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男娼とヤクザ/シーズン1(第4話)
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〖今回の登場人物〗
湊……大和の数少ない友。昔、関東から引っ越して来たらしい。頭も良く、仕事もしているが、大和が暇な時によくつるんでいる。大和の過去も知る?
日も暮れかけた繁華街。
少しずつ明かりを灯しだしたネオンが、仕事帰りのリーマンを誘えば、街角にはキャバ嬢達が、客と腕を組みながら同伴する。
いつもの景色、いつもの賑わい。
また、夜が始まる。
女も男も入り乱れ、夢と欲にまみれた一時を過ごす為に、銭が落ちる。
「それ、恋じゃね?」
「…………………は」
そんな街の変化に目を向け、今夜の大和は、珍しく歩道の片隅で友達と時間を潰す。
「お前がそんなに他人を意識するなんて、小学生の時の初恋以来だろ。ほら………誰だっけか、前に話してたじゃん。何か、高校生にかつあげされそうになった時、助けてくれた人がいい男だったって……」
コンビニの珈琲を片手に、ビルの角にしゃがむ友。
背が高くて、甘いマスクの男前。
通りすがりの女子達が思わず振り返る容姿に、大和も『この外見は好み』と本人に言って、殴られた。
彼の名は、湊。
大和の数少ない友。
「ああ、名前も知らないお兄さんな…………今じゃ記憶も朧気で、初恋かどうかもわからんわ」
「………………考えてみたら、お前そン時から男好きだったんだな」
「うるせーわっ」
うるせーわ。
大和は、湊の前では素でいられる。
知り合ったのは、大和が家出をする少し前。
遊びに行ったクラブで出会い、ズバズバ言う爽快さに何故か意気投合。
歳上だが、お互い遠慮はない所が気に入ってる。
「まぁ、相手がヤクザなら、無茶すんなよ。深入りしない方がいい………………高橋さんも心配するぜ」
「わかっとるわ。ヤクザなんか、ヤバいだけや」
ただ、ちょっと聞いて欲しかった。
ずっと気になってる、嵩原のこと。
今日、大和は初めて他人に、嵩原の話をちゃんとした。
自分でも、何故こんなに気になるのかわからなくて、少し不安になった。
これって、何。
湊の言うように、恋?
てか、恋って……………どんなやねん。
恋すらまともにした覚えのない大和に、自分の感情の意味を知る術はない。
「そう言えば……………最近、不良連中の中で、娼夫狩りをする奴等がいるらしいぞ」
「え………………」
「偏見だろうな……………気持ち悪りィって騒いでるみたいだ。気を付けろよ……………何かあれば、直ぐ俺に連絡して」
「湊…………………」
前に、一度だけ湊の喧嘩を見た事がある。
酔ったチンピラがしつこく大和に絡み、湊がキレた。
無茶苦茶強かった。
ある程度、大和も自分の身は守れたが、湊のそれは止める暇もなかったほど。
「あと、また髪切りに来いよ?少し伸びてる」
ちなみに、湊の仕事は美容師。
毎回、お金を取らずに髪を切ってくれる。
お洒落な美容室で、湊目当ての客も多い。
きっと、カットだけでも高い筈。
有り難い。
然り気無く自分の髪に触れ、目を細める湊に、大和は小さく頷いた。
「はぁ……………娼夫狩りか……」
湊と別れた帰り道。
大和は重い溜め息を漏らしながら、ややネオンの減ってきた路地を曲がった。
娼夫狩り。
噂は、聞いた事がある。
結構ボコボコにされて、しばらく仕事の出来ない身体になったって話だ。
『気持ち悪りィって騒いでる』
わからないでもない。
ノンケの人間にしてみたら、自分達なんて受け入れられない部類だろう。
自分だって、初めは何で男が好きなのか悩んだ。
悩んで悩んで、結局変えられなかった。
「他人の人生やろ……………放っておけや」
吐き気がする。
自分達の考えだけで相手を見る、浅い人間に。
ヂャリ…………………
「あ?おいおい……………コイツ、男に身体売ってる奴じゃん」
「ホンマや!たまに、街中立っとんの見るわっ」
………………嘘やろ。
「チ………………最悪………」
近道しなきゃ良かった。
人気のなくなった、暗がり。
ぼんやりと、湊の話を思い出していた大和は、背後に近付く不良達に気が付かなかった。
「気色悪り……………ケツ、差し出してんや」
「なあなあ、金やるから俺のも咥えてくれへん?」
「ぶっ!それ、最高っ♪俺も溜まっとんよ」
振り向けば、20代そこそこのチャラそうな若者が3人。
ニヤニヤと汚ない口元を緩めて、立っている。
「………………アホ言え。お前らみたいな下品な男、誰がしゃぶるか」
「ぁあ…………っ!?」
負けたくねぇ。
客に酷い扱いをされても平気だが、自分達を受け入れられない人間に馬鹿にされるのだけは、腹が立つ。
これまでの苦悩も知らないくせに。
幾ら積まれたって、尻尾を振るような真似だけはしたくなかった。
「ふざけんやねぇぞォ…………っ」
ガシャーンッ……………!!
「ぐっ………………」
連れ込まれた場所は、本当に人通りの無くなったビルとビルの隙間。
大和は、男の一人に思い切り殴られ、近くにあったゴミや瓦礫の山の中へブッ飛んだ。
既に、顔には赤い血が微かなネオンの明かりに照らされ、歪に光る。
大和の言葉でキレた男達は、その身体を人目のつかない所へと引っ張り、殴る蹴るの暴行を加えた。
「ナメんじゃねぇ、ガキがァ!」
男娼を蔑む目は、大和に対して容赦ない。
許しを請わない大和の強情さが、益々男達の苛立ちを煽っていた。
ガランッ………………
「汚ねぇ商売なんざ、出来ひんようにしたる……」
そうして、怒りに身を任せた男が、瓦礫の中から錆びた鉄パイプの様な物を引き摺り出した時、思いもよらぬ事が大和の視界に広がる。
「おい、そのガキ……………今日、俺が買うとんねん。使い物にならへんようにしてしもうて、慰謝料くらい払うてくれるんやろな」
は…………………。
今日は、客を取ってない。
何言ってるんだ、この人。
ビルの谷間に見える、黒い影。
明るい通りからの眩しさで、それは逆光となった人の姿。
僅かに腫れた大和の目に映るのは、一体………。
「俺の一晩は高いで…………一千万は、覚悟せえよ」
一千万。
そんな男、何処に………………。
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