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男娼とヤクザ/シーズン2(第1話)
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〖今回の登場人物〗
シュウ(伊勢谷)……大和と同じ男娼仲間。美しく、売れっ子。噂では、1回の金額がかなりの破格とか。
「はぁ………………」
空が、茜色に染まる。
眠る事のない繁華街は、こんな時間から既にネオンが輝く。
大和も、そろそろ仕事の準備。
寒さが増してく季節、お気に入りのモコモココートを羽織り、ビルの非常階段を下りて行った。
ただ。
「…………………はぁ」
ずっと、溜め息が付きまとう。
『お前を、好きになってしもうた…………』
今日、嵩原の家から朝帰りした際(別に何もなかったが)、心配していた高橋に言われた言葉。
好きになってしもうた。
好き?
高橋さんが、俺を?
しかも、高橋は昔自分がほのかな恋心を抱いた、初恋の相手。
衝撃的事実に、頭はこんがらがる。
あの後部屋に帰ったが、見事に仮眠どころではなかった。
「……………そら、娼夫なんか止めて欲しい思うよな」
自分だって嫌だ。
好きな人が、身体売ってるなんて。
「高橋さん………………」
綺麗で、大人で、格好いい。
ビルを持って、バーは人気で、何もない自分からしてみれば、親がヤクザだったとか全く気にならない程魅力的。
「夢かな………………やっぱり」
あんな人が自分を好きだとは、あまりに信じ難い。
でも、嫌やなかったな……………。
高橋の優しい温もりと、柔らかな声色に包まれた時間が、とても心地好かった。
「…………………あいつとは、大違いやで」
そう、あいつとは。
『ガキに興味はねぇ』
表情一つ変えず言い切った嵩原の顔が、ガツンと脳裏に響く。
「そないにハッキリ言わんでも……………」
階段を下りる足が、最後の一段でパタリと止まる。
ガキ。
顔は、めちゃくちゃ好み。
背が高くて、クールで色っぽい。
嵩原もまた、大人だ。
俯いたまま足元を眺め、大和は何故か嵩原を思い出していた。
お気に入りの茶色いブーツが、やけにくすんで見える。
高橋に告白されてドキドキしてるのに、嵩原の顔が浮かんで離れない。
興味を持たれない、ガキ。
それでも、ここを下りたら、自分は男娼へと堕ちていく。
「はぁ………………」
ん………………?
ビルの谷間を抜け、大きな通りに出ようとした時、それは突然耳に入って来た。
自分と同じ、溜め息。
偶々自分もそんな気分だったからか、大和は何気に声の主へ目を向けた。
「あれ………………シュウ?」
「え……………大和…………」
見れば、そこには同業のシュウの姿。
ここいらでも有名な娼夫で、超売れっ子。
ハーフのような綺麗な外見が、最大のウリ。
きょとんとこちらを見つめる顔も、絵になる美しさ。
「なんや、お前が溜め息て……………変な客でも捕まったか?」
大和は通りすがりの足を止め、シュウの方へと歩み寄る。
「ぷ……………変な客ね……………」
「は、マジなん?誰や…………大丈夫か?」
珍しい。
苦笑いするシュウに、大和は本気で心配。
だって、シュウの客は上客ばかり。
質の悪い人間は、まず近付かない。
「ん………………危害はないんや。逆に、こっちが心配するだけでな」
「こっち………………?」
「多分、なけなしの金持って来とんやろなぁて………最近、俺を買う客なんやけど、買っても何もせんねん。ずっと喋ったりして終わるだけ。年下だし、どうしたもんかと悩んでてな……………」
「へぇ………………」
楽だな。
大和は、まずそれを考えた。
身体に興味なくて、何が満足なんだろ。
金でしか解決しない世界を見てきた大和に、シュウの客の摩訶不思議さ。
「………ええんちゃう、客がそれで満たされるなら」
思わず、冷めた事を言ってしまった。
結局、自分は人を思い遣ると言う事が出来ないらしい。
高橋にこの仕事を止めないかと言われても、止めようと思わないのだから、さすがに荒んでるとさえ感じる。
「クス………………大和らしい言い方」
目を細めるシュウが、女神に見えた。
シュウに、何故上客が付くか。
自分とは、明らかにコレが違う。
「あ……………そろそろ、その客と会う時間や。行かなきゃな……………」
「シュウ…………………」
「一度、ちゃんと話をしてみようと思うてる。ごめんな、大和………………ありがとう」
黒いウールのコートを靡かせ、シュウは颯爽と人混みの中へ足を進めた。
微かに流れる白い息が、シュウの茶色い髪色と混じり合い、そこだけ異国のように美麗だった。
年下。
どんな客なのか。
「………………俺も行こう」
夜が、始まった。
(皆様、いつもありがとうございます。また少し、こちらを書いてみたいと思います。短編です。始めたからには、こちらの恋も解決したい…そんな気持ちです)
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