アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
定例会・白洲会編
-
それは、勿論、上地のご機嫌伺いから始まる。
「親父……………っ!お疲れ様ですっ!!」
始まりは大概、どこも似たり寄ったり。
高級な店々が並ぶ街角の、一際目立つ高級寿司店のビル、二階。
本日は、こちらで白洲会の関東定例会が開かれる。
丁度今、上地とそれに次ぐ側近幹部達も関東に滞在している事も踏まえ、片山の関東勢と合同開催。
「…………………ああ………………」
組員達の緊張した大きな声に迎えられ、煙草を加えた上地が部屋に入ってくる。
ああ……………………て。
相変わらず、上地の口数の少ない挨拶。
ゴク………………………
唾を飲み込む音さえも聞こえてきそうな、静けさ。
「おい………………今日の親父は、機嫌悪いんか?」
「わからん………………いつも表情が同じやし」
上地よりも遠い席の組員達は、声を殺してヒソヒソ話。
なんだか、以前も聞いたような会話が、会場の隅を飛び交う。
かくして、30分後。
「宇佐見ぃっ…………宇佐見ぃっ」
ある程度酒も入り、皆若干なり気持ちにゆとりも出始める。
「は、はい………!何でしょう?」
片山に付いているお陰で、実力は上がっているが、まだまだ若い宇佐見は、先輩衆へのお酌で大忙し。
「お前、一番若いんやし、親父に酌してこんかァ」
「え…………………っ!!」
上地の連れて来た幹部に囃し立てられ、宇佐見、顔を青くする。
何故なら、上地と直接交える事は、今だない。
いつも、片山が壁になって、事を済ませてくれていた。
「宇佐見…………………っ」
ビール瓶片手に立ち止まる宇佐見を見つめ、片割れ真木も不安顔。
何せ、宇佐見………………ド緊張男。
真木が側にいないと、何しでかすかわかりません。
「宇佐見………………無理すな。酌なら、俺がしてくるよって、お前らは先輩衆にしとき」
そんな宇佐見の、女神……………もとい、神様ご登場。
「片山さん……………っ!(目がハート)」
はい、大好きな片山です。
然り気無く宇佐見の傍らへ行き、優しく声をかける。
「お前は緊張しいやから、俺がおる時に、後から少しだけしに来い。……………………ええな?」
背中を軽く叩き、綺麗な笑顔で囁く片山に、宇佐見はとろけそう。
そんな事言われたら、片山LOVEな下っぱは、頑張ろうって思っちゃいます!
「だ、だ、大丈夫です………………片山さん!片山さんのお気を使わせんでも、や…………やれます!」
いや、もう既に、喋りから危うい。
「…………………せやけど、宇佐見。ビール瓶の揺れ、半端ないで……………」
片山の目の前に差し出す、宇佐見の持つビール瓶の震えよう。
明らかに、黄色点滅してます。
「だ、大丈夫ですって!宇佐見、行ってきます!」
まるで、『ア○ロ、行きまーす!』…………………バリに、宇佐見は立ち上がった。
「ちょっ…………………宇佐…………」
お前が大丈夫でも、周りがそう見えない。
片山が引き止める前に、宇佐見は上地へ向けて、まっしぐら。
「お、お…………………親父っ!」
お座敷の宴会場に響き渡る、宇佐見の上地を呼ぶ声に、誰もが視線をそちらへ向けた。
それがまた、宇佐見の緊張感を一気にてっぺんまで持ち上げる。
「あ?…………………なんや、宇佐見か」
「はいぃ、宇佐見です!あ、あの……………お酌をさせていただきたく………おね、お願いします!!」
最早、日本語も合っているかすら、わからない。
宇佐見は力強く宣言をし、上地の前へ大きく踏み出した瞬間だった。
ズリッ…………………………
妙な力が片足に入り、まだ新しい艶やかな畳の上で、見事に足を掬われる。
「……っわあ……………っ!?」
「宇佐見…………………っ!!」
片山が手を出した時には、一歩遅かった。
宇佐見はビール瓶を持ったまま、上地の真ん前に顔から畳へダイブ。
しかも、滑った勢いで、ビールが瓶の口から思い切り飛び出した。
「あ……………………っ!!!」
皆が、悲鳴とも取れる声を上げたかと思うと、ビールが上地目掛けて飛んでいく。
バシャッ……………………!!
ギャーッッッ!!!
上地のウン十万はする高級スーツが、かかったビールで無惨にもびしょ濡れに。
「は……………………っひぃ!!」
擦れた鼻を押さえ、顔を上げた宇佐見に至っては、目の前の光景に、命の終わりを見た。
チーン……………………………
組員達は、心の中で静かに手を合わせ、合掌。
さらば、宇佐見。
こうして、白洲会の定例会は終わりを遂げる。
……………………あ、ちゃんと宇佐見は、片山によって、フォローされました♪
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
13 / 241