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竜也と大和
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この物語の、最早王道です。
竜也の、大和への愛情は、果てしない。
我が子としても、愛する一人の人間としても、誰も敵わない愛を、燃やしてる。
「……………………今日…………………命日やな…………」
朝日が辺りを明るくする、リビングの窓辺。
嵩原は煙草を加えながら、リビングからバルコニーへ続く窓を開け、空を見上げていた。
そう、命日。
嵩原が生涯で、最初で最後と決め結婚した女性。
大和の母、多香子の命日だ。
この日…………………いや、月命日には、必ず多香子の墓に花を添えてきた、嵩原。
関東に来てからは、それは向こうにいる幹部に頼んでいた。
「さすがに……………命日に帰らんのは、あいつ怒るかな……………………」
命日には、一日中亡き妻の事を考える。
自分と結婚しなければ、親に勘当される事も、早くに亡くす事もなかったかもしれない。
いつも、今日を迎えると、後悔が先を行く。
「…………………堪忍やで…………………」
目の前を立ち上る煙草の煙を見つめ、嵩原は悔いても悔いきれない過ちを詫びる。
……………………でも。
「……………………親父」
窓辺に座り込み、煙草を手にぼんやりしている嵩原の後ろから、大和がゆっくり歩み寄る。
「大和…………………」
見上げた先に映る、愛する我が子。
でも…………………二人が出会ったお陰で、この子が生まれたかと思うと、喜びが込み上げる。
「母さんの事、ずっと考えとん?」
大和は、座る嵩原の背中へ抱きつき、囁くように訊ねた。
ずっと。
大和も、ずっと見てきた。
母親が亡くなってから、毎年、父親は命日には予定を入れた事がない。
家にいて、ただひたすら煙草を吸っている。
「クス………………………なんや、妬いとんのか?」
嵩原は、自分にしがみつく大和の手を握り、笑顔で顔を近付ける。
「妬いてる言うたら………………俺を見てくれる?」
「せやな…………………今日だけは、悩むな」
ここで、見てやるって言われても、複雑だったかもしれない。
ちゃんと悩む父親が、また好きだったり………………。
「明日から………………またお前だけを見るさかい、今日だけは許してや……………」
そう囁き、嵩原は大和の頬へキスをした。
「親父……………………」
「こんな日に、ガキに手ぇ出したら、母さんにどやされるわ……………ま、もう呆れ果てとるやろうけど」
父親の唇が触れた頬を手で押さえ、顔を赤らめる大和に、嵩原は身体をよじり、腕を伸ばした。
「……………………大切な人がおらんようなるんは、ホンマ哀しい…………………いつまで経っても慣れへん。でもな………………母さんが遺してくれたお前がおったから、俺は生きてこれた」
抱きしめる我が子の愛しさ。
この温もりだけは、何があっても失いたくはない。
「大和……………………お前は、俺の生きる糧や。これからも、俺の側におってくれ……………………俺が、全力でお前を笑顔にしたるから」
溢れる愛は、今日も大和を包み込む。
毎日のように、天然振りを披露する、世話の焼ける父親。
だけどそれは、もしかしたら、計算かもしれない?
ただでさえ、厳しい世界。
嵩原なりの、空気を和らげる作戦……………とか?
我が子の負担を減らせるなら、父親はどんな三枚目にだってなれるのです。
そんな考えが過った、ある朝の出来事。
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