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男娼とヤクザ/シリーズ4(第27話)
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(前回、一部分変換の際に入れた文字が間違っておりました。更新後見て下さいました皆様、本当に申し訳ありませんでした)
「俺…………お前が…………」
高鳴る鼓動が、その緊張を教える。
大好きな男を前に、瞳は輝く。
生まれて初めてかもしれない。
誰かに本気で気持ちを伝えるのは。
ドキドキと、激しく打ち付ける胸元をギュッと握りしめ、シュウは一成を見つめた。
小さく吐き捨てる呼吸が、一気に重く感じる。
知らなかった。
告白とは、こんなにも緊張するものなんだと。
それを自分は、何度一成に言わせたのか。
「お前が、好きや…………一成」
「シュウさん…………っ」
美しい肌を赤く染め、照れ臭そうに囁くシュウが、一際眩しさを増した瞬間。
まるで、この周りだけパアッと花が咲いたように、春の訪れを知らせる。
お前が、好きや。
聞きたくても聞けなかった、愛の言葉。
たった一言が、これほどまでに人を幸せに出来るなんて……………。
シュウの告白を聞いた一成は、今にも泣き出しそうな顔をくしゃくしゃにして耐えていた。
「シュ………さ……」
絞り出す声の優しい事。
潤んだ眼差しがやっと掴んだ相手は、相変わらずの美しさで微笑んでる。
「一成………こないな俺でも、もろうてくれる?」
「あっ…………当たり前やないですか……っ!」
伸ばした手に絡まった、愛しい人の温もり。
もう離さない。
「俺が………一生幸せにします!!」
結ばれた糸は、絶対に切れない強さで繋がったのだ。
すれ違う人々が振り返る中、シュウの手を握りしめた一成の誓いは天高く響き渡った。
「……………おめでとう、シュウ」
「大和…………」
オシャレな雑貨屋のウィンドウ前。
若く初々しいカップルの姿は、誰よりも眩しく光ってた。
「泣いとんか?お前…………」
「なっ………泣いてへんしっ!」
「へぇ…………」
「ホンマやで!ホンマに……っ…」
「ぷ…………何も言うてへんやろ」
「そっ………そうやけど……」
そんな幸せそうな二人を眺め、こちらはまた賑やかな日常に戻る。
慌てて目頭を擦る大和へ微笑みかける、嵩原。
その嵩原を見上げ、膨れっ面になる大和。
でも、帰る場所は同じ。
肩を並べて歩き出せば、いつの間にか大和は楽しそうに笑顔を向けていた。
今日は、いい事があった。
大切な仲間の幸せに、心は弾む。
「……………大和?」
「え……………」
繁華街の街中を、颯爽と走り抜ける高級車。
その助手席から外を見ていた人物は、歩道を歩いていた少年の姿に、綺麗な顔を覗かせる。
シュウとはまた違う上品な顔立ちと、自然と醸し出される色っぽさ。
「なんや、まだ未練あるんか」
「そうじゃないけど、今似たような子がいたから」
「止まったろうか?…………山代」
大和の忘れられない美人の客、山代だった。
「そこまでは…………ただ、凄く笑顔だったから、ホッとした」
車を運転する錦戸の方へ顔を向け、微かに目を細める山代。
あれから、もう大和には会っていない。
勿論、どんな顔をして会うのかと言う思いもあるが、大切な大和を傷付け、嵩原の身辺を勝手に大和へ教えた事をとても反省しているからだ。
今願う事は、ただ一つ。
大和には、幸せになって欲しいって事だけ。
「……………良かったな、笑顔で」
「あ、う…………うん」
錦戸の言葉に、山代は嬉しそうに頷く。
隣にいたのは、嵩原だろうか。
白いスーパーの袋を下げた大和しか目に入らなかったが、確かに横へ背の高い男性がいた。
良かった。
二人は、一緒なんだ。
「もう大丈夫やろ…………あの子は」
「え……………?」
「嵩原みたいな男を虜にさせたんや………ある意味強運の持ち主やで。自分で、自分の人生掴めるわ………それより、お前の方がええ加減身の振り方考えや」
「身の振り方?」
運転をしながら自分をチラッと見てくる錦戸が、山代の視線を奪う。
身の振り方……………。
こんなゲイに、身の振り方なんてあるのか?
山代は首を傾げ、ぼんやりと自分のこれからを考える。
どうせ、一生独り身で終わるのが関の山。
「お前は、自分に自信なさ過ぎ…………そろそろ相方の事も気にして欲しいわ」
「へ……………」
「はぁ…………っ」
と、焦れったい溜め息が、山代の耳を掠めた。
キキィ……………!
そして、突然車を路肩に停める、錦戸。
「錦……………」
「お前が思う以上に、お前は魅力がある…………側におったら、ハラハラすんねん。いつか、誰かにお前が獲られるやねぇかって…………粘って粘って、やっと仕事を手伝ってもらうまでこぎつけたのに、これで奪われたら最悪やってな」
カーステレオから流れるジャズがやたらと車内に響き、驚く自分を見つめる錦戸に、山代は言葉が出なかった。
錦戸……………。
真っ直ぐな強い眼差し。
初めて会った時から、錦戸はいつもこんな視線を自分へ注いでた。
それが、山代には自分の真逆を行くようで、決して交わる事はないと感じていた。
なのに、気が付けばもう長い付き合い。
しかも、今まさに自分に迫ろうとしている。
自分に……………。
「俺は、ずっとお前が好きなんや…………山代」
ジャズが、響いてた。
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