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片山と嵩原
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お父ちゃん、挽回に出る。
片山と、嵩原。
片山にとって、嵩原は昔から憧れの人である。
亡き親友と二人、嵩原の下につきたいと、夢を抱いていた頃がある。
強くて、格好良い。
永遠の、ヒーローのよう。
そんな片山が、今日は嵩原に呼ばれた。
「お前……………………大和、いじめたやろ」
……………………………は?
本当に、『は?』。
居酒屋の個室に呼び出され、片山は嵩原の開口一番に面食らう。
「いじめた………………………ですか?」
何だろう、これ。
幼稚園ママの、『ウチの子いじめたでしょ!?』的なイビりですか?
片山は嵩原の前に正座をし、軽く首を捻る。
「いや………………………」
いじめたって、そもそも…………………何。
真顔でムッとしている嵩原を見つめ、片山もさすがに返事に困った。
「片山ぁ…………………っ!!」
バンッ…………………………!!
「は、はい…………………っ」
酒を並べたテーブルを叩き、声を上げる嵩原に、片山は身体をビクッとさせ、返事をする。
「もう………………っ、大変やったねんぞ!この前、お前とのランチから帰って来てからっ」
「………………………え?」
「機嫌悪うて、機嫌悪うて……………俺が変な真似するからやって、めっちゃ怒られてんっ」
ああ………………………。
両手で顔を覆い、いきなり嘆く嵩原の姿に、片山、ようやく話が読める。
俺が、嵩原組長との事追求したやつか…………………。
結局、アレが何だったのか、大和は言う事はなかったが、だいぶその事で弄り倒したのは事実。
どうやら大和は、ソレで嵩原へ八つ当たりしたらしい。
いや、元をただせば、貴方が原因ですけど……………?
お父ちゃん。
「家でも、俺にだけは冷たいねん……………っ。高橋や錦戸には、気色悪い位親切やのに、俺にだけは冷たいんやぞ!?………………………俺もう、生きた心地せえへんっ」
「は…………………はぁ………………」
なんや………………可愛いな、嵩原組長……………。
見るからに、男前。
男でも好きな、惚れ惚れする顔を赤く染め、半泣きのような表情を、躊躇う事なく目の前にさらす。
歳上に対して申し訳ないが、可愛くて、つい笑ってしまう。
「ウチの親父が、放っておけへんのもわかるな……」
ずっと、格好良いと思っていた人の、知れば知る程な一面に、片山は自然と笑みを溢す。
「いや、片山っ………………笑い事やないし…………」
お父ちゃんにとっては、死活問題なのだから。
「す………………すみません………………どうしても、引っ掛かってたものですから…………………つい」
ヤバい………………可愛い過ぎて、笑いが止まらない。
片山は然り気無く手を口に当て、俯きながら必死に笑いを堪える。
「ついって………………!」
普通、格好良い所ばかり見ていると、可愛いなんて幻滅しそうになってもおかしくない。
でも、どうしてだろう?
この人は、それがまた魅力に感じる。
不思議な人だ。
「……………………ほな、教えて下さい」
「教える?」
「何で、キスしようとしたんですか?」
「え………………………」
嵩原は、片山の質問に、少しだけ目を逸らす。
何でって……………………。
「………………………実はな………………片山」
「………………………はい」
「俺………………………キス魔やねん」
「………………………はい?」
お父ちゃん、苦し紛れの、言い訳。
キス魔。
片山は眉をひそめて、記憶を辿る。
自分も何度か一緒に呑んだが、そんな素振りは一度も……………………。
「何や、片山………………信じてへんのか?」
そう言うと、嵩原は立ち上がり、テーブルに足を乗せた。
ダン………………………
「ちょ……………………嵩原組長!?」
驚く片山を尻目に、嵩原は勢いよくテーブルを乗り越えると、片山を個室の壁に押し付け、壁ドン。
「俺がキス魔かどうか、確かめるか?」
「と言うか、呑んでへんでしょ!?おかしゅうないですか………………っ」
おかしいです。
だって、このままズルズル疑われたままだと、また大和に叱られる。
お父ちゃん、博打に出ました。
「うっさい、キス魔や言うてるやろ。大人しゅうキスされろや」
間近に迫る、嵩原のイケてるお顔。
クールビューティーな片山も、たまらず顔を赤くする。
「やっ……………無理です!もう、わかりましたからっ…………………それに、今日嵩原呼んどんですっ!多分そろそろ着く頃やと…………………」
「……………………へ………………」
大和を……………………?
「ああ、あった………………この部屋か………………親父、片山ぁ~、入るで…………………」
………………………おや?
ガラッ………………………
「や…………………大和ぉっ!!」
ビビる嵩原の視界に、立ち止まる大和の引きつる眼差し。
だって今、お父ちゃん、片山に壁ドン中。
「へぇ…………………楽しそうやな………………親父」
これからまたしばらく、お父ちゃんは大和に当たられる。
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