アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
LOVEの始まり(後編)
-
愛してる。
それって、我が子だから……………………だろ?
「大和さんと、何かありました?」
関西竜童会本部。
広い書斎で、デスクに座る嵩原へ書類を差し出しながら、高橋はふとした疑問を投げ掛ける。
「……………………は?何かって、何や?」
内心、ドキ。
デキ過ぎる右腕とは、厄介だ。
気付いて欲しくない事まで、気付かれる。
嵩原は、おもむろに机に置いた煙草へ手を伸ばし、高橋を見上げる。
あくまで、平静を装……………………。
「組長………………………煙草、吸い口逆です」
「へ…………………………ぅおおっ!?ホンマやっ」
アッサリ、撃沈。
高橋の冷静な眼差しが、痛い。
嵩原は慌てて煙草を加え直し、高橋から目を逸らした。
「はぁ……………………気を付けて下さい。大和さんの年頃は、結構敏感なんです。私が変やて感じとると言う事は、大和さんかて感じとる筈ですよ」
「……………………え………………」
変。
「俺……………………変に、見えるか?」
「……………………はい」
マジ………………………。
手にした煙草に火を点け、嵩原はぼんやりと燃える先へ視線を落とした。
「変…………………か…………………」
正直、あれから大和をまともに見れてない。
何と言うか、マズい気がした。
大和に感じた、自分の違和感に、マズい気が。
「………………………でも、自分の子や」
まさかな………………………。
昔から、溺愛っぷりは有名。
そう、溺愛だ。
「てめぇのガキ愛すんは、普通やろ」
親として。
嵩原は重い腰を上げ、大きな窓から外へと目を向けた。
「大和………………………」
最近、ぐんぐん背を伸ばしてきてる、大和。
程よく筋肉をつけ、抱きしめると、その筋肉が心地好い。
顔なんて、目は自分に似てきて、唇は多香子そっくりな、柔らかくぷっくりしたいやらしさ。
いやら…………………………。
ガンッ………………………!
「え、組長…………………!?」
驚く高橋の目の前で、嵩原は自ら額を窓ガラスへ打ち付ける。
「…………………あかん………………やっぱ変や…………」
相手は、13歳。
実の息子やぞ……………………。
でも、冷静になろうとすればする程、余計に大和が頭を埋める。
会いたい。
会いたい?
会いたいって……………………何。
自分でも、それを確かめるのが、怖い。
知ってしまうと、後には戻れない気がする。
「しっかりせぇ…………………親やろ……………」
嵩原は窓から空へと顔を上げ、揺らぐ気持ちに蓋をする。
ガチャ…………………………
「12時か………………………」
真夜中の嵩原邸。
ついさっき帰って来た嵩原は、薄暗いキッチンで一人、冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、カウンターに腰を下ろす。
「………………………大和、メシ食うたかな……………」
多忙を極める嵩原の日常。
最近は、めっきり一緒に食事をする機会も減ってしまった。
男所帯の生活。
高橋や他の組員に世話を任せざるおえない、毎日。
可哀想だと、自分でも痛感してる。
「グレん方が、おかしいか……………………」
親がヤクザの組長で、組員しかいない日常。
普通らしからぬ生活をさせている大和を、不憫にも想う。
「……………………大和…………………」
喧嘩して、反抗して、息子なりに抵抗しているのかもしれない。
わかっている。
本当は、自分に責める権利はない。
「親父………………………?」
え。
「なんや………………今、帰って来たん?」
振り返ると、暗い戸口に大和が立っていた。
「やま…………………あ、ああ………まあな………………お前こそ、まだ起きとったんか?」
「ん…………………喉が渇いて……………………」
我が子に、緊張。
自分の目の前を通り、冷蔵庫を開ける大和を見つめながら、嵩原の心臓は、バクバク言っている。
「………………………洒落にならん………………酷うなっとるやないか……………………」
これでも、色男。
女にも男にも、モテる。
告白を受ける事だって、しょっちゅう。
心臓がバクバクなんて、有り得ない。
「はぁぁぁ………………………」
嵩原は深い溜め息をつき、項垂れる。
……………………………何で。
「……………………親父、それ………………俺のせい?」
「はい……………………?」
俺のせい?
「……………………何がや?」
「だって……………………最近、俺の顔見たら、溜め息ついとる……………俺が、問題ばかり起こすからやろ?」
開いた冷蔵庫の明かりに照らされる、大和の寂しそうな表情。
あ………………………。
「それに、俺の目ぇ見て話しせえへんし……………俺、ついに親父に嫌われたかなて、思うてた………………」
「大和…………………………」
ズキ。
愛すべき息子の、哀しい告白。
俺は……………………なんて事を…………………。
心を引き裂く様な、大和の自分を見る瞳。
「ア…………………アホやな……………………何で俺が、お前を嫌いになんねん………………たった一人の息子やで?大事に想うとるに、決もうてるやろ……………」
冷蔵庫の冷気に当たる、大和の頬へ手を伸ばし、嵩原は自分の間違いに気付く。
アホは、俺や。
息子への、自分の気持ちを考えるあまり、誰よりも大切な息子の不安に、気付いていなかった。
『大和さんかて感じとる筈……………』
親よりも、高橋の方がよく見てる。
「でも……………………」
「すまんな……………近頃、メシも一緒に食えへんで」
大和の言葉を遮り、嵩原はその身体を抱き寄せる。
「親…………………………」
「愛して…………………当然や…………………」
「…………………………え」
愛して、当然。
多香子を失ってから、大和しか見て来なかった。
何があっても守ってやりたいと、自分が守ってやるんだと、必死に育てて来たんだ。
大和を愛さなくて、誰を愛す。
「大和………………………愛しとるから。ずっと、誰よりも、愛しとるからな……………………嫌いになんて、ならへんよ」
「………………親父………………」
自分のシャツを握りしめる、大和の少し大きくなった手。
ドキドキしてる。
大和に、このドキドキが伝わるんじゃないかと思う位、ドキドキしてる。
俺は、大和が好きなんや。
いつからかは、わからない。
だけど、急に成長してきた我が子に、性の意識をし始めた。
僅か13歳の息子の身体を、イカれた親は、意識し始めてしまったんだ。
だから、気付いた。
自分が、息子を見る目の異変に。
「問題なんか、起こしてもかまへん。お前の為なら、俺はなんぼでも頭下げたる…………………そら、叱る事もあるけど、それが親の務めや。………………寂しい想いさせて、堪忍な………………」
それでも、親でなければならない。
どんなに苦しくとも、親を捨てる訳にはいかない。
嵩原は、大和を抱きしめながら、自分に言い聞かせる。
この恋を、誰にも知られてはいけない、と。
でも、一度気付いてしまった恋は、心を蝕む。
これから嵩原は、何よりも辛い恋に、身を投じていくのだ。
(皆様…………なんだか、暗い話のようになりましたが(--;)………………『恋愛男子+』いつもありがとうございます。後編、お父ちゃんの恋の目覚めを描きました……………ちゃんと描けてますでしょうか(>_<)殿様ぁ………すみません……………私のレベルです(。>д<)ヒー。……………はい、これからもこんなんですけど、リク含め本編にはない『恋愛男子』を描いていけたら……と思います……(汗))
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
47 / 241