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本編の裏で・・・(伊勢谷と花崎編)
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二人に共通する事。
それは、親に捨てられた事実。
生まれつき孤児院育ちの花崎と、借金のかたに身売りされそうになった伊勢谷。
何処かで憧れる、人の温もり。
ガタッ…………………………
「ぅう…………………ヤバい、飲み過ぎた……………」
関東支部立ち上げの祝い。
高橋が大和を送っている時、花崎は誰もいないマンションに帰宅。
酒の強い連中に囲まれ、潰れる寸前。
玄関のドアを開いたまま、ヘタり込む。
「花崎っ…………………大丈夫か………っ」
そんな花崎の腕を掴み、手を貸す美人。
「い……………………伊勢谷さぁ……………ん」
あまり酒の強くない花崎を心配して、伊勢谷が付いて来ていた。
「俺に掴まりや……………中へ入ろう…………」
「ん……………んぅ……………伊勢谷さん、何やええ香りする………………ぅ」
崩れ落ちた自分の背中に手を回し、抱き上げてくれる伊勢谷にしがみつき、花崎はクンクンとほのかに香る香水に顔を緩める。
伊勢谷のイメージにピッタリな、甘い匂い。
色っぽくて、何だかキュンキュンしちゃう。
「クス………………………花崎………………擽ったい」
「だってぇ、伊勢谷さぁん……………俺、ワンコっすからぁ~♪」
花崎、完全に泥酔。
普段なら、まずこんなスケベ野郎はやらない。
これまでも、お父ちゃんには迫ったが、一応他の組員の前では男気保ってました。
泥酔、恐るべし。
伊勢谷の首筋をクンクンしても、笑って許してもらえる。
「伊勢谷さ…………………今日、側おって下さぁ……い。俺、寂しい………………ぃ」
「花崎……………………」
薄暗い玄関のひんやり感と、しがみついた伊勢谷の温かさ。
ヤクザが、なにやってんだ。
自分でやってて呆れるが、伊勢谷の柔らかさが甘えを呼び起こす。
「はぁ…………………ダメやなぁ……………俺………」
花崎は伊勢谷に抱き付きながら、朧気な記憶を辿り、小さな溜め息をつく。
「……………………大和が、羨ましゅうて……………」
「…………………………え?」
「親父にも、高橋さんにも、愛されとる………………今日なんか、安道さんまで『大和、大和』………………わかっとりますよォ……………………大和は大和で必死に頑張っとるしぃ、俺らなんかより重いプレッシャーと戦こうとる………………生まれ持ったモンが違うて」
でも、嫉妬してしまう。
自分とは、あまりにも違う眩しい人生。
自分だって、愛が欲しい。
恵まれたものが違い過ぎて、モヤモヤが胸の中で渦を巻く。
「神サマ…………………不平等………っすぅ……………」
そう言って、伊勢谷の肩へ額を当てる花崎の目は、心なしか潤んでる。
あ、マズい。
なんて思った時には、ホロホロと大きな粒が頬を伝う。
「花………………………」
「あぁぁ……………すんませぇ………ん…………俺ってば、こないに呑んだん久々で…………ぇ………」
まさかの泣き上戸!?
今夜、花崎は頑張った。
自分の担当する地区の幹部達と、呑めない強い酒もガンガンいって、距離を縮めようと必死に努力した。
無理もない。
他所の地区は、高橋や山代。
花崎では頼りない…………………そう思われてるに、決まってる。
若手は、どんな事でもがむしゃらに頑張るだけ。
なんか、酒と疲れと寂しさが、一気に溢れてしまった………………………。
「……………………ほな、お前が寝るまで側にいたる」
赤い頬に触れる、伊勢谷の優しい指先。
その指まで綺麗な手が、自分の涙で濡れる様にドキッとしながら、花崎は驚いて顔を上げた。
「ぃ…………………伊勢谷さん………………」
「俺も……………………親に捨てられた。お前が若を羨む気持ちも、神様へ不満を抱く気持ちもわかる……………グダグダなお前置いて、帰えられへんわ」
「あ…………………………」
酒で熱い顔が、益々熱くなる。
優しくて、美人で、男前。
伊勢谷さん、酔いに任せて勘違いしそうッス…………。
「可愛いな………………………花崎」
ガクンッ…………………………
止め、落ちました。
「………………………っ…………」
「花崎…………………っ!?」
思わず力が抜けて、花崎は尻餅をつく。
「も……………………俺ぇ、免疫ないんです……ぅ」
「ぷっ…………………案外、純やな……………」
微笑む伊勢谷が、またとびきり綺麗。
花崎は、違う意味で酔わされる。
「あれ……………………伊勢谷、来とったんか」
高橋、ご帰還。
大和との切ない別れを終え、自宅マンションへ遅い帰宅。
「あ、すみません……………花崎が、潰れとったんで」
リビングのソファに眠る花崎へ、寄り添っていた伊勢谷は、帰って来た高橋を見て、慌てて立ち上がる。
「そうか………………まぁ、それも試練やな………………」
伊勢谷の話に、高橋は笑顔で耳を傾けた。
そして、着ていたジャケットを脱ぐと、近くの椅子に掛け、立ったままの伊勢谷へ目を向ける。
「悪かったな、伊勢谷……………助かったわ。今日は、もう遅い…………………泊まって帰れや」
「は………………………」
「よう頑張った二人に、とびきりの朝飯用意したるから………………………」
「高橋さん………………………」
微かに頬を赤らめる、伊勢谷の控えめな照れ。
よう頑張った二人に。
花崎、きっと喜ぶな……………………。
綺麗な瞳を細め、伊勢谷は高橋を見る。
「………………………ありがとうございます」
ほんのささやかな、温もり。
それだけで、単純にも幸せだと思ってしまう。
「風呂、先に入るか?着替え、出しとくわ」
「い、いえ………………高橋さんが、お先にっ」
ヤクザ達の深い夜は、まだまだ続く。
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