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男娼とヤクザ/シリーズ4(第12話)
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「ハァ………ハ……嵩原……ぁ……」
どれだけ走ったろう。
額に汗を滲ませ現れた大和に、嵩原や山代も目を丸くした。
息は切れ切れ、肩は大きく揺れる。
まだ寒い時期なのに、顔は真っ赤に染まる娼夫の少年。
「も…………やっぱり、ここやった………」
嵩原を見失ってから、後。
住まいのビルを飛び出した大和は、うろ覚えだった山代の会社名を必死になって思い出す。
確か………確か、関西の中でもかなりの大手。
若い社長が、たまに経済誌の表紙を飾っているのを、どっかに貼られた広告で見た事がある。
山代は、そんな会社の副社長。
山代さん、すげぇ…………。
なんて馬鹿な事も途中考えてしまったが、大和は一生懸命走った。
時折へばりながらも、一生懸命。
「大和………おま………走って来たんか?」
だから、さすがの嵩原も大和の登場には驚いた。
ビルからここまで、決して近いとは言わない距離。
まさか、寝ている筈の大和が来るなんて、思いもしなかったから。
が、大和の頭の中は、違う意味でそれどころではなかった。
「山代さんっ!大丈夫ですかっ………嵩原に何もされてないですかっ!?」
「え……………」
「オイ、お前な………」
喧嘩売ってますかー?
自分を通り越し、山代の身体を急いで見渡す大和に、嵩原の顔はやや引きつる。
「だって、嵩原ヤクザやし………っ…山代さんに何かしとるかもって思うやんっ」
「何かって、何や。お前、それでよう俺を好きやて抜かしとんの」
「いやっ………俺には優しいで?俺には。せやけど、ヤクザの時の嵩原は恐いやろ?」
「いくら俺でも、お前の知り合いかもしれへん奴へ、むやみやたらと手ぇ出すか!」
「え、そうなん?」
「お前やなかったら、確実にシバいとる」
普段はクールで強面な嵩原が、こうも好きに言われる事などまず無かろう。
唖然とする山代や錦戸を尻目に、まるで痴話喧嘩のような話を繰り返す、大和と嵩原の仲睦まじさ。
「大和……………」
自分を真っ先に心配してくれた嬉しさと、大和と嵩原の関係性を目の当たりにさせられた現実に、山代の心は感情が複雑に絡み合う。
もう、こんなに…………。
もう、こんなに二人は深くなっているのか。
「ぷ…………仲ええな、二人。ヤクザなんて、結局どんなやろと心配したけど…………あの子の事、大事にしたっとるやん」
「……………錦戸」
「お前の気持ちもわかる………でも、あえて言う。似合っとるよ」
パートナーとは、時に酷だ。
言葉の出ない自分を見つめ、ハッキリ言い切った錦戸が、山代の視界を遮る。
「これ以上もがいても、あの子を余計に傷付けるだけやで…………傷付けて手に入れたって、幸せにしてやれるとは思わん。止めよう…………」
止めよう。
「……………ただ、それでもお前が嫌われてなくて、ちょっとホッとしとる」
「錦……………」
止めよう。
わかってる。
嵩原と話す大和に目を向け、山代は唇を噛み締めた。
これが、事実。
会いたかった筈の少年の素直な表現。
大和の嬉しそうな顔が、とても眩しい。
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