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大和と高橋
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切っても切れない、そんな仲。
僅か、17歳で竜童会若頭。
聞こえはいいが、大和には、敵が多い。
全国一の馬鹿デカい組織の中で、カリスマ嵩原竜也の息子であり、嵩原の有能な右腕高橋を抱える。
てめぇの力やない。
誰だって、上を目指したくてがむしゃらに生きている世界で、人に恵まれた様に見える大和は、やっかみの対象。
距離を置く連中からは、よくそう言われていた。
これは、関西にいた頃の、大和の日常。
「なんじゃ、ボケぇ!!もいっぺん言うてみぃ!」
関西竜童会組長、嵩原竜也の構える大邸宅。
住宅街でも、一際目を惹くこの大きな屋敷に、今日も朝から大和の怒鳴り声が、響き渡る。
「わーっ!若ぁっ!!何しとんですかっ!!今日は、親父もおるんですっ……………あまり騒ぎ起こしたらあきません!!」
「っせぇ!くそがっ……………離せ、アホ!」
長く、天井の高い廊下のど真ん中。
大和は、自分の抱える組員らに腕を掴まれ、今にも暴れ出さんともがいてる。
「は、これやからガキは使えんねん。何が、若頭や。ワシらは、まだ認めてへんぞ」
そう言って、暴れる大和を蔑むのは、竜童会の幹部数人。
自分達は、嵩原竜也を慕って集まって来た。
こんな、クソガキの下につく為じゃない。
大和が、若頭になった事が気に食わない連中は、いつもこうやって喧嘩腰。
しょっ中、争いが絶えなかった。
「何やっとんや…………っ!!」
廊下に轟く、一喝。
「た………………高橋……………っ」
組員達に止められている大和は、叫んだ相手を見てたじろいた。
誰もが注目する先に佇む、右腕、高橋。
高橋らしく、冷静な表情をしてはいるが、その目は明らかに怒っている。
ヤバい……………………怒られる……………。
下手したら、父嵩原より恐い高橋に、大和の顔は強ばった。
「若…………………親父の足下で騒ぎ起こして、それでも若頭ですか?竜童会の若頭が、品位に欠ける様な行為はお控え下さい」
「いや………………せやけど、コイツらがやな………」
「今言うたん、聞こえませんでした?」
自分の注意に、口答えをしようとした大和へ、高橋の重い言葉が被さる。
表情一つ変えず、自分を見てくる高橋に、大和以下、腕を掴んでいた組員達も息を飲む。
「……………………いえ、聞こえました……………」
何故か、全員で顔を伏せた。
「はんっ………………高橋の方が上やないかァ」
「若頭が、側近に頭上がらへんのか……お笑いやの」
その光景に、対峙していた幹部達は、大和を鼻で笑う。
無理もない。
幹部達にも、プライドはある。
そう易々と認めては、自分達の立場もない。
しかし、そんな幹部達の前に、高橋はいつも立ちはだかった。
「西澤さん……………若を頭に据えたんは、親父です。それが気に入らへんのやったら、親父に意見なさいますか?」
「なに………………っ」
「……………………大体、ウチの大事な頭に、ナメた口叩く暇があったら、てめぇらの成果、さっさと目の前に持って来たらどないですか?口だけなら、小学生でも吐けますわ」
男なら、口にした事は、やり遂げろ。
親父、嵩原の教え。
それを、完璧にこなせられるのは、組の中でも高橋だけ。
「高橋……………っ…………貴様………」
そんな高橋に言われたら、幹部達でさえ口ごもる。
「そないなデカい面出来んのも、今のうちや!」
苦々しく大和を睨み付け、捨て台詞と共に、長い廊下を去っていく。
「高橋………………あのな……………」
「若……………親父がお呼びです」
「…………………え………………」
「大きな声してはったから、親父の耳に入りました。今の、騒ぎが」
「……………………マジ」
笑顔で話す高橋を見つめ、大和の顔は青ざめる。
「どアホか、お前は」
やっぱり、この人が一番恐い、親父様。
ソファに座り、煙草を加えた父親が、立たせた大和を見上げ、お説教。
「…………………すみません…………………」
「すみませんちゃうわ。お前、若頭や自覚あんのか?幹部の挑発なんぞに乗りよって、あっさい若頭しとんやないぞ。…………………お前なんか、いつでも下ろせるんや…………………よう考えて行動せえ。アホんだらァ」
アホ、2回。
父親、かなりご立腹。
「……………………はい。ホンマに、申し訳ありませんでした!」
大和は深々と頭を下げ、だだっ広いリビングを後にする。
バタン………………………
「………………………はぁ……………」
リビングのドアを閉め、出るのは溜め息のみ。
父親は、ガキでも容赦ない。
わかっていたけど、堪えます。
「……………………若、ご苦労様です」
「高橋………………………」
嵩原に叱られていた大和を、高橋は廊下でずっと待っていた。
「申し訳ございませんでした。次からは、私が必ずついときますよって、若のお手間は取らせません」
「………………………すまん」
まず、自分を責める。
右腕高橋は、大和の補佐に徹してる。
だからこそ、大和も頑張らなきゃって、心から思える。
「今夜………………ご夕食、何になさいますか?若のお好きなもの、何でもお作りします」
「え…………………じゃ、オムライス」
「……………………はい、かしこまりました」
照れる大和と、それを見つめる高橋の笑顔。
目指すは、てっぺん。
大和に惚れ込み、嵩原の元から離れた高橋と、父親の背中を追う為、15でヤクザを目指した大和。
味方のなかった大和にとって、高橋は最大の味方。
てっぺん。
それが、二人を結ぶ絆。
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