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男娼とヤクザ/シリーズ4(第18話)
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(最近わけわからない不具合が多くて、皆様にはご迷惑おかけします。申し訳ありません…そして、こちらの大和達の結末に悩むばかりの今日この頃です(まだ決められない…すみません)いつも皆を動かして決まります…)
10程も歳が離れた弟。
別れたのは、まだ湊が小学生の頃で…………。
「ぷ………そんな顔すんなよ。邪魔する気ねぇから」
強がってると直ぐわかった。
昔から、心が頑張っている時に限ってよく笑う。
周りに心配かけまいと、無理して笑うのだ。
兄が言うのもなんだが、綺麗な顔をした弟の笑顔は、そうして皆を幸せにして来た。
変わってない。
健気で優しい湊の踏ん張り。
「アホか…………お前こそ、無理して笑うな」
ただ、さすがに今回ばかりは、嵩原自身も動揺が走った。
口には出さないが、その眼差しから伝わる秘めた気持ち。
大事にしてやりたい。
久々に会ってから、そう思って来た想いが足元から揺らぎそう。
ここで手を差し伸べてしまえば、全てが変わる。
『兄弟』なんて垣根など、あっという間に消えてしまう。
どうすればいい。
どうしてやったらいい。
大和が、すぐそこで待っている。
「兄貴…………大丈夫だって」
「え……………」
「俺は、弟…………それだけ」
「湊……………」
リビングのソファに置いた鞄を持ち上げ、帰り支度を始める湊が嵩原の視線を奪う。
「何か、美味いものでも作ろうかと色々買って来たけど、ごめん……今日は帰るわ。大和の所、行ってやって」
憎たらしい一言でも漏らすなら、もっと突き放せただろうが、幸い湊はそう言った程度の低い弟ではない。
胸が締め付けられる。
可愛い弟。
苦労させた分、これからの未来にどれだけ楽しみを抱いたか。
「湊…………待てっ!」
つい、手が伸びてしまった。
父親のせいで働きっぱなしだった母親。
いつも二人しかいない家で、次第に悪い仲間達とツルみだした自分は、湊をよく一人だけにして遊び回ってた。
また、一人にするつもりか?
嵩原は咄嗟に湊の腕を掴み、自分の方へと引き寄せた。
「兄………っ…」
ガタンッ……………!
よく有りがちな事。
「………………!?」
キィと音を立てて開いていく扉の影から、大和のしゃがんだ姿が目に入る。
「や……………」
「ご、ごめ…………聞く気はなかったんやけど、上着をリビングに置いとこう思うたら………」
手にした上着からスマホが落ちたのか、大和は微かに震えながら廊下に転がるソレを拾いに行っていた。
聞かれた…………?
一瞬怯んだ嵩原の前で、大和はこちらを見ようとはしない。
ただ、強張る横顔がその戸惑いを露にさせている。
大和……………。
嵩原がそれを口にしようとした時、先に動いたのは湊だった。
「大和、何も気にする事はないからな。兄貴の側にいてやって」
「湊……………」
サッと嵩原の手を振り払い、大和へ近付いた湊は微笑みながら頭を撫でる。
柔らかな大和の髪に絡む、湊の長い指先。
あくまでも笑顔を貫く湊に、嵩原の表情は険しさを増した。
選べる訳がない。
どちらも大切で、どちらも愛しい。
「兄貴……俺が言うまでもないけど、大和を頼むよ」
「何を……………」
どちらも……………。
ゆっくりリビングを出て行く背中が、再び遠くに感じる。
何故、もっと早く気付いてやれなかったんだ。
大和に出会ってしまった今、自分の心はもう………。
「嵩原…………湊、追ってや…………」
「………………あ?」
だが、このお人好しは、相変わらず他人を気遣う。
何も出来ず弟を見送る兄に、後を追えと?
「湊の笑顔、泣きそうやった………あんな湊、初めてや………湊を追ってやって……っ」
「大和……………」
つくづく人と言うものは、厄介だ。
自分だって泣きそうなくせに、まだ他人を気遣うのか。
「……………わかっとんか?今、湊を追ったら……」
しかし、その一歩はとてつもなく重い。
追いかけたら最後。
開けてはいけないものを、開けてしまうかもしれない。
「……………わかっとる、わかっとよ………嵩原」
服を握り締めてくる手が、小さく震えてる。
馬鹿野郎。
俺の前で頑張るな…………。
互いを想い合う気持ちが、こんなにも辛いなんて。
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