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LOVEの始まり(前編)
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(リク、お応え。皆様、いつもありがとうございます。今回は、また少し過去編に入りますが、お父ちゃんの恋の始まりに迫ります。そんなリクをいただきました。どうか、宜しければお付き合い下さいませ)
抱きしめたい。
キスがしたい。
セックス、したい。
最低な親の、最低な願望。
「あ?何や、大和の奴……………また喧嘩したんか?」
救急箱片手に、2階から下りてくる高橋を見つけ、帰宅したばかりの嵩原は、呆れたように溜め息をつく。
当時、嵩原32歳、大和13歳。
大和は、この年中学に入学したばかりだった。
「お帰りなさいませ、組長。藤原達の話は、上手く片付きましたか?」
高橋は、嵩原の質問をはぐらかすように笑みを見せ、救急箱を側にいた組員に手渡した。
既に、住まいは関西でも有数の大豪邸。
常に邸宅には、組員が最低でも4、50人は出入りしていた。
「誤魔化すな…………………ホンマ、お前は大和には甘いな。部屋におるんやな?悪ガキは………………」
嵩原は脱いだジャケットを高橋へ渡し、大きな階段を見上げる。
「悪ガキて…………………親父かて、中学の時から手ぇつけられへんかったって聞きましたけど?………………親父のお子です、大和さんは」
渋い表情の嵩原を見つめ、高橋はつかさず大和を庇う。
有能な右腕を、味方に付ける。
我が子ながら、どんな手を使ったのか…………………。
「アホか…………………俺は、意味のない喧嘩はせえへん………………ただの殴り合いなら、すればするほど自分を下げるだけや」
中学に入った途端、大和は毎日の様に喧嘩をして帰るようになった。
理由は、言わない。
勝ったか負けたかも、わからない。
そして、自分より、高橋に何でも話す。
所謂、反抗期。
「組長………………っ、あまり怒らんといて下さいね」
階段を上って行く嵩原の背中へ、高橋の心配そうな声が後を追う。
「っさいわ…………………黙っとれ」
ムカムカする。
自分より、高橋。
自分より、だ。
ずっと、ずっと、誰よりも愛してきて、自分より上がいる。
腹が立つに決まってる!
「……………………俺が、どんな想いでお前を………………」
嵩原は階段を上がった先に広がる、廊下の窓に目を向け、言いかけた言葉を飲み込む。
どんな想いって。
どんな……………………だ?
こんなに苛々して。
これじゃあ、まるで……………………。
「………………………まるで……………………」
嫉妬。
窓から見える青空が、目に痛い。
清々しい空とは裏腹な、自分の胸の内。
てめぇのガキに……………………嫉妬。
「あかん…………………最近忙しゅうて、疲れとんな。嫉妬言うてもアレや、ほら………………親の役割を、高橋に取られたってヤツやな。娘を嫁に出す…………みたいな?……………………ん?いや、それやったら婿さんに妬いとんやから、違うか………………え?」
ややこしくて、頭痛がする。
止めよう。
アッサリ、却下。
難しい事は、身体に悪い。
軽く頭を押さえ、嵩原は長い廊下を進み、大和の部屋をノックした。
シ……………………………ン。
イラッ。
「おい、コラ。おるんはわかっとんやぞ……………返事くらいせえ」
組長、恐いです。
13歳の息子を、明らかに脅してる。
ガチャ…………………………
お父ちゃんは、恐い。
コレ、大事。
お父ちゃんの威嚇に、ドアが素直に開く。
「……………………自分のガキ、脅すな」
10㎝程扉を開け、大和は膨れっ面で父親を睨む。
「アホ抜かせ。今のは、俺の10分の1の力や。脅しなんぞに入るか」
いえ、13歳の子供には、充分脅しでしょ。
「てか、ドア開けや。何や、この隙間はっ…………こんなんで、話出来るかァ!」
「嫌や………っ………今日は、親父と話しとうないっ」
ドアノブ掴んで、小競り合い。
もう、思春期って、面倒くさい。
「お前が話しとうのうても、俺は話したいんやっ」
話したい。
どの口が言っているんだろう?
