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男娼とヤクザ/シーズン3(第7話)
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「大和…………どうしたんや?」
優しい声。
いつも変わらない高橋の温かさに、胸がいっぱいになる。
大和は顔を上げ、高橋を部屋に通すと、最近我が身に起きた事を打ち明けた。
どれくらい喋っただろう。
始めは、高橋の表情をまともに見られなかった。
怒るよな………………。
そんな事ばかりが頭を占める。
身体を売らなくても、娼夫も情夫も大して変わらない。
結局、あの嵩原と身体で繋がっているのだから。
「…………………はぁ」
狭い部屋に、高橋の溜め息が響いた。
耳が痛い。
テーブルさえ無いラグの上。
向き合う格好で、大和はずっと下を向いたまま。
「…………………大和」
「は、はい………………」
「嵩原は、ヤクザやぞ………………それも、かなりヤバい奴や。俺がこの辺りで知る限り、嵩原より危険なヤクザは知らん」
「ん…………………」
「大丈夫なんか?お前、騙されとん違うよな?………俺は、お前の事だけが心配や」
大和も知らない嵩原の顔。
上地から本当の嵩原を聞いていても、大和が情夫ともなると気が気ではない。
幸せになれる保証が、何処にあろう?
「でも……………俺の前での嵩原は、優しい」
「…………………え?」
「いっつも俺を気遣ってくれて、怖い思うた事なんてない。知れば知るほど、好きになってまう……」
「やま………………」
好きになってまう……………。
申し訳なさと、赤い頬。
俯いた姿で自分の反応に不安を覗かせながら、嵩原への想いを打ち明ける大和に、胸がキュウと締め付けられる。
可愛い、大和。
街で見かけた時から、自分が支えてやりたいと思っていた。
それが、いつの間にか恋を知る。
なんて罪な男なんだ、嵩原は。
まだ十代の少年の心を、こんなにも拐っていった。
高橋は、そんな大和の姿に言葉を詰まらせ、赤い頬へソッと手を伸ばした。
「………………そないに好きなんか」
「う……………うん……」
「苦労しても知らんぞ……………」
「…………………うん」
大和………………。
多分、もう何を言っても無駄だ。
俯く大和の瞳には、嵩原しか映っていない。
恋する瞳。
まさに、それの一言に尽きる。
嵩原は、どんな手を使ったのか。
指先に伝わる大和の熱を肌で感じ、高橋は言い様のない敗北を味わう。
ここから無理矢理大和を奪ったところで、大和が幸せに感じる事はないだろ。
「大和………何かあったら、いつでも帰っておいで」
「へ…………………」
「お前には、帰る場所があるから」
「高橋さ………………」
馬鹿なお人好しかもしれない。
だけど、幸薄かった大和が幸せだと思うなら、それが一番だ。
高橋は、大和の為に自らの想いを拭い捨てた。
愛してる。
愛してるよ、大和。
「その代わり、相手が嵩原だろうが何だろうが、お前を哀しませる奴は許さへん。そん時は、俺が守ったる」
「そん……………な……ん…」
可愛い瞳が、みるみる涙で揺れる。
まだ十代の子供が、一人で生きていくなんて、決して楽じゃない。
苦しい幼少期から逃げ出し、この街に来た大和の生活は、自ら身体を売ってやっと生活出来る程度。
身体を売ってやっと……………。
嵩原やったら、その様な真似はさせへんか…………。
自分の言葉に涙ぐむ大和を抱き寄せ、高橋は唇を噛み締めた。
「………………幸せになれよ。嵩原が困る位、しっかり甘えたれ………お前には、それだけの権利がある」
頼むで、嵩原。
溢れる感情を必死に抑え、高橋は大和の将来をヤクザへ託す。
ただただ、幸せになって欲しい。
愛を知らない少年に、どうか愛の手を……………。
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