アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
出発点(過去α/前編)
-
(前回、目を通して下さいました皆様、ありがとうございました。その流れで、お二方からリクエスト頂いたので、このまま続きに入らせて下さい(_ _)京の大和との初対面&お父ちゃんと京のドタバタ子育てです)
大和が産まれてしばらくの後。
ずっと待合室で待機していた安道は、ようやく嵩原に呼ばれる。
ガチャ…………………
「竜………………」
奥のドアが開き、慌てて立ち上がる安道が見たもの。
「え……………お前、大丈夫か………」
つい、そう言ってしまう程の嵩原の様子に、笑いと感動が入り交じる。
「だ、大丈夫やない……………」
初めて目にした、我が子。
嵩原は、多香子の妊娠を知ってから、もう毎日がそわそわワクワクの繰り返し。
この日をどれだけ待ちわびた事か。
経過を聞かされ続けた安道は、嵩原よりも多香子の体調が頭にインプット。
それだけ、嵩原の10ヶ月と数日は、生まれてくる赤ちゃんに注がれた。
だから、嵩原がどうなるかなんて、ある程度予想していた安道だったが、いざ起きてみると、その姿にさすがに唇が震えた。
「アホ、何て顔しとんねん。ガキに笑われんぞ」
「うっせぇ………お前かて、ガキ見たら感動するわ」
ボロ泣き。
悪ガキで名を馳せ、ヤクザにまでなってしまった心友が、頬まで真っ赤にし、涙をボロボロ流してる。
出会った頃から、手を焼かされ続けた男が、ボロボロ……ボロボロ…………。
「…………………おめでとう。二人共、元気でホンマ良かったな………………会わせてもろうてええか?」
「ぅん………………当たり前やろ」
安道は、ポンッと優しく嵩原の頭を撫で、友の幸せを心から祝った。
「おめでとう、多香子さん。身体、大丈夫なん?」
「あぁ……………京ちゃん」
病院に入ると、多香子はグッタリとベッドに寝ていた。
安道の顔を見て嬉しそうに微笑んだが、元々身体の弱い多香子には、出産がどれ程の負担になったか、一目でわかった。
脇に添えられたベビーベッドの中よりも、安道はまず多香子に歩み寄る。
「しんどいのに、すまんな……………赤ちゃんの顔、チラッと見たら帰るさかい、ゆっくり休んでや」
「ごめんね、京ちゃん。いつも気を使わせて………入院中、たっちゃんの事まで頼まなあかんのに」
「そないな事、気にしたらあかん。今は、赤ちゃんと自分の事を一番に考えとき」
親の反対を押し切って結婚した二人に、頼れるのは安道だけ。
多香子の信頼を一心に受ける安道は、まだ19歳にも関わらず、とてもしっかりとそれに応えていた。
「多香子……………京……」
そして、そんな二人を嬉しく思う嵩原。
それ見たら、また胸が熱くなった。
「京ちゃん、ウチの大和見てやって」
「大和………………?」
「うん。たっちゃんがね、大和がいいって」
大和。
「大和か……………ええやん」
「………………やろ?」
側にいた嵩原と顔を見合せ、安道は満足そうに微笑んだ。
ベビーベッドを覗き込む嵩原の嬉しそうな表情。
それを見ていられるだけで、幸せを感じた。
いつまで経っても、安道にとって嵩原は手の焼ける愛しい友人。
「どれどれ……………大和ぉ、どっち似や」
その男が、人生最高に悦びを露にしてる。
可愛くない訳がない。
「むにゃ……………ふ……にゃ」
小さな小さな口を、むにゃむにゃと動かして眠る、これまた小さな身体。
触れたら折れそうな細い指と、まだしっとりと湿った薄い髪の毛。
「はぁ…………ちっせぇ………」
安道も赤ちゃんを見るのは、初。
なんとなく描いていたものが、一気に吹っ飛んだ。
「…………………可愛いな」
「な?可愛いやろ…………」
この子が大和。
嵩原が、泣いたのがわかる。
こんな小さな命があるのだと思うと、産まれて来てくれてありがとうって感動が、心の底から込み上げる。
「ホンマ、可愛い……………」
よく聞く、『猿みたいだった』ってやつ。
確かに、猿みたいな顔だ。
でも、湧き起こる愛情は格別。
「大和……………大和かぁ…………」
安道は自然と綻ぶ笑顔を、嵩原と多香子の前で思い切り晒した。
「元気に育てよ……………しっかり、お父ちゃんとお母ちゃんに甘えるんやで」
スヤスヤ眠る様に目を細め、大和のこれからに夢描く。
どんな子に育つのか。
まだ見ぬ未来に、想いは託された。
それから、多香子と大和は一週間程で退院したが、多香子の産後の体調が思わしくなく、度々通院する事が増えていった。
当然、その間は、嵩原が大和を見るわけで。
あの嵩原が、上手くそれをこなせる筈もなく………。
コンコン………………
「竜也ぁ……………オムツ買うて来てやったで。おるんや…………」
「ぅわああああ…………っ!?」
「…………………え」
古いアパートの一室。
ちょっとした悲鳴も、よく響く。
今日は、多香子が病院の日。
嵩原だけでは大変だろうと、オムツ持参に助っ人に訪れた安道を、その友の叫び声が出迎える。
「何や……………また、何かやらかしたんか……」
これで何回目だろう。
毎回来る度にドタバタで、さすがの安道も慣れてきた。
ガチャガチャ…………ガチャ……
「どないしたんや、竜也……………大和がどうした?」
錆び付いたノブをグリグリ回し、溜め息混じりに一応声をかける。
「きょ……京ぉぉぉっ!大和が、大和が………っ」
「あ………………?」
「オムツ替えたろ思うたら、おしっこ飛ばしたぁぁぁ……っ!!」
おしっこ飛ばした。
おしっこ………………。
見れば、オムツを広げられ、すっぽんぽんになった大和のアソコから飛び上がる、おしっこ。
嵩原のパンツには染みが付き、周りの畳へも水滴が。
「アホかぁっ!!早よ、拭いたれっ!」
どっちが、子供。
これがまた、安道の苦労が絶えないのだから、気の毒としか言いようがない。
(すみません。大和が小さ過ぎてしばらく台詞がありません…)
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
192 / 241