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男娼とヤクザ/シリーズ4(第17話)
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おはよう。
こんなに驚いた朝は、きっとない。
「きょ…………兄弟ぃっ!?」
パン一姿も忘れる、驚愕の新事実。
目蓋を開けた先にいた人物に、慌てて飛び起きた大和の顔は、まさに数分前の湊。
それから、二人してここにいる理由を話し始めて、また鳩が豆鉄砲。
今日も然り気無くオシャレな友人を見上げ、唖然と口を開く。
「まさか、大和と兄貴がデキてたなんてな…………俺も、目が点になったわ」
互いにそれぞれの境遇を話しておきながら、全くこの事には気付かなかった不思議な関係。
ベッドの上に二人して座り込み、見つめ合う眼差しの恥ずかしい事。
「ご、ごめ…………」
つい、大和は真っ先に頭を下げた。
湊は、自分の事をよく知っている。
しかも、母親の件もある。
大事な兄の恋人が娼夫と聞いて、そりゃいい気はしないだろう。
「別に、謝る事じゃないよ。兄貴が大和を選んだんだ、胸を張ればいい」
「せやけど……………」
「お前がどんだけ兄貴を好きかも、凄く伝わったからさ」
「………………っ」
だけど、湊は大人だった。
なんと寛容なハート…………。
二人を理解し、クスクス笑う湊の瞳に、大和は顔を真っ赤に染めて俯いた。
有り難い友の心遣い。
こうして見ると、ふとした笑顔や声質が本当に嵩原と似ている。
悶々と甘えていたと思ったら、大和は益々恥ずかしくなった。
「前から放って置けない所があったけど…………大和って、やっぱり可愛いな。兄貴がお前を選ぶの、わからないでもない」
「え……………」
「……………ホント、羨ましい」
「みな……………」
羨ましい?
羨ましい……て………。
「おい、何やっとんな…………お前ら」
大和は、その言い方が何処か引っ掛かった。
「あ……………」
ただ、それの意味を聞こうと思った時には、寝室の入口で怪訝そうな家主がこちらを睨んでた。
「たっ、嵩原………っ!」
「兄……………」
「大和…………お前、その格好で湊を誘惑しとんやねぇやろな」
「へ…………ぁあ……っ」
ギラリと見下ろす目の恐いこと。
弁解のしようもありません。
ほぼ全裸ですから、大和。
と言うか、誘惑してました…………貴方と思って。
「サッと服着んかい」
「は、はい…………っ」
完全に、怒ってる。
大和は冷や汗をかきながら、シャワールームへ服を取りに行った。
昨夜、我慢出来なかった嵩原に、シャワー浴びた途端ベッドへ連れ去られてたのだ。
「兄貴……………」
「ったく、帰るなら送ってやらんとあかん思うて、早めに戻って来たらこれや…………ホンマあいつは目が離せん……………湊、ちょっとええか」
ブツブツ言いながらも、大和の走る背中から視線を逸らさない嵩原。
そして、そんな嵩原が大和と同じ位大切にしているのが、弟・湊。
湊は兄の呼ぶ声に顔を上げ、部屋を出るよう促す仕草に、少しだけ口元を緩め返事をした。
何が言いたいかは、察しがつく。
「はぁ……………」
湊からは出るのは、重い溜め息。
大和の為にも踏ん張っていた気持ちが、足元から揺らぎそうだった。
「……………すまん、湊」
「え…………?」
リビングに入るなり、嵩原は湊へ謝った。
「大和との事、言えてへんかった」
「クス……………別に、最近俺も忙しくて会えてなかったしな。何も謝る事じゃないよ」
「せやけど…………」
「せやけど…………?」
なかなか連絡が取れなかったが、ずっと気になっていた。
いつか、自分が大和と会っているんじゃないかと、心配していた湊の様子。
湊にとって、大和とは何か。
「お前、大和を好きなんやろ?」
当然、嵩原はそう思ってた。
「……………は?何、それ」
だが、湊の反応は違った。
眉間にシワを寄せ首を傾げる弟に、嵩原も眉をひそめる。
「いや、何ってやな…………」
「確かに、大和は俺と同じように苦労してるから、支えてやりたいとは思うけど……恋愛感情はないよ」
「え?そうなんか…………」
「好きだったら、兄貴よりも先に告ってるわ。俺、これでも奥手じゃねぇし…………ただ」
「ただ、何や…………」
チラッとこちらを見た瞳に浮かぶ、僅かな迷い。
言っても良いのか、どうか。
自分を見つめたまま言葉を飲み込む湊が、いつになく嵩原の視界を占領する。
「これ言ったら、二人を苦しめる」
「みな……………」
ドキッとした。
離れていた時間は長かったが、大切な家族である事は変わらない。
愛しい眼差しが言わんとしている想い。
「………………相手が大和じゃなかったら、絶対渡さなかったよ」
渡さなかったよ。
それは、許されない感情。
弟なりに秘めてきた気持ちが、嵩原の中に言い様のないざわつきを呼び起こす。
「兄貴に会いたくてこっちに来た事に、嘘はない」
湊から捜して来てくれた時、本当に嬉しかった。
ヤクザになった兄でも、会いたいと思ってくれたのだと。
「湊………………」
それの中に隠された、本心。
まさか?
兄弟以上のものが、そこにはあった。
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