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昔の話
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「お父ちゃん……………サンタさんて、おるん?」
今から10年以上も昔。
クリスマスも近い、12月の寒空の下。
幼い大和は、父嵩原竜也に手を引かれ、素朴な疑問を投げ掛ける。
「え?サンタ?おるに決もうとるやん………………何でそないな事聞くん?」
この時、嵩原はまだ二十代前半。
今の大人の色気まではいかないが、誰もが振り返る程の、若いイケメン振りをさらしていた。
そんな嵩原の眼差しは、可愛い大和の事で、毎日が埋め尽くされる。
「大和は、サンタ信じてへんのか?」
嵩原は、自分に質問をしてくる大和の前へしゃがみ込み、優しい笑顔で聞き返す。
少年時代に、家族を失った嵩原にとって、大和は唯一の家族。
去年、愛妻多香子は、この世を去った。
本当に、二人だけになったのだ。
「ん…………………よう、わからん……………去年かて、お母ちゃん返しててお願いしたけど、無理やったし」
大和は、自分を見つめる父親の手を握り、少し頬を膨らます。
お母ちゃん。
まだ、母親の恋しい時期に、母親がいない。
自分なら耐えてきた事が、我が子となると、こんなに苦しい。
「……………………そうか…………………去年、お母ちゃん頼んでたんか…………………」
大和の手を握り返しながら、嵩原は唇を噛み締める。
「堪忍な……………………お父ちゃん、気付いてやれへんかったな…………………」
何も知らず………………戦隊ヒーローのロボット、置いてたわ…………………。
まだ、男盛り。
街を歩けば、女達から声を掛けられる。
それでも、嵩原の愛情は、大和だけに注がれた。
「お父ちゃんだけやったら、あかんか?……………いっぱいいっぱい、頑張ってお父ちゃんするさかい…………お父ちゃんだけやったら、あかんやろか………………」
あかんか?
あかんに決もうてるわな……………………。
母親の代わりなんて、どんなに頑張っても、出来る筈がない。
多香子の亡くなった日。
大和の前では、泣かないと決めた。
嵩原は、大和のふて腐れた顔を目に焼き付け、込み上げるものを必死で堪えた。
「ん……………………お父ちゃんは、おらんようにならん?ずっと、一緒におってくれる?」
不安そうに訊ねてくる、我が子の愛しさよ。
この子がいてくれさえすれば、何も要らない。
「当たり前や………………お前とおらんで、誰とおんねん…………………お父ちゃんの世界は、お前が全てや」
嵩原は大和の頭を撫で、満面の笑みを見せる。
辛い時ほど、笑顔を。
嵩原の強さの源が、ここにあった。
「ホンマ?……………………だったら、俺も頑張る!お父ちゃんと一緒に、頑張ってみる!」
そう言って、小さくガッツポーズをする大和に、嵩原の心は救われる。
「ありがとう……………………ありがとうな、大和。お父ちゃん、誰よりもお前を愛しとるから」
愛しとる。
事あるごとに捧げてきた嵩原の愛が、溢れ出す。
(『恋愛男子+』読んで下さり、ありがとうございます。今回は、春様のコメよりstoryを考えました。幼少期は、書きたかったので…………。ただ、めっちゃシリアスになりました(汗)また、楽しい思い出も書きたいと思います。片親を四苦八苦するお父ちゃんには、ネタが多そうなので………………春様、ありがとうございます。そして、皆様、ありがとうございます)
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