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独身貴族
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(すみません、読者様とのやり取りから、ふと浮かんだものです)
独身貴族。
恋愛男子は、独身だらけですが……(上地が唯一の既婚者!)私の中で独身貴族と言えば、一番に浮かぶのは、やはり高橋でした。
ピピ…………ピピ……
「ん……………………」
高橋の朝は、早い。
まだ外は暗い、午前5時。
高橋は自室のベッドの上で、サイドテーブルへ置かれた目覚まし時計に手を伸ばす。
いまだ眠い早朝。
少し乱れた髪が目元にかかり、うっすら開いた瞳で時計の針を見ながら、高橋の身体は露になる。
布団から覗く、ほのかに赤い唇の美しさと、しなやかな腕から繋がる鍛え上げられた肉体の魅惑的な様。
そして、背中には嵩原から貰った、大切な刺青。
朝の高橋は、また一段と色香が漂う。
言い換えるなら、今朝の彼は上半身裸。
「ふぅ……………もう、朝か…………」
もう、朝。
昨日、高橋の夜は遅かった。
珍しくテスト勉強していた大和に付き合い、それから朝食の準備やバスルームの掃除等を済ませて、帰宅した時は既に1時を過ぎる。
そこから自宅の片付けを簡単に終わらせ、軽く水割りを呑んでからベッドに入った時は、この格好で寝てしまってた。
「起きなきゃな………今日から、また若はテストや」
きっと、お疲れになって一日を終わられる…………。
「朝から、しっかり食べて頂こう」
どんなに疲れていても、大和の為に身体は動く。
それを、どれだけ大事にしてきたか。
身の回りの世話だけは、大和と高橋を結ぶかけがえのない絆。
誰のものでもない。
高橋だけの特別な、日常。
カチャ…………………
クローゼットを開ければ、糊のかかったワイシャツが綺麗に並べられ、グラデーションのようにスーツが肩を揃える。
腹筋の割れた、引き締まった身にそれを羽織り、高橋の長い一日が幕を開けるのだ。
「おはようございます、若」
ベッドへ沈む姿に目を細め、また見る愛しさに胸踊る。
「んー、高橋ぃ……………まだ眠み……ぃ……」
「はい………………昨夜は、遅うまでご苦労様でした」
大和のマンションへ来た高橋の、最初の仕事。
なかなか起きない、大和の目覚まし。
これが、たまらなく至福。
自分にしか見せない大和を独り占め出来る、唯一の時間。
「今日、頑張って下さいね」
手短な会話に、一日の全てが凝縮される。
ここでの会話が、意外と大和にとっても良いスタートになったりするのだ。
「点良かったら、親父褒めてくれるかな………」
「ええ………………勿論です」
「ほな、高橋は……………?」
「……………………え?」
チラッと見上げる瞳に、心は鷲掴み。
嵩原に似た、何とも言えない端整な顔立ちと雰囲気。
親子揃って、自分を虜にして溺れさす。
ほんに、酷なお人らや……………。
高橋は………………?
聞かれるまでもない。
「何でもして差し上げます……………たまには、我が儘お聞き致しましょ」
高橋は、大和の髪をソッと撫で、優しく頷いた。
「マジ……………!?」
「二言はございません。何が宜しいですかね………」
「特大オムライス!!」
「…………………は」
欲がない。
何処から出た金かは言えないが、十分贅沢の出来る環境にありながら、ご褒美は『特大オムライス』。
勢いよくベッドに起き上がり、叫ぶ大和に高橋の目は点。
「いっつもな…………オムライス、もうちぃーと欲しいなぁて思うててん。いっぺんでええから、腹一杯食べてみたかったんや!」
「若………………」
食べ盛り、17歳。
言ってくれたら良かったのに……………。
そう思いながら耳を傾ける高橋の顔は、とても幸せそう。
「では、是非オムライスを…………」
「よっしゃぁ~♪」
よっしゃぁ~。
こんな嬉しい事があろうか。
最初は、料理なんてろくに出来なかった。
嵩原に救われ、あのおんぼろアパートで暮らし始めてから、安道に教えてもらった料理の1番目が、実はオムライス。
毎日々、自分の所へ顔を出す大和が可愛くて、何か喜ぶものを作ってあげようと思ったのが、それだった。
安道が言ったのだ。
『大和は、母親が入退院ばかりしとるから、母の味をよう知らん。せやけど、オムライスだけは覚えとる……………あいつにとって、オムライスは多香子さんの味。家族の温もりや……………大事にしたってな』
大事にしたってな。
あれから十数年。
皆様もご存知の通り、オムライスは大事にされている。
「高橋のオムライス、一番好き」
「はい、ありがとうございます」
一番好き。
高橋が、こんな大和から離れられる訳がない。
「私も……………大好きです」
嵩原家には、母親が二人いる。
産みの親と、育ての親。
これからもずっと、高橋はここへ全てを捧げるのだ。
(独身貴族、高橋………違いました。高橋は、既に嫁に行ってます。最後は、そんな気持ちになってしまいました。やっぱり、高橋は高橋ですね。何だかしみじみ思いました……( ´-`))
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