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初詣(前編)
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(明けましておめでとうございます。今年一発目の恋愛男子は、こちらの+にさせて頂きました。皆様、体調などは大丈夫ですか?賑やかなお正月の後、こちらを読んで下さいました皆様、ありがとうございます。今年も宜しくお願い致します/そして、今回の前後編…長いです(汗)すみません)
「若…………伊達巻、あと二切れになりました。お食べになりますか?」
「ぉおっ!食べるっ、食べる♪高橋の伊達巻、めっちゃ美味いもんっ♪」
「クス…………ありがとうございます。今年は、若の為にいつもより多めに作って良かったです」
「いや、待て。おかしいやろ…………俺、伊達巻一切れしか食ってへんぞ」
「え?そうなんですか…………申し訳ありません、親父。伊達巻、今売れてしまいました」
「一切れ位くれてもええやん!大和、どんだけ食うねんっ!」
嵩原家の正月は、騒がしい。
元旦。
毎年、高橋お手製のおせちが食卓へ並び、組員達が挨拶に来るまでの間、大概大和と嵩原でその中身の取り合いになる。
「大人げないですよ。若へお譲り下さい」
「悪いなー親父♪あーっ、んまぃ♡」
「高橋は、大和に甘過ぎるわ!俺かて高橋の伊達巻好きやぞっ」
そして、必ず嵩原が負ける(必然的の1VS2で)。
「はいはい。では、親父には奮発した蒲鉾で」
「手作りちゃうし………っ」
日本酒の入ったお猪口片手に、軽くあしらわれる組の長。
嵩原家の嫁の前に、全くそれの威厳はない。
ぷぅと膨れっ面をしても、高橋は大和の食べたいものをせっせと取り皿へ移す。
「親父、ふてとる」
「子供ですか…………」
「うるせー。どーせ、俺はガキじゃ」
一家団欒とは、こんな光景を言うのだろう。
年齢より若く見える顔をプイッと逸らし、チビチビお猪口へ唇を当てる父親を、大和は嬉しそうにニマニマ眺めてる。
相変わらず、綺麗な容姿の我が父だこと。
今日なんか、前髪を下ろしているから尚更若く見えるし、然り気無く羽織ったパーカーから覗く首筋がまたエロくて最高。
昔も今も、自慢の親父。
「親父、この蒲鉾ホンマに美味しいんですよ………一口食べてみて下さい。新しいお酒もご用意致しますから」
「……………しゃーねぇなぁー!蒲鉾で我慢したるか」
「はい…………!」
しかも、この馴れ合ったツーショット。
親父の機嫌を取る高橋と、それにちゃんと乗っかる嵩原。
大好きなコンビを愛でられて、大和にとっては至福の瞬間である。
「うん、美味い♡」
大和は高橋の作ってくれた伊達巻を頬張りながら、二人の大人の色気に格別のおせちを味わう。
ガチャ……………
「あ?なんや、正月早々イチャイチャか」
それから、次々と来客が姿を見せ始めた。
「京之介ぇ…………!」
「明けましておめでとう。大和、今年も宜しくな」
「明けましておめでとう!!京之介、今年も宜しくお願いしますーっ!」
まず訪れたのが、嵩原家二人目の父・安道。
激レアな日本酒をぶら下げ、いつものごとくセキュリティー度外視して自由に出入り。
嵩原と高橋の仲睦まじい様子を横目に、先ずは可愛い大和のおでこへ優しくチュウ。
「ほら、お年玉。大事に使えよ?」
早速、餌で息子を釣る。
「ぉおー!!ありがとうっ、京之介ぇーっ!大事に使う使うっ!」
「プ…………調子ええなァ」
どの家でも有りがちな光景も、生まれた時から親戚もいない大和には、お年玉なんて無縁の楽しみだった。
お金が少し余裕になって、寝起きで父親が毎年くれるようになり、それを見て安道が用意をし始めてから、ようやく子供らしい正月を体験している気がした。
でも、大和は知っている。
何故、お年玉を用意出来る余裕がありながら、安道がずっと渡さなかったか。
それは、お金のない父親を立ててくれていたから。
愛しい我が子へ、人並みの正月気分も経験させてやれなかった嵩原の悔しさを、安道はわかってた。
渡す喜びも渡される喜びも、初めてを嵩原にさせてやりたい。
安道の無限大な愛情が、そこには隠れてる。
「おい、京。幾ら包んだんな…………大和はまだ17やぞ。金額抑えとんやろな?」
「当たり前や。支部長祝いは規模も規模やから奮発したったけど、そんくらい弁えとるわ」
ただ、歳月を重ねると互いに余裕も出てくる。
今や、そんな二人も動かせる金の量は、破格。
渡されたお年玉袋片手にウキウキな大和の脇で、チロリと友を睨む嵩原は、その中身を尽かさずチェックする。
「ホンマか?お前の鞭と飴は、極端やからの」
「確かに…………」
