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錦戸の苦労
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ええ、それはもう、ただ大変。
「親父っ!!また勝手に出歩かれて…………っ」
繁華街のど真ん中。
飲み屋がひしめく通りの一角で、錦戸は今日も怒れる…………………。
「…………………錦戸、顔恐い………………」
いい具合にくたびれた居酒屋のカウンター。
嵩原は、見知らぬおっちゃん達と酒を酌み交わし、迎えに来た錦戸を見上げる。
しかも、相変わらず護衛ナシ。
マンションに出向いたら、既に嵩原はおらず、慌てて探し回った。
嵩原専用GPSを使って。
「顔恐いってね……………っ……親…………」
「何だ?兄ちゃん、どっかのお偉いさん?迎えが来るなんて凄いねーっ」
いや、組長。
「本当だよー!まだ若いのに、こんな部下までいてぇ~。羨ましいよぉ~♪」
「どうりで、高そうな身なりしてる筈だよねぇ」
「いやいや、大した事ないで?おっちゃんらに比べたら、ぺーぺーやしぃ」
だから、組長なんです、このお方。
苛つく錦戸の目の前で、一緒に呑んでたおっちゃん達は、ベタベタと嵩原の男らしい身体に触ってく。
プライベートで出て来た嵩原は、濃紺のシャツの袖を軽く捲り上げ、ジーンズにインしたシンプルなスタイル。
元々派手な格好は好まないが、然り気無く上下はド○ガバ。
腕時計は、ブライト○ング限定モデル。
ブレスレットは、大和の好きなクロ○ハーツ。
『そう』……………じゃなくて、高いんです。
「チッ………………気安く触んな………………」
オヤジ達の手を嫌がらない嵩原の横で、錦戸は気付かれないように舌打ちをし、益々苛立つ。
怒るばかりしていても、やっぱり心は、『親父命』なのです。
不器用なりに、嫉妬します。
そんな錦戸の顔を見て、嵩原は微かに苦笑い。
「あぁ…………………何や、今日は腹もええなぁ……………おっちゃん、俺もう帰るわ」
「えー、もう帰るんかあ~。兄ちゃん、面白かったのにィ」
「悪いなー、また会うたら呑もうや!…………………ほれ、行くで?錦戸」
別れを惜しむおっちゃん達に笑顔を向けると、嵩原は錦戸の腕を優しく引っ張った。
「え………………親父………………っ…」
錦戸は、嵩原に掴まれた腕を見つめ、僅かに頬を赤くする。
ちょっと、ドキドキしたりして。
「呑み直そうか…………………二人で」
「はい……………………?」
そう言うと、嵩原はレジでおっちゃん達の呑み代も含めて、多めにお支払い。
「日頃のお詫び……………………好きなん食わしたる」
自分へ笑みを浮かべ、店を出る嵩原に、錦戸の胸はより高鳴りを覚える。
………………………卑怯やわ。
散々手を焼かしといて、ちゃっかりいいとこ拐ってく。
「そっ………………そんなんで、誤魔化されませんっ」
「クス…………………ええよ?誤魔化されんで」
「な………………もっ!親父………………」
プリプリ言いながら、顔は熱さで火照ってる。
「可愛いな、錦戸」
「はぁぁ!?な、何言うてんですかっ!ふざけんで下さいっ!!」
身体中に、嫌な汗をかく。
結局、惚れたが負け。
どちらが転がされているか、わからない。
大変だけど、付いて行きたくなってしまう。
悔しいぃ………………………!
嵩原の背中を追いながら、錦戸は心で叫ぶ。
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