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男娼とヤクザ/シリーズ4(第16話)
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欲しい。
熱い熱い抱擁と、とろけるような囁き。
そして、意地悪な誘惑。
「嵩原…………好き…」
掴んでいた腕を背中に回し、大和は大好きな身体へしがみつく。
広い肩幅に、服の上からも伝わる筋肉。
何の疑いもない意識の罪なこと。
大和にとって、ようやく訪れた安息の胸の中。
肌へ感じる温もり全てが、幸せでしかなかった。
ただ、それが嵩原ならの話ならば。
「や………大和、もしもーし……」
戸惑う声が、静かな部屋に響き渡る。
さて、これをどうしようか。
今大和が抱き付いているのは、明らかに嵩原ではなく湊である。
ふかふかのベッドの上。
綺麗な肉体を晒す友に、湊の手は行き場を失う。
滑るようにきめ細かな柔肌。
バランスを崩さぬよう、ゆっくりマットへ腰を下ろす湊は、その背中へ触れて良いものかと肌から5㎝程の高さで動きを止めていた。
「ん………ん……」
それでも、嵩原しか頭にない寝惚けた大和に、この事実は頭にはない訳で…………。
「嫌や…………離れとうな……ぃ」
「な……………」
湊の首筋へ顔を埋め、グルグル喉を鳴らしてる。
嫌や…………て。
「もう、どんだけ兄貴が好きなんだよ………」
こんな声で兄に甘えたんだと思うと、さすがに抑えていた何かへ火が点きそう。
ギシ………………
「あ………ぁ……」
シーツに沈む肉体も、それはまた許してもらいたい。
男は、時に男でも欲情くらいする。
湊は、大和の身体を抱えるようにして向きを変え、その姿を見下ろしながら指先を滑らせた。
「そんな可愛い事ばかり言ってたら、いくら俺でも理性吹っ飛ぶぞ」
「んっ………ゃ…」
ぷっくり立った乳首に当たる爪が、悪戯心を擽る。
兄は、どれほどここへしゃぶりついたんだ。
しなやかな身体に残る、ほのかに赤い痕跡。
その一つ一つを指で辿り、湊の想像をかき立てる二人の愛し合う光景。
たまらない苛つきと、羨ましい程の愛の形。
僅かな愛撫でも感じる敏感さに、湊は唇を噛みしめた。
きっと、朝までそれは続いたに違いない。
何で、よりにもよって大和…………。
「俺も、好きだったのに………」
好きだったのに。
「ん…ぁ………え?」
朧気な意識の中に入るそれに、大和はようやくうっすらと瞳を開けていった。
好きだったのに…………?
昨夜、嵩原は一晩中語ってくれた。
『お前が、好きや…………お前を愛しとる、大和』
夢のような夜の夢のような時間。
嵩原の気持ちを疑うような瞬間なんて、大和には全くなかった。
「誰……………」
嵩原じゃない…………。
徐々に鮮明になっていく視界を見上げ、塞がれた意外な景色。
優しい笑みに見る、美しく端整な顔立ち。
決して、嵩原には負けていない。
でも、確かに嵩原ではなかった。
「み……………」
まるで、狐にでもつままれたような大和が、湊の表情へより笑顔を誘った。
やっと、目が覚めただろうか。
みるみる顔色を変え、驚きを露にしていく様子に、湊はやんわりと頬へ手を添えた。
「みな………っ……」
「ぷ…………その顔、数分前の俺。おはよう、大和」
遅い朝が、ついに明ける。
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