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嵩原と高橋
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誰にも踏み込めない、大人な関係。
嵩原が、高橋を救う為に使った金と力は、後にも先にも、越える者はいない。
高利貸の社長に、奴隷のように使われていた高橋の過去も、今や嵩原以外に詳しく知る者もいない。
「なぁ、高橋ィ………………」
とある平日。
大和が山代の所へ行ってしまった嵩原は、暇をもてあましながら、リビングのソファから、掃除に来た高橋を呼ぶ。
「親父、珈琲入れましたから、どうぞ」
「お?…………………サンキュー」
なぁ、高橋ィ…………………喉渇いた。
て、言おうと思ってました。
嵩原は、高橋の入れてくれた珈琲をすすり、口元を緩める。
「………………………砂糖、少し欲しい思うてたとこ」
いつもは、ブラック。
でも今日は、何だかちょっと疲れ気味。
甘さが欲しかった。
そして、壁に掛かった時計へチラッと目を向ける。
11時半。
「大和は、山代とメシ食うて帰るやろな…………」
俺のメシ………………高橋、してくれるんかな?
キッチンを掃除している高橋を眺めながら、嵩原はボソッと独り言。
「……………………お昼、パスタでもええですか?親父の好きな和風味で」
高橋って、神だと思う。
「………………………お願いします」
嵩原は、素直に頭を下げる。
女房役。
それは色んな意味で、高橋の事だ。
10年以上も嵩原に付いていた高橋は、いまだに嵩原へのフォローは完璧。
「……………………高橋ってさぁ……………」
冷蔵庫から、茸やベーコンを取り出す高橋に近寄り、嵩原はカウンター越しに話しかける。
「無理ですよ………………?」
「………………は?まだ、何も言うてへんけど……………」
「だって、『このまま、ウチの女房にでもなったら?』……………………みたいな事、言われようとしてはったでしょ?」
「え………………………」
笑顔で自分を見つめる高橋に、嵩原は見事に感服。
「丸一日、若と親父のお世話は出来ません。身体が、持たへんです」
………………………何故、わかった?
一家に、高橋。
絶対に、同居して損はない。
「今でも、ずっとおるやん………………どうせ、大和に人生捧げて、結婚もする気ないんやろ?花崎が一人立ちしたら、また一人やで?」
「それでも、少し距離がある方がええんです。その方が、私の事必要としてくれはります…………………いて欲しい時にいない……………て」
「…………………高橋………………」
僅かな照れと、元右腕のささやかな願望。
初めて高橋を見た時、こんな笑顔なんて微塵も想像出来なかった。
それほど、若い時の高橋の毎日は、嵩原の知る限り一番残酷に思えた。
「アホ……………………どこにおっても、お前は俺らには必要な男や。大和より………………とは、冗談でも言えんけどもやな…………………俺の中では、大和と三人家族位に思うてる」
最良の側近、高橋。
嵩原の寵愛を、今も受ける。
「…………………もう…………………今日は、美味しいワインもお付け致します」
高橋は綺麗な顔を緩め、キッチン脇に置かれた、ワインセラーの扉を開けに行く。
「マジ?…………………ほな、まだまだ何か……♪」
「それ以上は、何を言われはっても、ワインは1本だけです。最近、親父呑み過ぎやないですか?お体に悪うあります」
あ……………………ですよね。
「はぃ……………………」
嵩原、一気にトーンダウン。
どの組員よりも、高橋の言葉が最も堪えます。
「クス…………………でも、今日偶々評判のチーズを買って来とったんで、ソレお出ししますね?何や、ネットでも中々手に入らんらしいですよ」
「そうなん!?そら、楽しみやなぁ♪………………高橋、大好き♪」
「…………………ホンマ、現金ですね………………若とどちらがお子か、たまにわからんようなります」
さすがです、高橋様。
高橋の心遣いに、わかりやすい位に嵩原のテンションは上がる。
「手ぇかかる子ほど、可愛いやろ?」
「……………………勝手に言うてて下さい」
そんな高橋の口元も、笑みが溢れてる。
嵩原と高橋。
二人しか味わえない関係は、昔も今も変わらない。
まだ駆け出しの嵩原が、初めて救った男と、毎日死にたいと思っていた高橋に、初めて手を差し伸べてくれた男。
たまのこんな一時が、お互いの心を和ませる。
暖かい日差しに包まれた、昼下がり。
二人の心も、温まる。
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