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両手に、側近(前編)
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有能な側近が、二人。
貴方なら、どっち?
大和に、大きな宿題が出来ました。
山代の刺青を決める。
何とも重大で、何とも責任を問われる。
今日は、その過程です。
……………………モテる男って、辛いですよね。
「やべ……………………どうしよ………………」
リビングのラグの上で胡座をかき、大和は溜め息をつく。
目の前のテーブルには、何やら写真集や冊子、ファイル等が重ねられている。
そのどれもが、『刺青』の文字を記す。
「………………………山代の刺青かぁ…………………」
ゴン………………………
テーブルに額をぶつけ、大和は重圧に沈む。
刺青。
一生、背中に背負う覚悟を身に纏う。
一生だ。
なんと、重い言葉。
なんなら、喜多見組襲撃の方が、マシ。
「うぅぅ………………無い頭が、余計に磨り減る」
如何せん、まだ17歳。
刺青の奥深さなんて、全くわかりません…………。
「………………………親父の刺青は、好きやけど」
テーブルに付けた額を横に向け、大和は一人照れ臭そうに呟く。
抱かれる度に、目にする父親の背中。
名彫り師が彫っただけあって、本当に迫力と美しさが格別に違う。
幼い時から好きだった刺青は、何年経とうと色褪せず目を奪われる。
いまだ、憧れる雄々しい姿。
「あ…………………………ヤバいぃ………………………親父に、会いとうなってきた…………………」
考えただけで、胸が高鳴る。
キュゥゥと締め付けられて、身体中が熱く包まれてく。
恋する乙女バリに、大和は顔を赤らめ、ドキドキする胸を押さえた。
今日、父親は錦戸と関東在住のスポンサー何人かと会う為に、出掛けて行った。
帰りは、遅い。
遅いんかぁ……………………。
それだけで、気分は、急降下。
「俺………………………女々しいな………………」
颯と別れ、父親との愛を選んでから、益々その想いは募る。
こんなに父親を好きになるなんて、自分でも想像してなかった。
「こんなんで、親父が関西帰る事になったら、俺泣くんちゃう……………………?」
離れとうない。
離れとうないよ、親父。
「…………………………………」
リビングに差し込む日差しが、やたらと目に痛い。
痛……………………………。
「だぁぁぁ……………っ!!てか、俺が痛ぇ………っ!!どんだけ女々しいんやぁぁっ!!こんなん、颯に笑われるしぃ………………っ!」
ようやく気付いたか。
バタンッ……………………!!
大和は頭を掻きむしり、そのまま後ろへぶっ倒れた。
「…………………………恋って、苦しいな」
今更ですけど、苦しいんです。
溢れる気持ちは、誰にも止められない。
お父ちゃん、会いたいよぉ………………。
4歳のチビ大和、今頃復活。
目蓋の上に片腕を乗せ、チビ大和はお父ちゃんの背中を追い続ける。
「クス……………………えらい激しい恋患いですね」
………………………へ。
ガバッ………………………!
大和は慌てて起き上がり、声のする方へ顔を向ける。
「たっ……………た、高橋ぃ…………っ!!」
「はい。申し訳ありません………………あまりに若が思い詰められてはったんで、お声かけづろうて…………」
リビングに響き渡る大和の叫び声とは裏腹に、高橋は穏やかな笑みを浮かべ、戸口に立っていた。
「お、思…………思い詰め……………」
「違いますか?『親父に会いたい!』って、嘆いとるように聞こえましたけど」
……………………ハイ、おっしゃる通りです。
優しい高橋の眼差しが、逆に胸に刺さる。
恥ずかし過ぎて、耳まで熱い。
近寄る高橋を見上げ、大和は返す言葉も見失う。
「……………………恋に、真っ直ぐ」
「……………………え……………………」
「そんな所は、親父にソックリ……………親子ですね」
膝をつき、大和の前にしゃがみ込見ながら、高橋はその姿に嵩原を重ねる。
妬けてしまう。
どちらに妬けているのか、わからなくなる位、結び合った二人はあまりに眩しい。
詳しくは聞いていないが、二人を見たら気付いてしまう自分にも、嫌気がさす。
お互いの絆を深める、何かがあった………………多分、それは間違ってはいない。
出来れば、気付きたくはなかった。
「高橋………………ぃ……………」
「すみません…………………口が過ぎました。朝、来られへんかったですけど、朝食ちゃんと食べられました?昼食は、若の好きなものご用意致しますね」
赤い顔で困惑する大和へ軽く頭を下げ、高橋は近くに散らかる本を手に取る。
「……………………刺青?」
これはまた………………珍しい。
刺青なんて、大和が特別口にした事はなかった筈。
高橋は眉をひそめ、首を傾げる。
「ああ……………………それ、山代の………………」
「山代…………………の?」
「頼まれたんや…………………刺青、考えて欲しいて」
「…………………………山代が、若に?」
…………………………へぇ。
沢山の資料を見渡し、高橋はそれが本気なんだと悟った。
「うん……………………や、やっぱ…………俺みたいなガキが、大事な彫り物なんか決めたらあかんかな?」
刺青の本を握ったまま黙る高橋を見て、大和はいつものように相談を持ち掛ける。
悩んだ時は、高橋。
物心ついた時から、大和の鉄則。
ずっと多忙で、中々相談出来ない父親に代わって、高橋は第二の親のよう。
「…………………………若」
「俺、刺青の事詳しゅうないし…………………親父がお前へ捧げたような、格好いい真似出来ひんやろ?山代に悪い気ィもして…………………」
あの綺麗な山代の背中に、刺青。
これが父親なら、粋な事でもやってのけそうなものを……………………こんな時、所詮ガキはガキ。
自分に、その裁量はないのだと思ってしまう。
「そないな事……………………若が、一生懸命悩まれはったものを、山代が喜ばへん筈ありません。充分、お気持ちは伝わります」
そう、伝わる。
山代の大和への想いが………………………。
「そ……………………やろか……………」
「……………………………はい」
笑顔で答えてやりながら、高橋は山代の想いの強さを見る。
若。
高橋の胸の奥に、微かな火が点る。
……………………俺の、大事な若や。
微かな火。
みっともない。
みっともないが、それが糧となる。
「………………………ただ」
高橋は、自分の言葉に聞き入る大和の顔へ、ゆっくりと手を伸ばした。
「ただ…………………?」
「刺青を貰うた山代が、どんなに頑張ろうと、若の隣は………………………私のものです」
絶対に。
「…………………高橋………………」
頬を撫でる高橋の指先が、大和を一層と熱くする。
「誰にも、譲りません」
誰にも。
有能な側近が、二人。
主を、愛す。
(皆様、山代の回読んで下さいまして、コメ下さいまして、本当にありがとうございました!!山代、なかなか好かれてました(*ToT)しかも、刺青の案もチラホラ頂きまして、なんて有り難い!!ちゃんと参考にさせていただきます。もう、感涙でした。本当にありがとうございました)
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