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地方の暴れん坊
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(すみません、本来なら本編を上げたかったんですが、不具合が続いてて更新がちゃんとされなかったらと思い、こちらを先に上げました(汗)そして、今回こちらはいつもとはやや視点を変え、本編でも記載した『まだ見ぬ若手』…そこにスポットを当ててみました。大和達も当然知らない世界…地方の若手のこれからも見逃せない時が来るかもしれません)
強い者が、強い。
それが、極道の世界であり、現代版下克上。
そして今、その下克上の頂点を極めた組織と言えば、言わずと知れた嵩原率いる竜童会。
また、そこへ次ぐのが上地を組長とする白洲会。
現在の裏社会で、両者は不動の勝ち組。
誰もが簡単には近付けない、絶対領域である。
ただ、地方にだって勢いはある。
虎視眈々と、微かなチャンスを掴める時を狙っている勢いが。
「若ァーっ!まぁたそがぁな所で油売ってっ!」
大和達の暮らす大都会から、数百キロ。
あの高層ビル群よりはやや抑え気味なビルを望む、穏やかな商店街。
流れる客達は、流行りに乗ったコジャレた通行人ではなく、シルバーカートを押した婆ちゃんやママチャリから降りた主婦の面々。
陽気な笑い声と平和な笑顔が花咲く、とある地方のとある下町。
ヤクザなんて、一見するといるかさえわからないようなのどかな町に、看板を掲げる組が一つ。
「もう降りて来てつかぁさいっ!親っさんに叱られますから………っ」
商店街から頭二つ分は飛び出した、ここいらでは珍しい4階建てビル屋上。
爽やかな風が吹き抜けるそこで、まだ高い給水塔を見上げ、叫び声を上げる男が一人。
彼の名は、中国地方を中心とて幅を利かす組織、篠山組幹部/若頭補佐・金城英次。
そうして、金城の見つめる先にいるのが、大和と張れるほど若い組の頭…………。
「怒りてぇんなら、怒らせとけぇ………どうせまた、ガキの話から始まって居眠りこきとうなる説教じゃァ…………それよか、英次!お前も来ぃや~。今日の風は、ばり気持ちええぞォ♪」
キラキラと目映いパツ金頭を靡かせて、住み慣れた町を望む青年・篠山賢人、二十歳。
賢人もまた組長を父に持つ、次期組長候補だ。
「ば………………」
ばり、て……………。
金城は、大口を開けて笑顔を振り撒く賢人を見ながら、苦笑い。
昔から緑の野山を駆け巡り、自然の中を飛び回っていた賢人の自由な様。
困った人だ。
突拍子もない所が好き嫌いをハッキリさせ、組長にさせたい金城達と他の幹部の対立は激しい。
だが、当の本人は何処吹く風。
『言いてぇ奴らには、言わせとけ』
そう言って笑ってしまうから、取り巻き達は余計にヤキモキ。
地方でも、絶えず争いは起きている。
「ええんですかー?何か関東じゃ、また竜童会の若頭が名を上げたらしいですよーっ」
「ぁあー?」
「じゃからぁー!竜童会の若頭ですわー!若より、三ィっつも下のぉー!」
どこも同じ。
両手を顔に添え、声を張り上げる金城の気苦労が和らぐ事はない。
「何じゃとー!マジけーっ、それ!!」
「マジですー!なんでも、関東の徳新会に乗り込んだり、大陸マフィアの幹部とやり合うたとかァー。どちらも成功したって話ですわァ!」
ただ、そんな賢人も大和の事は気になるらしく……。
金城の報告に、身を乗り出して耳を傾ける。
「徳新会に…………マフィア……」
「まぁ、向こうは側近も最高ですが…………これで、益々関東制覇に近付いたんじゃないですかね」
「チッ……………」
関東制覇。
自分達は、いまだ中国地方から抜けてはいない。
見上げる空の高いこと。
「ぇえーい、くそォ!!年下のくせにィ……っ!」
ザッ…………………!
「わっ!?若…………っ」
給水塔から飛び出した賢人が、金城の視界を塞ぐ。
青空を過る影に、未来への翼を見るか。
バァンとコンクリートの屋上が地響きを鳴らし、賢人の身体がバネのように着地した。
「何が竜童じゃァ…………俺も負けてられんわ!」
相手は、既に天下一。
悔しいが、スタートで違うのだから仕方がないのだが、賢人達地方組に、それを理由にしてぶつくさ言ってる暇はない。
「金城……………っ!」
「………………はい」
「俺も、いつかは関東行ったるけんな!地方もすげぇんじゃって、見せつけたるんじゃ!!」
誰もが憧れる、極道の華。
そこを掴むか掴まないかで、人生はガラリと変わる。
皆が、ライバル。
賢人のような志を抱く者は、当然他にもいるのだ。
「へぇ…………くしょん!!」
「若、風邪ですか?」
高橋の隣でくしゃみをする大和も、それは一緒。
「誰か噂しとんか…………」
「クス……………それだけ、名が広まりましたかね」
「……………俺、有名人やな」
「はい……………十分に」
負けてられない。
目指すべき道は、遥か先。
これから、もっと険しい道のりが待っている。
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