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男娼とヤクザ/シリーズ4(第23話)
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空は、青く。
晴れ渡る景色に、未来は光る。
「大和……………っ!」
あれから、どれだけの日が過ぎたのか。
大和が高橋の手伝いを始めて、3ヶ月が経とうとしていた。
初めは慣れない事ばかりで迷惑をかけていた大和も、ようやく仕事の流れにも慣れ始め、最近では支払いや集金等の金の管理も任されるようになった。
それが、本人にはたまらなく嬉しい。
誰かに頼りにされるなんて、これまで経験のない事。
仕事に、やりがいが出来た。
高橋の思惑と言うべきか、大和の表情は3ヶ月前のあの頃よりは、随分と明るくもなったようにも見えた。
そんな時だった。
遠くから大和を呼ぶ、突然の訪問者。
「は………い………?」
大事な金の入ったバッグを抱え、振り向いた大和は、その先に見えた姿にハッと目を丸くした。
「久し振り……………」
「み…………湊っ!?」
快晴の日差しを浴び、笑顔で佇む男前。
背が高く、見惚れるような笑みは、少し離れて立つ大和にも眩しい位に視界へ飛び込んだ。
「元気?…………大和」
「あ、う…………うん、元気や………」
相変わらず、格好いい。
久々に会う湊は、あの別れた時から何も変わらず、格好いい眼差しと優しい声で大和へ語りかける。
「良かった。ずっと会いたかったからさ…………」
「え……………」
会いたかった?
歩み寄る姿に心臓をバクバクとさせ、大和はゆっくりと顔を上げた。
「でも、兄貴に止められてたんだ。大和が頑張った気持ちを台無しにするなって」
ハァッと流れる溜め息が耳を掠め、大好きな人の言葉にまた胸は高鳴る。
湊の苦笑いに重なる、嵩原の面影。
『台無しにするな』
それだけで、身体中が熱く緊張する。
嵩原が、俺の気持ちを……………。
忘れた事はない。
毎日、毎日……一度も忘れた事はない、恋しい存在。
「………………だけど、もう限界」
「限界…………?」
「だって、結局兄貴にとって俺は弟でしかなく、恋人は大和…………お前以外いないんだし」
「………………へ」
戸惑う自分を見つめる湊が、抑えていた気持ちを引き摺り出すように、グッと大和の心へ入り込む。
「もうギブしていいかなぁ?どんなに愛されても、弟以上になれない俺には、恋人の代わりなんて出来ねぇよ。この3ヶ月、兄貴の中には一瞬も離れる事なく、お前がいた。たまにぼんやり何処かを眺めてる顔見てたら、こっちが居たたまれない」
「ギブって………みな……っ」
「頼むから、引き取ってくんね?兄貴」
引き取ってくんね。
「な………何言っとん………湊っ」
動揺で、思わず上擦る大和の声。
引き取る?
引き取るって、嵩原を…………!?
「兄貴……………!」
「は……………」
だが、驚いてる暇などなかった。
湊が叫んだ瞬間、その姿は大和の目の前に現れる。
仕立ての良いスーツを身に纏い、こちらを見ながら歩いて来る一人のヤクザ。
「た…………たっ……」
「そりゃあさ、お前との事を知った時はショックだった………俺にとって、本当に兄貴は大好きな存在だったからな。それでも、お前だから応援したいと思ったのは、確かだ。俺に気を使う必要なんかない。大和、兄貴を頼むよ…………お前に押し付けたくて、無理矢理連れて来たから」
愕然とする自分の背中を押し、微笑む湊の話が大和の景色に大きな輝きを生む。
「嘘………や……」
目を細め、僅かに緩んだ口元から溢れる、大人の色気。
やっぱり、この男が一番。
その笑顔だけで、キュンと心は持っていかれる。
「た………ぁ……」
唇が震え過ぎて、上手く言葉にもならない口を手で覆い、大和はただただ一点を見据えた。
想いばかりが募った、3ヶ月。
もう、会えないんじゃないかと思ってた。
こんな未練たらしい気持ちでは、会ってはいけないんじゃないかと思ってた。
「嵩……………」
「ああ…………元気にしとったか、大和」
全てが、弾け飛ぶ。
真っ赤に染まる肌と、くしゃくしゃに崩れる顔。
頭が真っ白になった。
大好き。
「嵩原ぁ…………っ」
それしかなかった。
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