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高橋と錦戸
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(久々の更新…本編を読んで下さり、本当にありがとうございました。同じ言葉しか出て来ないのですが、本当に感謝致します。久し振りにもかかわらずアクセス下さったのを見て、改めて有り難さを噛みしめました…。こちらも少し、息抜きに入れていけたらと思っています。宜しくお願い致します)
「それ、若のご夕食か?」
外は、雨。
静かなマンションに響く、雨音の激しさ。
嵩原が、桜井と出掛けた昼下がり。
帰りを待ちながら、仕事の片付けをしていた錦戸は、キッチンに立つ高橋へ話しかける。
「ああ…………今夜、親父はお前や湊と会食やと言われとったからな。たまには、若のお好きなもんばかりもええやろうと思うて」
手際のよい高橋の前から漂う、美味しい匂い。
そこを覗き込む錦戸は、丁寧な仕事ぶりに若き主を思う、高橋の愛情を見る。
作りたてのポテトサラダに、鍋でじっくりと煮込まれている肉じゃが。
小さく切られた鶏肉や人参・玉葱、グリンピース類の下ごしらえ。
「え、もしかして……………」
「……………オムライス。若の大好物やからな」
笑顔を浮かべる様からは、ヤクザなんて肩書きも消え失せそう。
毎日、これだけの事をするのはなかなか大変だ。
高橋は、それに加えて通常の業務も完璧にこなすのだから、本当に頭が下がる。
「相変わらず、お前の若への愛情には感服するわ……今の顔なんか、組員らが見たらビックリするで」
錦戸は溜め息を漏らし、改めて自分が見てきたヤクザ・高橋を重ねた。
「そうか?親父に付いてた時から、お二人のお世話もしてきたけどな……………」
「あの時とは、また違う。昔のお前は、明らかに恐さが先に出とった。皆、お前がおるだけでどれだけ緊張してたか…………『竜童会高橋』言うたら、この世界の大物やで?若に微笑むお前見て、組員らがドギマギする訳や……………」
「プ……………何や、ソレ。知るか、ンなもん」
ここにもいた、罪な男。
大和が以前、山代に『同じエロさでも高橋とは違う』と言ったのを、覚えておられるだろうか。
隙のない、高橋のエロさ。
昔から、ヘタすると嵩原より恐かった、高橋。
嵩原の為に生き、嵩原へ絶対的な忠誠を誓った高橋に映るのは、当然嵩原のみ。
特に、右腕をしていた時代は、組をのし上がる最中でもあったせいか、微塵の隙もないほどに完璧さに拍車をかけた。
勿論、現在も恐い。
皆、内心は戦々恐々としている。
ただ、ここ最近はそれが少し変わった。
大和の前でなら、高橋は人前でも笑うようになったからだ。
これまでは、嵩原と二人きりの時だけ自分を見せた高橋が、大和といれば素顔を覗かせる。
元々綺麗な高橋の綺麗な素顔。
滅多にお目に出来ない高橋のそれを、組員達はいつも遠巻きに眺め、羨望の眼差しで視界に入れる。
恐いから誰も安易に近付けないが、大和がいれば高橋は笑う。
本人は無関心だが、周りはチラチラ興味津々。
………………罪以外の何ものでもなかろう。
「ホンマ…………お前が独り身って、勿体ねぇな」
「それを言うなら、お前もやろ」
「………………は?」
嵩原を筆頭に、独身の多い竜童会。
顔良し、頭良し、仕事も出来て金もある。
ヤクザって事を避ければ、モテる要素は詰め放題。
高橋を称える錦戸だって、それは同じ。
自分の後を引き継ぎ、嵩原から絶大な信頼を得る独身貴族を、高橋はとても高く買っていた。
「俺は、親父のお側を離れると決めた時点で、多分次はお前やろうと思うてた。それくらい、お前かて人目を惹く存在やったで」
「高橋……………」
「親父も、それをちゃんとわかってたんや…………せやから、周りがどんだけざわついても、お前を抜擢した事は曲げへんかった。結果、今があるやろ」
「それは……………」
照れる訳でもない。
真顔で高橋の言葉を聞く錦戸に、それは嬉しいものではないのか?
「らしいな……………その顔」
「え………………」
キッチンのカウンターを挟んで交える、右腕同士の会話。
錦戸よりも長く極道に身を置く高橋は、今や若手の精神的中枢も担う。
でも、それに迫っているのは、間違いなく錦戸。
「お前は、まだ自分の成果に納得してへんから、誉め言葉が素直に入ってはけえへんやろうけど、何も心配する必要はない。親父の表情が一番の答えや……お前がずっと欲しかったものを、あのお方が表してくれとるで……………独り身なんが勿体ない位、ええ男になったわ、錦戸」
「…………………っ」
ライバルと言うには、おこがましい。
だけど、ライバルと思って追って来た高橋の一言一言が胸を熱くする。
クールな錦戸が、久々に見せた赤い頬。
「互いに、主の為に全てを尽くそうや……………俺らの生きる道は、そこにある。完璧に支えてこその、右腕ぞ」
先人の対等な目に、感謝が募る。
錦戸は照れる顔を僅かに俯かせ、小さく頷いた。
「………………せやな。それしかねぇわ…………俺らの道は、主と共にや」
主と共に。
愛し愛され、悔いなき道を行く。
全てを尽くそう。
どんな試練も完璧にこなし。
「次なる戦いも……………勝つのは、竜童じゃ」
「フッ……………当たり前よ」
勝たせてみせよう、我が主を。
激しい雨も、晴天に変えて。
(高橋だからわかる、錦戸。錦戸だから感じる、高橋。同じ道を歩む二人は、本当の意味で同士のように思います。離れていても意識し合う間柄。組の中で、多分嵩原や大和に何かあった時、一番に身を擲つのは彼らだと思っていて…だからこそ、勝つ戦いをして欲しいと願います)
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