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男娼とヤクザ/シリーズ4(第11話)
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『傷付けとうねぇんや…………』
初めて会った時から、美人だった。
男のくせに人目を惹く出で立ちと、それとは裏腹に常に他人より一歩引いた性格。
勿体ねぇ…………。
自分の中で溢れ出るその姿は、錦戸の心を瞬く間に鷲掴みにした。
もっと知りたい。
もっと近付きたい。
もっと、もっと…………。
欲求ばかりが募り、手にしたい衝動。
でも、傷付けるのが怖かった。
儚げで繊細、何処か自分を晒さない友に、珍しくこっちも臆病になっていた。
「錦戸……………」
しかし、今なら少しは前へ出て行ける。
何年もかけて心を解して来たんだ。
この想いを解放したって、許してくれるだろう?
「どうする、嵩原さん…………それでもヤるなら、こっちも本気で潰しに行かせてもらう。あんたがどんなにすげぇヤクザの幹部だろうと、俺も一ミリだって引いたりしねぇよ」
大企業が、ヤクザと喧嘩。
週刊誌のネタのような啖呵を、錦戸は平然と言い放つ。
それを聞く山代が、どんな気持ちか。
綺麗な唇を微かに震わせ、錦戸に迷惑をかけてると懺悔の様に俯く姿が、錦戸の目を奪う。
だが、錦戸は止めなかった。
世の中、そんなに甘くはない。
いくら地位があったとしても、一般人が一人でヤクザを相手にするなんて、無茶な話。
自分が出なければ、山代が危険。
それくらい、馬鹿でもわかる。
何があろうと守ってやりたい。
そう想う決意に嘘はなかった。
「……………俺と喧嘩して、勝てる思うとんか」
とは言え、相手は裏社会の大物。
「喧嘩のやり方なら、数えきれん程知っとる。同業だろうが堅気だろうが、ヤるなら手は抜かへんし、とことん苛め倒すで」
錦戸が何を言おうと怯む筈もなく、表情一つ変えず怖い事を言い放つ。
結局、自分はヤクザ。
ヤクザはヤクザのやり方でしか、大和を守ってやれない。
「そら、やってみいひん事にはわからん話や」
「フン…………ええ根性しとるの」
ただ、先に錦戸が頭を下げた事で、僅かに空気へ変化は生じていた。
大和の辛さに理解を示した、錦戸の気遣い。
嫌な気はしなかった。
怒りの込み上げた嵩原が、山代に一番伝えたかったのは、その辛さだったから。
そして、この張り詰めた雰囲気を一気に変える事が起きる。
カツンカツッ…………!
「たっ……ハァ…………た、嵩原ぁっ!!」
色男達を一望し、汗まみれで現れた少年。
「………………大和」
嵩原や山代が顔を上げる中、ようやくその背中に追い付いた。
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