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学園祭 6
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そのまま少し談笑した後、川島部長が時間を気にしてくれたおかげで、女装コンテスト開始まであと20分のタイミングで教室へ戻れた。
「アッキー、ずるいし遅い!!」
川島部長と小野田さんを掻っ攫い、意図せぬ両手にイケリーマン状態だった俺に女子達が詰め寄ってくる。
「す、すみません......」
その圧力にたじろぎながら数歩後ろに下がれば、下がっただけ前進してくる女子達。
食べ物の恨みは恐ろしいとよく言うが、イケメンの恨みも恐ろしい。
まじまじと顔を睨まれ、思わず縮こまると、突如、メイクを担当してくれたこの手が伸びてきて、勢いよく顎を掴まれた。
そう、女子胸キュン必須のあの顎クイだ。
「......もうちょっと睫毛盛った方が映えるな」
「つけまつげ追加してもいいかも」
「あんまケバくない方がいいよね?」
「私、ちょうど良いのあるからあげれるよ!」
顎クイキープのまま、数人の女子にまじまじと顔を覗き込まれる俺は、傍目から見たらどんな絵なのか。
「よし、アッキー、メイクするよ。
早くメイク室に来て」
「あ、はい......」
顎でメイク室を指し、颯爽と去っていく女子に、力なく頷く俺。
完全に男女逆転したこの一連のやり取りに、クラスの男子達から同情の眼差しが突き刺さった。
「あいつらイケメンかよ......」
そこらへんの男より強い最近の女子。
本当に恐るべし。
女子達の手際の良いメイクに身を任せ、あれよこれよと身支度が勝手に進んでいく中、俺ができることといえばただ一つ。
着せ替え人形ならぬ、着せ替え人間に徹する。
ただそれのみ。
「よし、完璧!!
アッキー、行って良し!」
最終チェックのOKが出て、背中を結構強めに叩かれる。
痛いという間も無く、そのまま会場に急いで向かうと、バックヤードには俺と同じ境遇を経験して来たであろう同志達が連なっていた。
これから化け物だと笑われる俺達。
男はなんて惨めな存在なのだろうか。
そう、非難することは後でもできる。
もうここまできたんだ、やるしかない。
小さく息を吐いて深く息を吸う。
大丈夫、俺......いや、私はやれる!!!
誰よりも美しく可愛くあれーー。
まるでパリコレモデルが憑依したかのように、自然と背筋がスッと伸び、俺は光を目指して歩き出した。
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