、それを餌に大和を苦しめた事が。
「……………何様のつもりや。金持ちの堅気が、慣れへん世界に手ぇ出しやがって………」
ただ、顔がわからなかった。
文句の一つでもぶつけてやりたかったが、ヤクザが正面玄関から乗り込む訳にも行かず、とりあえず若手に顔を直ぐ調べさせた。
そうして、偶々地下駐車場への入口付近まで辿り着いた時、その若手から連絡をもらう。
まだ若い副社長。
嵩原は、メールを送ると言う話を受けながら、何気に覗き込んだ駐車場の奥に、高級車ばかりが連なっているのを少しだけ確認した。
高級車……………。
まず、平社員が乗っては来ないだろうと、勘を働かせる。
ならば、利用しているのは幹部以上。
幹部を捕まえるならココか…………そう思った時、偶然山代がエレベーターから降りて来るのが見えた。
ガッ………………!!
『…………てめぇか、山代言うんは』
嵩原に、迷いはなかった。
ここから始まった、二人の対峙。
惚れた男を想うヤクザの登場が、山代の視界を埋める。
鋭い眼差しと、端整な顔立ち。
自分よりも10歳近く年上の嵩原は、とても艶っぽく、『男』を感じさせるヤクザだった。
「答えろ………何で、大和を傷付ける真似をした」
大和でなくとも、きっとこの男は人から愛されるのだろう。
自覚のないまま他人を惹き付け、自覚のないまま他人の心を翻弄する…………だから、大和も惹かれていった。
ヤクザのくせに…………。
そう思う何処かで、自分よりも自由に見える嵩原が羨ましくも思えた。
自由。
どんなに大和を好きでも、自分はやっと一歩を踏み出せた。
今になって、やっと…………。
「………………お前に、それを言う権利はあるのか」
「何……………」
恐くないと言えば、嘘になる。
だが、山代も引くわけにはいかなかった。
「所詮、ヤクザだ。何をどう頑張ったって、社会からは嫌われている…………将来ある大和の人生、お前が奪うなよ」
生半可な気持ちで動いた訳じゃない。
覚悟を決めたのだ。
「………………あ?」
「大和は、普通の少年だ」
胸ぐらを掴む腕を握り、睨む瞳に想いは覗く。
嵩原は山代の自分を見る目に、ようやく話が読めた。
「なるほど…………てめぇ、大和にホの字か。せやから、こないな真似…………」
「ヤクザなんかに惚れたって、幸せになんかなれない。大和が苦労するだけだろ」
「だったら、俺にこれを突き付けたらええ話や………お前のせいで、どれだけあいつが苦しんだんかわかっとんか………っ」
だから、なんだ?
持って来た封筒を掲げ、凄みを利かせる嵩原の憤り。
「お前に見せたって、ヤクザがそれを真摯に受け止めてくれるって保証が何処にある?確かに、大和には申し訳ない事をしたと………」
「そないな事は、綺麗ごとや。あいつは、生意気しとっても中身は弱ぇ………てめぇの親がヤった事をいきなり背負わされて、立ち直れる思うとんか。俺からあいつを奪いたいなら、てめぇ自身で勝負せぇ。心に傷まで付けてする事じゃねぇわ……ボケぇ!」
泣き晴らした顔が、頭から離れない。
これまで、こんなに誰かに本気になった事があったろうか?
ああ、自分はとことんガキにベタ惚れだ。
山代相手に怒りをぶつけながら、嵩原の中でどんどん溢れていく大和への想い。
「………………好きなら、泣かすな。あいつは、お前が思う以上に脆いガキなんやからな」
「嵩原……………」
恥も外聞もない。
ヤクザが、子供に真剣な恋をしたのだ。
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