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男娼とヤクザ/シリーズ4(第21話)
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嵩原と同じ組。
聳え立つような強面の男に、大和は呆然と前を見た。
「嵩………原………と」
今更、そんなヤクザに会って何になる。
もう関わる事はない。
自分が突き放した時点で、嵩原とは終わってしまったのだと、にわかに俯く大和の気持ち。
「お前は知らんやろうけど、たまに話は聞いとったんや…………あまり無駄口叩く奴やねぇが、お前の事は珍しゅう話とったしな。ま、この界隈じゃ有名な色男落としたガキや、俺もどないな面しとんかて、気になって見に行った時もあったわ」
「え……………」
でも、そんな事を知らない上地は、平然と嵩原の事を語り始める。
普段無口な男が、ポロッと口にした愛する者への愛情。
考えただけで、胸がキュンした。
嵩原のあの格好いい姿が、みるみる視界を覆ってく。
「お前みたいなひょろい奴の何処がええんか………お陰で、夜の女共は泣いてたで。お前に惚れてから、嵩原が街で呑む事がのうなってしもうたさかい」
「嵩原が…………?」
「そんだけ、あいつの中で腹括ったんやろう。苦労したお前を、どないしたら幸せにしてやれるかってな」
「………………っ」
もっと、じっくり話をして別れれば良かった。
立ち去った湊を心配し、事を急いでしまった自分へ後悔が募る。
堪えていた想いが、根底から揺れ動いた。
見えない所でも、ちゃんと嵩原は自分を大切にしてくれていたのに。
それを、自分はなんて冷たく押し退けたのか。
手を突っぱねた時の嵩原の顔が、脳裏へ甦る。
「今回も、親父からえらい面倒押し付けられとったけど、早よう終わらせてお前の顔見るんや言うて、気張っとったで…………もう嵩原には会うたか?しっかり癒したれよ。今のあいつは、お前を生き甲斐に毎日を過ごしとるようなもん………や………」
嵩原……………。
大和は自責の念と嵩原への想いで、全身が崩れ落ちそうだった。
せめて、謝りたい。
せめて……………。
「オイ…………お前、何で泣いとんな」
ギョッと固まる上地の目の前。
気が付いたら、大和はボロボロ涙を流してた。
「だ……だっ………てぇ……た、嵩原がぁ……」
「……………はあ?」
上地にしてみたら、全く意味不明である。
一体、何があったのか。
通行人達が遠巻きに眺める中、まるで絡まれたとしか見えないヤクザと娼夫。
「嵩原ぁ…………嵩原ぁ…あ……」
「いや、会いに行ったらええやろ…………ここで泣くな。どう見ても俺が悪モンやねぇ……」
「上地…………っ!!」
そして、悪者は捕まる。
「は……………」
「大和に何したんやっ!泣いとるやないかっ」
「高橋…………っ!?」
丁度、買い出しから帰って来た高橋と鉢合わせ。
振り返る上地の先で、顔を引きつらせる美人。
周りがざわついているのを見付け、覗いてみたら可愛い大和が泣かされていた(既に上地が泣かした事になっている)。
「アホ言え………これは、俺やねえ」
「ヤクザの幹部が言い訳すな、みっともない」
「みっ…………」
見事なとばっちり。
涙を流す大和へ駆け寄る高橋に、上地はグッと言葉を飲み込む。
惚れた弱味。
これが他の人間なら、上地も直ぐに手でも挙げただろう。
が、相手は愛して止まない高橋。
「た、高橋さ…………」
「大丈夫か?大和…………もう心配要らんからな」
「チッ……………」
渋々黙り込んだ。
ただ、根には持つ。
「あのボケ……………覚えとれよ、嵩原」
綺麗な高橋の綺麗な笑顔を見つめ、上地は溜め息を漏らした。
何があったかは、知らない。
しかし、まだ子供である大和の涙は、鬼の目にも痛々しかった。
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