容赦ない叱咤と、時にはグッとくる程の懐を魅せてくれる安道。
特に、嵩原や大和に対してのそれは、収まる事を知らない。
散々その姿を目の当たりにして来た高橋も、嵩原の言葉に心の底から頷いた。
支部長祝いの奮発振りも、想像を遥かに越えてたっけ。
ピーンポーン………ピーンポー……
「おめでとうございます。錦戸と桜井です」
そうこうしているうちに、次の来客現わる。
インターホン越しに聞こえ来たのは、凛とした錦戸の声。
朝早く、桜井へ手作りのお雑煮を食べさせた錦戸は、嵩原と大和への手土産を持ち、可愛いその弟分と共に新年の挨拶にと訪れた。
「今朝のお雑煮、旨かったなぁ………錦戸さん、帰ったらまた食べてもいいです?」
「そないにか?そら、幾らでも作ったるけど………食べ過ぎひんようにな」
「よっし!今度は、餅何個いこうかな♪」
「おいおい、ホンマ大丈夫か…………」
マンションを上がるエレベーターで、桜井の話に目を細める錦戸。
劉組織との一戦以来、二人の距離はまた一段と縮まったようだ。
「錦戸、湊…………おめでとう。よう来たな」
「明けましておめでとうございます。親父、若」
「嵩原組長、若頭、おめでとうございます」
ビシッとスーツを着込んだ二人は、先ずは食卓に座る嵩原と大和に頭を下げる。
いつもは『大和』呼ばわりの桜井も、この時は一組員。
さすがにそこは、立場を弁えているのだが…………。
「ブッ!!………湊から『若頭』て、何やこそばぃ」
「ちょっと、大和。それはねぇだろっ」
「ごめんごめん!いや、嬉しい嬉しい!今年も宜しく、湊♡」
「全く気持ち感じねーわっ」
大和に一刀両断されてしまう。
「仲ええの…………一気に賑やかになったわ。桜井、すっかり打ち解けとるやねぇか」
「まぁ、親父が二人おるようなもんですからね………人懐っこさはピカ一です」
「人懐っこさだけで終わるか?………言う話ですが」
若い二人のやり取りに苦笑いする安道の側で、妙な納得感を味わう高橋と錦戸の両右腕。
よりにもよって、親父似。
これからも(色んな意味で)、桜井からは目が離せまい。
「オイ………空気の流れが、おかしゅうねぇか。京はともかく、お前らの反応何やねん………俺に似とったら、何か問題あるみてぇやんか!」
あるんです。
溜め息をつく高橋達の前で、叫ぶ親父の威厳は何処へ向かうのか。
今日くらいは、平和で良かろう。
今年も有能な右腕達に支えられ、嵩原率いる竜童会は幕を開けたのだ。
「親父ぃ!!明けましておめでとうございます!」
「おめでとうございます」
「若頭、明けましておめでとうございます」
そうして、いつもの顔ぶれが、明るい笑顔で揃い踏み。
これからの組を担う若手の集合。
元気な花崎の声が室内に響き渡り、後から顔を出す伊勢谷の微笑みに癒されたかと思うと、最後は組で挨拶を終えたばかりの山代が上品に礼をする。
明日には嵩原達は本部で、大和達は支部で幹部総出の新年の挨拶が執り行われるが、皆ここへ集まって来た。
やっぱり、新年はこうでなくては始まらない。
大切な仲間達の顔を見て、新たな一年への抱負を掲げる。
「よし、揃うたな…………丁度ええ、たまには初詣でも行ったるか」
「初詣?わ、行く行く!皆、行こうで♪」
パンッと、嵩原が膝を叩く音が合図のように。
揃った顔ぶれへかかった一声が、また男衆を動かす。
この面子で、初詣。
喜ぶ大和の頭をゆっくりと撫で、微笑む親父の表情に誰もが自然と笑顔を浮かべた。
晴れ渡る空の下。
着替えに入った親父と若頭を待つ、上質なコートを纏う男達の様は、なんともよく目立つ。
黒を基調とした統一感ある景色。
そこへ嵩原や大和が現れ、ザッと一斉に頭を下げる様子なんて見たら、通行人達もついつい目が奪われる。
「親父、では参りましょう。ここから一番近い場所を調べとります」
「そうか、ほなそこ行こうか」
歩み寄る錦戸に笑みを溢し、嵩原以下竜童ご一行様の出来上がりとなる。
「高橋ィ…………お賽銭、幾らがええかな?」
「そうですね…………諸説、様々な意味合いを含めて皆入れてますからね」
その後ろでは、高橋に子供らしい相談をする大和。
「可愛いなぁ、大和………」
「は?それ、どう言う意味や」
「あ……………」
「……………あ?」
またそれに被さる、桜井と聞き逃さない安道が続き、最後尾に山代達が世間話に華を咲かせる。
「俺、初詣って初めてかも…………」
「そうなんか?花崎…………なら、しっかり楽しまんとな」
「俺も久し振りだ。いいね、こう言うのも」
「ですよね!山代さん。ね、伊勢谷さん、楽しみましょう!」
「ああ、楽しもう」
さあ、どうなりますか。
初詣が始まる。
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