自分で言っといて、お父ちゃん、こそばいぃ。
そう思いながら、嵩原は強引にドアを自分の方へと引っ張った。
「しつこい!話しとうないん………やって……ぇ!」
「うっせぇっ!んなゴタ、俺には通用せえへん!」
はい、通用しません。
お父ちゃんに楯突こうなんて、100年は早い。
ガチャガチャ……………………ッ!!
最強お父ちゃんに勝てる訳もなく、激しいノブの動く音と共に、大和も前へと引っ張られる。
「わっ……………ぅわあ………!?」
見事に身体は部屋からはみ出て、お父ちゃんの胸に吸い込まれるように、ダイブ。
バフッ………………………
「ほら、キャッチ……………………も、離さへんぞ」
あっという間に、その強い腕に抱きしめられた。
「………………………ただいま、大和♪会いたかったで」
「は………………ア、アホ………キモいんぢゃ…………っ…」
「へーへー、何とでも言え」
反抗期、バンザイ。
抵抗されればされる程、父、燃えます。
可愛い我が子を抱きしめて、お父ちゃんの顔は自然と綻ぶ。
「やべ……………………むっちゃ可愛ええ♪」
本当に、可愛い。
我が子とは、なんとも言いようのない宝だ。
何で、こんなに可愛い………………?
生意気な口一つ、食べちゃいたい。
「ちょ………………苦し…………ぃ……っ……離せ……」
「無理……………………離さへん言うたやろ」
自分の胸でジタバタする大和を、抱えるように抱きしめたまま、嵩原はその愛しい顔を見下ろした。
大和は、そんな父親の視線が恥ずかしくて、顔を真っ赤にしながら目を逸らす。
それがまた、キュンとしたり。
そして気付く、唇に付いた切り傷と微かなアザ。
「顔…………………殴られたんか?」
大和の唇に親指を添え、嵩原は切れた部分をなぞる。
チクリ。
誰が、殴った?
俺の大事な息子を。
相手がガキでも、今すぐぶん殴ってやりたい。
「ど、どうせ………………また言うんやろ?」
「はい……………………?」
「よう言うやん……………………喧嘩すんなら、顔の汚れん喧嘩せえって………………………」
つまり……………殴られる前に、相手に勝て。
強いお父ちゃんの喧嘩は、昔からソレ。
「…………………………ああ」
よく言ってるな。
嵩原は思い出したように、苦笑い。
「それ言われんのわかっとるから、見せとうないんや………………………この顔」
息子は息子で、それがプレッシャー。
殴られる度、父親に会いづらい。
「皆、言うねん…………………お前の親父は強いけど、お前は弱そうや…………………親父のお陰で、お前は守られとんやて。俺、悔しゅうて…………………」
それで、喧嘩。
要は、親のせい……………………。
「大和…………………………」
お父ちゃん、胸が痛い。
こんなに大切なのに、自分のせいで傷付けた。
嵩原は身を屈め、まだ背の低い大和の首筋へ顔を埋める。
「痛いな…………………大和……………………すまん」
「親父………………………」
首筋から伝わる、大和のドキドキ。
父親に抱きしめられ、ちょっと緊張している大和が、たまらなく愛しい。
出来る事なら、このままずっと、自分の手の中に収めていたい。
誰にも、渡したくないんだ。
誰…………………に………も?
「………………………っ!?」
ガバッ………………………
嵩原は、ハッとしたように顔を上げ、大和を見つめた。
俺……………………今、なに……………。
「…………………………親父?」
不思議そうに自分を見る大和の姿に、心が張り裂けそうになる。
「大…………………和…………………」
大和がいればいい。
大和さえいてくれれば、他に何も要らない。
何も。
そう思ってきた自分の意識に、嵩原は初めて違和感を覚える。
ドクン…………………ドクン……………………。
鼓動が、大きく波を打つ。
(皆様、いつもありがとうございます。今回は、殿様のリクを書かせていただきました。はい………………前後編になりました(--;)『恋愛男子』においても、私においても、なんだか大切な場面で………………一話では収まりきりませんでした(汗)すみません………………殿様、美しく書けるでしょうか( ̄▽ ̄;)頑張ります)
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